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有明海沿岸道路 大川東IC~大野島IC間の開通について
~福岡県内の区間27. 5km が全線開通~

国土交通省 九州地方整備局
道路部 道路計画第一課
課長補佐
城 戸 康 介

キーワード:有明海沿岸道路、全線開通、整備効果

1.はじめに
有明海沿岸道路は、福岡県大牟田市から佐賀県鹿島市に至る延長約55㎞の高規格道路で、有明海沿岸国道事務所では「国道208号 有明海沿岸道路(大牟田~大川)」として、大牟田市から大川市までの延長27.5㎞、および「国道208号 大川佐賀道路」として大川市から佐賀市まで延長9.0㎞の事業を担っている。
去る令和3年3月14日(日)に大川東IC ~大野島IC 間( 延長3.7 ㎞) が開通し、有明海沿岸道路の福岡県区間(三池港IC ~大野島IC)27.5㎞が全線開通することとなった。
本稿では、これまでの事業のあゆみと、開通区間の特徴のほか、整備効果や地域との取り組みについて報告する。

2.有明海沿岸道路の開通のあゆみ
(1)福岡県区間の開通の歴史
有明海沿岸道路は、地域高規格道路として平成6年12月に福岡県大牟田市~佐賀県鹿島市に至る区間(延長55㎞)が全国で最初に「計画路線」に指定された。それまでの間に、高田大和バイパス(延長8.9㎞:昭和63年度)、大川バイパス(延長3㎞:平成5年度)がバイパスとして事業化されていたが、平成7年度に整備区間に指定され、高規格道路へ構造変更となった。その後も大牟田高田道路(延長8.6㎞:平成11年度)、大川バイパス延伸( 延長7㎞:平成12年度) と事業化が進められた(図- 1)。
平成12年度の着工から、これまでに例がない速さで工事を推進し、平成20年3月に大牟田IC~高田IC、柳川西IC ~大川東IC を最初に開通させて以降、平成21年3月(高田IC ~大和南IC)、平成24年1月(三池港IC ~大牟田IC)、平成24年9月(大和南IC ~徳益IC)、平成29年9月(徳益IC ~柳川西IC)と平成20年代に五度にわたって開通区間を着実に延ばし、時代が「令和」に移り変り、最初の開通から13年という短期間で福岡県内最後の区間「大川東IC ~大野島IC」が開通した(図- 2)。
「平成」から「令和」の変遷と合わせ、有明海沿岸道路が延伸した時代であった。

図1 有明海沿岸道路の概要

図2 福岡県区間の開通の経緯

(2)大川東IC~大野島IC間の特徴
令和3年3月14日(日)に開通した福岡県内最後の区間である大川東IC ~大野島IC(延長3.7㎞)は、区間の大部分を大川高架橋(延長2,086m)と有明筑後川大橋(延長1,008m)で構成している。
有明筑後川大橋は、渡河部の「鋼4 径間連続(2連)単弦中路式アーチ橋」であり、1 本のアーチリブが支点上で2 本に分岐する日本で初めての橋梁形式となっている(写真- 1)。ケーブル配置は地元大川市の伝統工芸「大川組子細工」をイメージしたクロス配置を採用しており、色彩は夕日に映える淡い桜色とするなど周辺環境との調和を意識したデザインとなっている。名称は大川市による公募により決定した。また、河川内の一部の橋脚はデ・レーケ導流堤上に構築されているが、構築の際に解体した導流堤は筑後川昇開橋展望公園に復原・展示されている。

写真-1 夕暮れ時の有明筑後川大橋

3.有明海沿岸道路の整備効果
(1)利用交通量の推移
有明海沿岸道路の利用交通量は開通当初の平成20年6月には約1 万台/日前後であったものが、福岡県区間が全線開通した直後の令和3年4月には最大2.7 万台/日を観測する区間も発生している。開通以降、これまでに多くの方に利用していただき、沿線市町村の地域住民の生活や産業を支えている(図- 3)。
今回開通した大川東IC ~大野島IC 間の利用交通量は、日平均交通量で0.9 万台/日(令和3年4月平日)となっており、コロナ禍の影響を受けているものと考えられるため、今後も調査を継続することとしている。

