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九州・沖縄サミットにおける道路管理者の取り組み

2000年サミット九州道路連絡協議会事務局
建設省 九州地方建設局
 道路部交通対策課長
川 原 伸 孝

1 迎えるにあたって
我が国初の地方開催(過去3回は東京)となる九州・沖縄サミットが11年2月21日の閣議で決定された(首脳会合:沖縄県名護市・7月21日~23日,蔵相会合:福岡市・7月8日,外相会合:宮崎市7月12日~13日)。
開催に向けて政府レベルでは,開催準備本部,関係省庁会議等が設置された。九州では福岡,宮崎,沖縄の各自治体に誘致委員会,推進本部等が設けられた。
九州地方建設局では開催準備九州支部,企画・道路・河川の各部に事務局,現地の福岡国道工事事務所・宮崎工事事務所に対策事務局を設置した。道路部関係においては関連する道路の環境整備について沖縄を含めた関係機関との必要な連絡・調整,体制づくりを行うとともに,特に福岡・宮崎の両地域については対策内容の検討を行うため,九州・沖縄調整連絡会および「2000年サミット九州道路連絡協議会」を設置した。
この協議会(11年7月設立)は九州地方建設局,福岡県,宮崎県,福岡市,宮崎市,日本道路公団九州支社,福岡・北九州高速道路公社で組織し,取り組む視点は次の5点を柱とした。
 (1)サミット開催にあたって道路交通の安全性・円滑性の確保
 (2)グローバル社会に対応した国際的な快適性の確保
 (3)技術立国日本における進んだ道路および道路交通テクノロジーのアピール
 (4)併せて,上記の諸対策が将来にわたり国際都市の風格等に残存価値として存続すること。
 (5)施策はローコストメジャーを中心とする。

2 協議会の取り組み
道路交通の安全性・円滑性・快適性の確保を最重点とし,限られた1年間の中で関連道路事業の推進,道路管理体制および情報提供等のハードからソフト施策まで道路行政全般にわたる取り組みを行った。
(1)関連道路事業の推進
道路整備五箇年計画の前倒し,公共事業予備費の活用によるタイムリーな施策のピックアップを行った。
① 会場,想定ルートの設定
市内の主要地区(福岡:天神・百道,宮崎:橘通・一ツ葉浜),交通拠点(空港,JR)および主要観光地を連絡する主要な幹線道路を対象とした。
② 整備目標および施策
道路交通の安全性・円滑性および快適性の確保,レベルアップを目指し設定したルートの現況把握をもとに,福岡は12年7月,宮崎は12年5月までの確実な事業実施を図ることとした。
③ 整備計画
a 設定ルートの現況把握
福岡:総延長207km,現況確認区間数59区間,内要整備区間数37区間。
宮崎:総延長202km,現況確認区間数57区間,内要整備区間数68区間。
b 整備方針
(a)安全性・円滑性の確保
バイパス,交差点立体化,改良,歩道整備,照明灯,ITV,構造物補修事業については,主に五箇年計画の前倒しとした。また標識については新たな施策を考慮した。
(b)快適性の確保
舗装修繕,附属物,調査(空洞含む)については五箇年計画の前倒しとしたが,舗装については質的な改善を行った。また景観等については新規施策を考慮した。
(c)テクノロジーの活用
ETC,VICSについては五箇年計画の前倒しとした。

(2)管理
サミットを迎えるにあたって,道路行政の最もベーシックな部分の役割を担うのが管理部門である。
●初めての地方開催であり,どのような事象を想定するか。
●管理体制のエリアをどう考えるか。体制のメリハリ,応援体制も必要か否か。
●管理の対象とする施設として,道路区域以外に,庁舎その他拠点施設まで捉えるべきか否か。
●点検パトロールにあたって日常と変わったことの発見およびパトロールのランダム化の方法。
●情報ネットワーク確立における関係機関との連携方法。
●緊急時の対応として情報収集機能と対策班の配置。
これらの基本認識の下,管理の範囲および実施項目を決めた。
① 管理体制の期間・範囲
管理体制の期間については,「準備期間」→「連絡体制期間」→「特別体制期間」のステップをおって準備体制を整え逐次強化した。
範囲については,サミット関係者が利用・移動する地域およびルート周辺を対象とした管理措置区域とその他の強化区域に区分した。
② 情報連絡体制
情報連絡体制には,通信体制の確保と体制づくりが考えられる。
通信体制の確保については,情報の収集と提供,連絡に必要となるマイクロ,無線,NTT,携帯電話等既存回線・システムのチェックを含む複数回線の確保を整えた。
体制づくりについては,定期的な情報交換や不測の事態に備え,各管理者間において,確実かつ即応性のある連絡体系を整えるため,定期および緊急時に対応した系統づくりを整えた。
また,道路管理者間はもとより,警察,消防,占用企業者等とも連携を図るとともに,準備期間において情報伝達訓練を,さらに連絡体制期間では最終的な情報伝達のチェックを行った。

