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バス停周辺整備に関する調査について

建設省 大分工事事務所
 調査第二課長
世 利 正 美

建設省 大分工事事務所
 調査第二課 調査係員
小 柳 恵 美

1 はじめに
大分市では,人口が増加しているものの,自家用車への依存性が高く,路線バスの利用者は年々減少する傾向にある。そのため,採算性は低下し,路線バスの利便性の向上が図りにくく,バス離れを助長するといった悪循環にある。
一方,今後の高齢化社会においては,高齢者の社会進出の増加が見込まれ,それを支援する交通手段の確保が必要となる。また,地球温暖化対策等の観点からも公共交通の利用促進が求められる。
そこで,本調査では,利用者および環境に負荷の小さい公共交通である「バス交通」の再生に図るべく,バス停の利便性,快適性,さらに安全性向上という観点から,バス停周辺整備計画の立案を行うものである。

2 調査の内容
(1)路線バスの利用実態
大分市内のバス路線図は図-2に示すとおりであり,大分市中心部へ向かう国道10号,197号,210号および(主)大分臼杵線でバスの運行が集中している。バス営業キロ数は年々増加しているが,乗車人員は昭和60年以降約50万人減少し,バス離れが進行している(図-3)。

(2)バス停周辺整備の問題点と課題の整理
① バス停周辺の整備状況
大分市の主要幹線道路である一般国道および主要地方道に面するバス停(上下計:433箇所)を対象として,バス停周辺の施設整備状況について調査を行った。
その結果,対象バス停周辺における施設整備状況は低く,上屋は61箇所,ベンチは62箇所と全体の14%の整備率であり,さらに駐輪場は1箇所,ポケットパークは2箇所にしか整備されていなかった(図-4)。また,大分市では,バスロケーションシステムが未整備の状況にある。

② バス利用者のニーズ
大分市TDM推進部会により行われた地域住民に対するアンケート調査結果によると,バス利用者は,待合室,上屋・ベンチといったバス待ちの快適性を図る施設,また利便性を高めるバスロケーションシステムに対する設置要望が高いことがわかった(図-5)。さらに,公共交通機関を利用しない理由として,「バス停が遠い」「JRとバスの乗換えが面倒」といったバスの利用のしにくさを指摘する声も多かった(図-6)。

③ バス停周辺整備の問題点と課題の整理
バス停周辺の実態調査結果およびバス利用者ニーズから,「利便性」「快適性」「安全性」の3つのサービス視点から,バス停周辺整備の問題点・課題の抽出を行った。
<利便性に関する問題点・課題>
〇 対象バス路線では,JR8駅とフェリーターミナル1箇所と接続するものの,これらの交通機関と接続するバス停では,上屋,ベンチ,接続案内板等がなく,施設的な乗換え拠点性が低い。公共交通機関を利用しない一つに「JRとバスの乗換えの不便さ」も挙げられている。
〇 また,「バス停まで遠い」ことも公共交通機関を利用しない理由であることから,バス停までの端末交通手段としての自転車利用への対応を図るべく,駐輪場整備が必要である。現在,歩行者の通行障害となる違法駐輪が多いバス停もある(図-7)。
〇 さらに,大分市内では未整備のバスロケーションシステム設置の要望が高い。

<快適性に関する問題点・課題>
〇 対象バス停においては,上屋・ベンチの整備率が低く,バス待合い時の快適性が損なわれている。バス利用者は待合室,上屋・ベンチの整備を最も望んでおり,バス待ちの快適性向上を図る必要がある。
〇 ただし,狭幅員の歩道上に設置されているベンチは,歩行者の通行障害となっており,これらの施設を整備する場合には,歩行空間以外のスペースの確保が必要である。
<安全性に関する問題点・課題>
〇 主要施設が集中し乗車人員が多い中心部では,幅員3m以上の歩道が整備されているものの,歩行者とバス待合い者との交錯を避けるポケットパークの整備が進んでいない。

(3)バス停周辺整備の基本方針の検討
バス停周辺整備における問題点・課題を受け,マイカーから公共交通機関への転換を促すためのバス停周辺整備の基本方針(表-1)を設定した。
さらに,基本方針に掲げた「バス利用者へのサービス向上」に向け,バス停周辺でのサービス提供の考え方を検討するとともに(表-2),バス停利用者の特性を規定する沿道施設の種類別に,施設整備の基本方針を規定した。

(4)バス停周辺整備計画の立案
バス停周辺整備の基本方針を受け,調査対象のバス停の中から
 ○ バス利用者が多いバス停
 ○ バス停周辺に空地などがあり施設整備が可能なバス停
を整備必要箇所として抽出した(表-4)。
この中から(主)大分臼杵線明野センター前入ロバス停(図-8)をモデル箇所として選定し,バス停周辺整備計画(案)の検討を行った。

明野センター前入ロバス停について以下のような,課題または問題点があげられる。
〇 大分市内でも最も大きい住宅団地である明野団地内に位置し,そのため利用客も多い。
〇 上り,下り共に,上屋および椅子が設置されているものの老朽化が進んでいる。
〇 下りバス停は,明野緑地広場前に位置しており,緑地と一体となったバス停周辺施設整備が可能と考えられる。
これらの現況を考慮し,下りバス停では,沿道の明野緑地広場を活用して以下の施設整備を行うこととする。
<利便性を向上する施設>
〇 緑地広場を利用して駐輪場を整備することとする。
<快適性を向上する施設>
〇 駐輪場を整備することにより,マイカーからサイクルアンドバスライドヘの転換が期待できる。
〇 当該バス停では,緑地広場を活用した施設整備が行えるため,利用者ニーズで高かったシェルターを整備し,合わせてベンチの整備も行うこととする。
<安全性を向上する施設>
〇 緑地広場を利用して,ポケットパークの整備を行う。
〇 ポケットパークは,安全性を向上する施設として整備のみならず,緑地広場と一体となった快適性を高める空間として整備を行う。

以上のような検討結果を考慮し,整備後のイメージ化を行ったものが図-9である。

3 おわりに
バス停周辺整備は,今後の高齢化社会に向けたバス利用の促進,道路環境改善事業の一環として必要性の高い事業である。今後は,整備効果の予測評価を行うとともに,バリアフリー化に伴う歩道整備事業,交通結節点改善事業等を整理し,これらの事業と組み合わせた事業実施を検討するなど,本調査の具現化に向けた検討を進めることとしている。

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