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入札・契約適正化法に関わる発注者の取り組み
(工事成績評定研究会の設立について)

国土交通省 九州地方整備局
企画部 工事監視官
堀 山 岩 彦

1 はじめに
国,地方公共団体等が行う公共工事の入札・契約の適正化を促進し,公共工事に対する国民の信頼の確保と建設業の健全な発展が喫緊の課題となっています。
このため,国土交通省において様々な取り組みが実施されていますが,その中の一つとして平成15年2月に「工事成績評定研究会」を設立しましたので,その概要を紹介します。

2 設立の背景
平成12年3月の「発注者責任を果たすための具体的施策のあり方(発注者責任研究懇談会)」の第一次取りまとめにおいて,公共工事の品質を確保するための発注者の責務として,「工事の評価」,「企業の評価」,「発注者の評価」の3つの評価を軸とした工事発注段階以降の新たな制度づくりのあり方が提案されました。具体的には,

① 発注者が工事内容を適正に「評価」し,工事内容に応じて企業の技術力を適正に活用できる入札契約方式を選択できるようにする。
② その際企業の「評価」が不可欠であり,工事実績評価を含めた企業評価の充実を図るとともに,その結果を将来の適切な企業選定へ反映させる。
③ 発注者自身の評価力の「評価」を適正に行い,必要に応じて支援措置を講ずるなど,発注者として適正な評価ができるための体制をつくる。

これらの「評価」が相互に関連し,循環的に機能することにより,発注者責任を果たすためのシステムが構築されると提案されています。
平成13年4月には,「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入札契約適正化法)」が施行され,「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(適正化指針)」も定められました。
その適正化指針において,将来におけるより適正な入札及び契約の適正化を図るための措置として,公共工事の施工状況の評価の方策に関することの中で,契約の適正な履行の確保,給付の完了の確認に加えて,受注者の適正な選定を図るため,その受注に係る公共工事について,工事の施工状況の評価を行うよう努めるものとすることが示され,工事の成績評定要領の策定及び内容の公表が掲げられています。
また,公共工事の受注者の選定に当たっては,当該企業の過去の工事実績に関する情報や保有する技術者に関する情報,施工状況の評価に関する情報等,各発注者が保有する具体的な情報を相互に交換することにより,不良・不適格業者を排除し,より適切な受注者の選定が可能となることも示されています。

3 設立の目的
このように,企業の選定,また入札及び契約の適正化を図る上からも工事成績評定は極めて重要な事項であります。
より適正に企業の選定を行うためには,自らの発注工事のみならず,他機関発注工事における評価も参考にすることが必要であり,特に,新規参入企業の評価にあたっては,単に他機関における施工実績の有無だけではなく,その施工実績の質,すなわち工事成績評定が重要な要素となります。
しかし,工事の発注規模,発注・監督・検査体制等に大きな差があり,各発注機関がそれぞれ独自に工事成績評定要領を策定し運用しているため,自らの発注工事における企業選定等の参考とするのは難しいのが実状でもあります。
また,地方公共団体の中には,工事成績評定への取り組みにバラッキもあり,効果的かつ効率的な工事成績評定への取り組みが促進されるよう支援することも課題となっています。
このため,各機関で実施されている工事成績評定について,その取り組みの現状と課題及び運用の実態についで情報の交換を行い,統一的運用に向けての研究・検討を行うと共に,地方公共団体(特に市町村)に対する工事成績評価の定着・普及を図ることを目的に設置しました。
併せて,入札契約適正化法の徹底のため,相互の連絡,協調体制の強化に取り組んで行くこととしています。

4 工事成績評定の現状
工事の成績評定は,請負業者の適正な選定及び指導育成に資することを目的として昭和42年に始まり,最近では「公共工事の品質に関する委員会・報告」を受けて,工事成績評定の積極的な活用のため,企業評価項目として経営事項審査等への採用,成績評定の透明性の観点から受注者へ評定結果の通知,また,企業の技術力の適正な評価について,発注者責任研究懇談会の報告を受け,従前の工事成績評定に加え施エプロセスの評価を導入,基本的な技術力・能力に加え優れた技術力・能力の評価導入等,幾度の改正を経てこれまで実施されて来ております。
また,入札契約適正化法では,受注者を適正に選定するため,工事成績評定要領の策定と公表,成績評定の結果を受注者へ通知とともに公表することとされました。
平成14年3月31日現在で,工事成績評定に関連する九州地区の公表状況は,工事成績評定要領の未策定が市町村では52%程度,公表済み・公表予定も23%程度となっており,評定結果の公表においては更に低い数値となっています。また,工事の監督・検査基準の公表についても市町村では未策定が約53%,公表済み・公表予定が約27%であり,施工体制把握のための要領の公表についても市町村では未策定が約76%,公表済み・公表予定が約16%と遅れているのが現状です。施工体制台帳の写しの提出についても,提出させてない市町村が41%程度となっています。

5 研究会での取り組み予定
前述のように,市町村における工事成績評定等の取り組み状況については遅れており,工事成績評定の定着と普及に向けての取り組みが必要であります。また,発注体制や監督体制が異なる各機関の工事成績評定要領の現状と課題及びその運用実態を把握し,基本的事項の統一的運用に向けての研究,検討を行うこととしています。さらに入札契約適正化法の適正な施行に向けて周知・徹底を図るため,昨年実施した「施工体制の一斉点検」など協調しながら取り組むこととしています。

6 おわりに
公共工事の発注者としての責任は,「公共工事の品質確保・向上は,発注者・設計者・施工者の三者がそれぞれの役割を分担して推進する必要があるが,国民の代理者である発注者が自ら,「公正さを確保しつつ良質のモノを低廉な価格でタイムリーに調達する」という国民から求められる発注者責任を果たすことが最も重要である。」と位置付けられているところですが,公共工事の発注者は,国,地方公共団体等と多岐にわたっており,その体制や技術力には違いがあります。
発注者責任を果たすためにも,全ての発注者が適切に対応できる「ルールづくり」に取り組んでいきます。

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