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平成28年(2016)熊本地震への対応について
酒井正二郎

キーワード:危機管理、大規模災害、TEC-FORCE

1.はじめに
平成28年4月14日(木)21時26分博多駅周辺の飲食店の中で大きな揺れを感じた。震源は熊本地方とのこと、震源から遠く離れたこの場所・・・・これは大きな地震だなと思いつつ急ぎ整備局8Fの防災室に駆け込んだ。熊本県益城町と御船町の境界付近が震源で震度7を確認、まさか熊本地方でと誰もが思ったであろう。緊迫感が高まる災害対策本部から情報収集、リエゾン・TEC-FORCEの派遣など矢継ぎ早に指示がだされる。
気象庁は2016年4月18日の記者会見で、熊本県熊本地方を震源とする一連の地震について、「平成28年(2016年)熊本地震」の名称を示した。

2.地震発生の概要
○平成28年(2016年)熊本地震(※ 7/4日時点 14日21時26分以降の震度1以上:1,846回)
・前震:4月14日(木)21時26分
震源地:熊本地方(北緯32°44、東経130°48)
震源の深さ:11km マグニチュード6.5
震度7:益城町
震度6弱:玉名市、西原村、宇城市、熊本市町

・本震:4月16日(土)1時25分
震源地:熊本地方(北緯32°45、東経130°45)
震源の深さ:12km マグニチュード7.3
震度7:益城町、西原村
震度6強:南阿蘇村、菊池市、宇土市、大津町、嘉島町、宇城市、合志市、熊本市

○人的、物的被害等の概要(内閣府とりまとめ6月24日14時30分現在)
・人的被害:死者69人(関連死20人含む)、重軽傷者1,666人
・建物被害:全壊7,900棟、半壊23,663棟、一部損壊117,612棟 合計149,175棟(住宅)
・避難所状況:熊本県231ヶ所6,360人(6/23日時点)【最大(4/17)855ヶ所  183,882 人】
大分県避難所閉鎖(5/16日時点) 【最大(4/17)181ヶ所10,070 人】(※主なもの記載)
○施設等の主な被害概要
・大規模法面崩壊(阿蘇大橋地区:R57号、阿蘇大橋、JR豊肥線)、路面陥没(九州自動車道)、土砂崩落(大分自動車道)、新幹線脱線(熊本駅南側)、庁舎被災(宇土市役所他)、重要文化財被災(熊本城)など甚大な被害が各所で見られた。

3.地震発生(前震4/14) からの初動対応(概ね3日間)とその後の対応
1)迅速な体制構築と被災状況の把握(発災直後)
・地震発生後、直ちに災害対策本部を立ち上げ非常体制を発令(21時26分)し、整備局職員及び家族の安否確認と事務所庁舎等の被災状況を確認した。
・直轄管理施設の緊急点検を開始(河川、ダム、道路、港湾、空港、官庁施設)するとともに、熊本河川国道事務所長等と被災地首長との間にホットラインを構築。さらに、リエゾンを早期に派遣し(熊本県、熊本市、益城町、嘉島町、御船町、西原村、グランメッセ熊本、大分県など。14日22時36分には熊本県庁に到着)、被災状況や支援要請などの情報収集体制を確立した。
・国土交通本省は、14日23時~第1回非常災害対策本部会議を大臣出席のもと開催。九州地方整備局もTV会議で参加。被害情報及び対応方針について共有した。
・リエゾン等からもたらされる情報をもとに15日1時25分には第一陣のTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)14名を出動させた。

2)災害対応と被災地支援
・照明車、災害対策車等、情報収集車、待機支援車、対策本部車、衛星通信車、Ku-SAT、バルーンライト20基等を震源地に近い県現地対策本部が設置され集結基地となっていたグランメッセ熊本や被災箇所、避難場所等に派遣した。(照明車、衛星通信車など最大83台)
・熊本県知事、自治体の首長等からのTEC-FORCEの派遣要請(15日14時20分)を受け派遣をすすめる中、本震(16日1 時25分)が発生。TEC-FORCEのさらなる広域的な支援を展開した。
・派遣したリエゾンからの市町村の要望は当初避難者への飲料水、非常食、毛布、ブルーシート(被住家の養生用)等に集中。整備局及び事務所の保管資材等を活用し、出来る限りの支援を行った。
・災害対策ヘリについては、九州地整の「はるかぜ号」及び四国の「愛らんど号」・北陸の「ほくりく号」の3機が九州に集結。3 機体制で河川・砂防・道路等の被災調査を実施した。
今回、最大440人(22日間)、延べ約8,000人強に及ぶTEC-FORCE隊員が全国から集結(北海道、沖縄、8地方整備局)。県及び市町村の要請により道路啓開に係る調査及び作業をはじめ、道路・橋梁・河川堤防・土砂災害危険箇所・建物危険度判定等広範囲に亘る被災調査等を展開し、その結果を首長等へ報告した。また、市町村へのリエゾン派遣は最大61人(22日)延べ21市町村に及んだ。
また、九州防災エキスパート会員による堤防復旧の技術指導、関係協会などから協力を頂いた。

※ TEC 活動のなかから主なものを抽出した写真を掲載

4.復旧・復興に向けて(土木施設)
今後は二次災害の防止と早期復旧・復興のバランスをとりながら、阿蘇大橋地区の崩落箇所(直轄砂防災害関連緊急事業)、R57号・R325号(権限代行)復旧、県道熊本高森線及び村道栃の木~立野線(大規模災害復旧事業として国が代行)復旧、緑川等の河川堤防の本格復旧等に取り組んでいくこととなる。地元からは、道路や河川といった地域経済の基盤となる社会インフラの早期復旧が期待されており、今後地域の関係者、専門家及び整備局が連携し、一体となって事業を推進していくものである。

5.まとめ
九州地方整備局において、平時から防災力向上のための研修、地整及び防災機関との訓練、情報通信の強化、災害対策機器の充実などに取り組んできたところである。今回の熊本地震への対応については本省・他地整等の協力のもと被災市町村の支援として成果を上げたと考える。しかしながらTEC-FORCEの活動マネジメント、ホットラインやリエゾンの情報収集・調整力などに課題は無かったのか、また本部運営、関係機関との情報共有などについてもこれから振り返りを行い、九州の自然災害のリスク(火山、南海トラフ、離島災害、豪雨災害)へ備えるため、さらなる防災力の向上を目指し防災関係機関との連携も含め努めて参りたい。

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