③ 管理の強化
道路管理は非常に幅の広い行政分野である。
ここでは,公的施設の管埋,道路パトロール,工事現場の管理,占用企業者の管理,交通対策,職員の危機管理意識の向上および不法占用物件処理を考えた。

a 自主管理
自主管理が必要となる公的施設を抽出した点検施設リストを作成し,施設管理計画を定め,定期的な施錠や施設内容の確認(作動状態,資材等の確認)のための巡回を行った。
加えて,身分証明書,車輌,資機材,ヘルメット,作業服等の遺失防止に努めた。
b パトロール等
昼間,夜間の歩行巡回により構造物,照明灯,共同溝,マンホール等の点検を行い,日常では目が触れにくい箇所の変状発見に努めた。
管理強化措置区域における共同溝,情報BOXのマンホール等や高架橋の電話BOX,排水桝については警察との連携・協議・封印による強化に努めた。
加えてパトロールでは,経路,時間帯の変更を行うなどマンネリ化の防止にも努めた。

c 工事現場の管理
会期終了までの工事現場の管理強化,管理体制の強化を行うとともに,会期中における路上工事,作業の抑制を行った。
(a)工事現場の管理強化
準備期間から特別体制期間において,路上工事の抑制,工事用車輌の抑制,現場内のパトロール強化および工事資材,建設機械のリストアップによる管理さらに現場事務所・倉庫の施錠等セキュリティの確保に努めた。
(b)体制強化
路上工事や作業が行われる箇所については,現場毎に復旧方法や連絡体制等を記載した施工箇所リストを作り,緊急時連絡体制の確立,不審者・物件等の点検,工事看板・許可証等の工事現場据え付け徹底を図った。
加えて,作業員,車輌名簿の作成,腕章,身分証明書の携帯,工事用車輌ステッカー表示による作業員,作業車等の管理を行った。
(c)路上工事・作業の抑制
特別体制期間,サミット関係者が移動するルート上の全ての路上工事や測量等の作業ならびに車輌運行を抑制するため,予め工事の調整を行った。また,工事抑制に伴い仮復旧などの措置が生じる現場については充分な管理を行い,あわせてヤードの縮小,機材の撤去,仮囲い等の環境整備を行った。

d 占用企業者等との調整
基本的には,cの工事現場の管理と同じレベルであるが,占用企業者等との調整会議を重ねるとともに,文書による要請を行った。特に危機管理意識の向上,緊急時の連絡体制の確立,工事現場管理体制の強化,現占用施設の管理強化,合同点検の実施を行った。
e 交通対策
特別体制期間における交通総量抑制を図るため,路上工事,占用企業者との調整とあわせ,部内と一般に対する対策・要請を行った。
部内に対しては,業務用車輌や職員,家族,外来者等に対してのマイカー利用の自粛要請を行った。一般に対しては,道路情報板,VICS,広報紙,ホームページ等による呼びかけを行うとともに公共交通機関利用促進のためパークアンドライドも実施した。

f 環境整備
通常の維持管理においても,植栽管理,道路清掃等の充実に努めているが,従来にも増して整備効果等を勘案し,準備期間から特別体制期間までに整備を行った。特に特別体制期間における夜間の道路清掃および会場との連携・マッチには気を配り草花植栽による景観の創出,快適性の確保に努めた。
g 職員の危機管理意識の向上
日頃から職員一丸となって道路行政に取り組んでいるが,サミットの意義を再認識するとともに維持管理から危機管理までの幅広な訓練を行い万全の体制を整えた。
h 不法占用物件等の撤去
道路景観や円滑な交通を阻害する不法占用物件,放置車輌,不審物について,警察との連携を図りながら,是正指導,是正文書の通知,撤去を行った。