図3 有明海沿岸道路の交通量の変化

(2)所要時間の短縮
九州佐賀国際空港と大牟田市間の所要時間は、有明海沿岸道路の開通前(国道208号等を利用)では約90 分であったが、開通区間が延びるとともに時間短縮が図られ、令和3年3月の大川東IC ~大野島IC 間の開通時点では、所要時間が約半分(約44 分)に短縮され、今後の延伸により更なる短縮が期待される(図- 4)。
また、平成20年代後半には、有明海沿岸道路の整備によるアクセス性向上を背景に、九州佐賀国際空港の乗降客数が増加傾向となっている(図- 5)。今後、九州佐賀国際空港の利便性向上だけではなく、空港を利用する方々が有明海沿岸道路を使って、周辺の観光地等へ多数訪問していただくことが期待される。

図 4 大牟田市~九州佐賀国際空港の所要時間の変化

図5 九州佐賀国際空港の乗降客数

(3)企業立地の促進
有明海沿岸道路の開通に伴い、沿線地域では企業や商業施設等が相次ぎ進出しており、九州縦貫自動車道、九州新幹線等のアクセス性も良いことから、企業、商業施設、大学等計90 社・校が新たに進出・増設している(図- 6)。
最も早く開通した大牟田IC ~高田IC 間の沿線には、特に大牟田市内において開通以降に大規模商業施設や大学、医療施設等の立地が目立っており、地域住民の生活利便性向上にもつながっている。今回の開通や、今後の整備により、佐賀市街地・九州佐賀国際空港へのアクセス性向上が図られることによって、企業等の進出が増加し、沿線地域において、更なる地域経済の活性化が期待される(図- 7)。

図6 有明海沿岸道路の開通延長と企業立地状況

図7 企業立地の状況

(4)豪雨等の災害時に代替路として機能
近年、福岡県南地域においては、豪雨等による浸水被害が増加しており、直近の令和2年7月豪雨時には大牟田市で大規模な浸水被害が発生した。その際、大牟田市内の主要な幹線道路は冠水し、その機能が発揮されない中、道路高が高い有明海沿岸道路は浸水の影響を受けなかったことから、緊急車両や物資輸送車両の通行が可能な状況であった(図- 8、写真- 2)。

図8 浸水時横断イメージ図

写真2 令和2年7月豪雨 国道389号冠水状況(大牟田市)

今後も集中豪雨の多発が懸念されることから、大規模災害時の物資の輸送、避難、救命救急活動、復旧作業が円滑かつ速やかに実行できるよう、防災機能の確保、強化が期待される。

4.地域住民との協力・連携
有明海沿岸道路の工事に際しては、地域の方々のご理解とご協力により、工事を円滑に進めることができた。これまで開通してきた各区間においても、施工段階や開通直前段階においてウォーキングイベントなどを開催してきたが、大勢の方に参加頂いた。
大川東IC ~大野島IC 間においても、親子での有明筑後川大橋の作業体験(現場見学会)や、開通直前の令和2年11月には有明筑後川大橋の上で地元大川市内全ての小・中学校による「お絵描き大会」を実施した(写真- 3)。

写真3 開通直前の橋梁上で実施したイベント

こうした地域住民とのふれあいを重ねることで、地域の方々が有明海沿岸道路をより身近なものと捉えていただき、開通後の道路への愛着と、今後の事業へのご理解につながるものと期待している。

5.更なる整備推進へ向けて
有明海沿岸道路は、福岡県内区間を開通させ、次は令和4年度に大野島IC ~ ( 仮) 諸富IC(延長1.7㎞)の開通を予定し、工事を推進しているところである。この開通により、ついに福岡県、佐賀県が有明海沿岸道路で結ばれることになる(図- 9)。
有明海沿岸道路を介して既存の高速道路(九州縦貫自動車、長崎自動車道)や九州新幹線、三池港、九州佐賀国際空港間のアクセスが大幅に改善し、これらが一体となって「陸海空の広域交通ネットワーク」を形成し、さらなる交流圏の拡大や物流の効率化が図られる。有明海沿岸道路の整備が進むことにより周辺14 市町を合わせた「80 万人都市圏」が出現し、これまで以上に県境を越えた地域の一体感が醸成されることを期待している。

6.おわりに
福岡県内における有明海沿岸道路の整備は、福岡県南地域の主要都市間を結んだが、沿線地域においては、「無料の高速道路」として有明海沿岸道路の整備による地域活性化の期待は大きい。有明海沿岸地域の更なる発展・産業振興のため、また地域に愛着を持っていただけるような道路を目指し、未開通区間の早期完成・早期効果発現と、開通済み区間の機能強化に尽力したい。

図9 令和4年度開通予定区間

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