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これからの地域の安全・安心のために
九州大学大学院 工学研究院 環境都市部門 教授 小松利光

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、その規模や津波の強大な破壊力によって壊滅的な被害をもたらし、日本のみならず世界を震撼させた。この巨大な自然災害から如何にして復興するか、今後の備えをどうすれば良いのか。国としてあるいは地域としての基本的な考え方が今厳しく問われている。ただ、壊滅的な被害をもたらすのは地震や津波ばかりではない。同じ水災害である洪水や高潮、あるいは深層崩壊による大規模な土砂災害によっても、同様の大規模かつ壊滅的な被災に至る可能性が高い。実際地球温暖化の下、近年起こっている水・土砂災害の実態には大きな変化が現れつつある。
2009年の台風8号(Morakot)による台湾の災害は、4日間で3,000㎜という総降雨量もさることながら、深層崩壊による大規模な土砂災害によって一村が一瞬にして消滅するという衝撃的な被害をもたらした。その後も世界各地で記録的な大雨による災害が続発しており、降雨の規模やその発生頻度が増大してきている。
しかしながら現時点で、あらかじめ水・土砂災害適応策の全体像を明らかにすることは極めて困難である。研究や実践の現状を把握して課題を抽出し、解決策を見出して実行するという一連のサイクルを着実に進めて行くことに重点を置かざるを得ない。災害実態事例に基づいてその変化を捉え、地球温暖化の影響に関する中長期的な視野を確立し、研究と実践の相互の連携を深め、新技術を開発し、経済影響を評価するなどの実践を通じて、適応策の深化を順次成し遂げていくというボトムアップ型の取り組みが不可欠なのである
ところで、防災を担う公共事業に対しては未だに逆風が吹き続けている。既に公共事業予算は最も多かった年の半分以下となっている。地球温暖化などで災害外力が上昇していく中、我が国の明日への投資、また将来の安全・安心のための投資である公共事業費が、他の政策の財源捻出のために、かくも安易にカットされて良いはずがない。インフラ整備は一朝一夕にしてできるものではなく、国家百年の計に基づくべきものである。政治がそのあたりをきちんと理解しているとは到底思えない昨今の状況である。
ただその中でも公共事業の受益者である市民の側から、公共事業擁護の声が上がってこないのは、大きな問題をはらんでいる。これはこれまでの公共事業が市民感覚から離れ、一人よがりに陥っていたことを示しているのではないだろうか。我々は反省すべき点は謙虚に反省すると共に、もう遠慮せずに『社会のために必要なインフラは必要!』と政治にも市民にも声を大にして主張しつつ、新たな公共事業のあり方を模索していきたい。
ただ、近い将来市民や政治家の理解が今以上に得られたとしても、昨今の我が国の財政状況のもとでは、公共事業費の大幅な復活は望めない。我々は限られた乏しい予算の中で、地域の安全・安心のために最大限の効果を発揮し得るインフラ整備のための新しい技術を開発し、展開していかなければならない。

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