④ 緊急時の対応
風水害や事故等については,現行の道路防災業務計画書に基づき対応することとなるが,今回は,従来の風水害の事象にさらなる緊急的事象も想定する必要がある。このため他地域からの応援体制も含め,特別体制期間中における要員および資機材等の配置を行うとともに,その管理についても強化した。また,緊急事態に備え現地対策班も設置した。
a 備蓄資材,作業要員の確保
緊急時における連絡要員を配するとともに必要となる電気・機械・通信設備や緊急自動車等の点検・配備を行った。また,維持業者,協力会社については,準備期間中に必要な協定等の手続を行い緊急事態に備えた資材,要員の配置を行った。
●身分証明書,道路管理員証の発行
●緊急車輌の指定,点検,配備
●備蓄資材・通信機器の点検・準備
●災害対策車,衛星通信車,照明車,橋梁点検車等の配備
b 現場管理の強化
維持業者,協力会社,緊急事態時の作業車輌指定のリストを作成し,連絡体制の確立,人,資機材等の管理を行った。

(3)ソフト対策
ハードおよび管理面とあわせて広報等ローコストのソフト施策も重要なキーワードである。
日常でも勿論取り組んでいるが,サミットを一つの契機にステップアップできればと,従来の広報拡充とあわせてボランティア団体への支援等を行った。
① 広報活動
a 規制・案内情報
道路情報板,VICS,路側通信によるサミット開催予告,公共交通機関利用のお願い,交通規制状況の提供を行った。
b ホームページの開設
サミット開催状況,関連事業の紹介を行うとともにサミットに関する協力依頼,お願い,問い合わせの対応等をネットワーク化するため自治体と連携したホームページを開設した。

c 道の駅の活用
道の駅利用者に対し福岡・宮崎両県内の13駅にてサミット関連の情報提供(モニター画面)や,広報コーナーを設営し,パンフレット・ポスターなどの掲示を行った。
d協賛イベントの活用
サミットを迎えるにあたって関連イベントが開催3カ月前から月2回程度両地域で開かれることにあわせ,パネル,パンフレット等による道路の正しい使い方,不法占用物件の撤去,道路新技術等を紹介した。
e マスメディアの活用
新聞,テレビ,ラジオ,折り込み広告をフルに活用し,サミット開催に対するお願い,イベント広報,道路管理者の取り組み,道路の役割・効果の紹介を行った。
f 道路マップの作成
両地域とも国際都市であり,既存の地図を活用し,外国人に視点をあてた(公共施設,交通施設,著名地点をクローズアップ)外国語マップを作成し,プレスセンター,観光協会,県市の窓口等で配布した。

② ボランティア団体の活動・支援
ボランティア等の地域活動については道路行政のみならず広範なテーマでもある。
サミットを一つの契機として,民間団体・企業・自治会等に対するポランティア活動の呼びかけと協力要請を行い,活動に対する側面支援を行った。
a 団体
道路美化運動に関するボランティア団体,道路愛護運動推進協議会,道路沿線の自治会等
b 活動内容
ボランティアとして,ゴミ・空缶ひろい,植栽・管理,イベントヘの協力および花いっぱい運動,加えてモニター活動
c 側面支援
清掃用具,花の種・苗木の提供,地図等の配布。

3 サミットを終えて
蔵相会合は7月9日午後カナダ,外相会合は14日午前ロシア,沖縄では24日アメリカの帰国をもって日本でのサミット全日程が終了した。
矢野会長(九州地方建設局長),各委員をはじめ道路管理者は厳しい表清から笑顔に変わった。
手探り,手作りのこの1年間から開放された思いである。また,同時に道路管理者が進めている情報ハイウエイがサミット会合で,キーワード「IT」として全世界へ広がり,新たな緊張感を覚えた。協議会の使命はサミットの側面支援である。ハードからソフトまで粗っぽさは残るがマキシマムの対応を終えたと考えている。
これまで,道路行政分野の比較的ルール化し難い管理,広報活動をメインに紹介したが,1年間を顧みて,今後につなげるべきことやさらに力を注ぐべきことを留める。
(1)ハード面
VICS,ETC等テクノロジーの進展には強い使命感が不可欠
(2)ソフト面
●通信体系では予めの検証が必要
●巡回におけるランダム化(人・時間帯・方向)と早朝の実施
●情報の適確度,迅速度のとり決め
●管理の対象となる動きの把握力アップ
●道路区域および区域内施設の把握力強化
●マンホール封印の確実性の担保
●沿道区域開発行為の協力体制づくり
●住民参加に対する支援およびPR
●家庭ゴミ処理対応策

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