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チャレンジ!! 土木施工管理技術検定

建設省武雄工事工事務所
 牛津出張所長
前建設省九州地方建設局
企画部技術管理課
教習係長
森 田 昭 廣

1 はじめに
「資格時代だ!」と言われて久しくなります。
いつかは取ろうと思った資格も日常生活や業務の忙しさに追われ,つい取得のチャンスを逃がしておられる方々も多いことかと思います。
私どもが従事するそれぞれの専門分野の資格取得については,特殊なものを除き,ある程度の経験の積み重ねがあれば誰でもそのハードルを越えることができるのではないでしょうか。
問題はこれまでの自分の技術的経験を如何に合理的に整理し,それぞれの試験問題に対する具体的な回答づくりに結びつけるかということです。
また,これまで出題された問題の出題傾向とパターンを十分に把握し,問題に対する具休的な回答案のイメージを自分の中に形づくることも重要な課題となります。

2 土木施工管理技術検定
土木施工管理技術検定試験(いわゆる土木施工管理技士試験)は,平成6年6月の建設業法の改正に伴い,我々土木技術者自身にとってますます重要な資格となっております。
建設業法は「建設業を営む者の資質向上,建設工事の請負契約の適正化を図ることによって建設工事の適正な施工を確保し,発注者を保護するとともに,建設業の健全な発達を促進し,もって公共の福祉の増進に寄与すること」を目的として定められています。
これを受けて同法第25条の25には「施工技術の確保」が,また第26条には「主任技術者および監理技術者の設置等」が定められています。
これらの規定により,建設業者は建設工事の施工に当たって,一定の施工管理能力をもった技術者を現場に配置することが義務づけられています。
土木施工管理技術検定は,建設工事に従事する技術者の施工技術の向上を図るため建設大臣が行うこととなっており(建設業法第27条),建設工事の施工管理上必要とされる一定の技術基準について検定し,その合格者には「1・2級土木施工管理技士」の称号を与え,その技術力を社会的に認定することを目的としています。

3 受験者数と合格率
1・2級土木施工管理技術検定の受験者数は,ここ数年増加を続けています。特に平成8年度の伸びは著しく,1級が前年度比約18%,2級では約15%となっております(図ー2,3参照)。
このような受験者数の急激な増加は,建設業法の改正に伴い資格の裏付けのある土木技術者の配置が義務付けられたことなどにより,土木施工管理技士資格の取得に対する一般の認識が深まったことが直接の原因となっているようです。

しかしながら,合格率については表ー2のとおり1級の学科試験で全国平均で26.9%と3割を切る大変狭き門となっています。また,福岡地区の合格率については23.1%と全国平均より3ポイント低い数字となっています。これは試験時期が7月の梅雨期と重なるため,豪雨への対応など厳しい現場の実情や,高温多湿な試験会場の環境など様々な原因が考えられます。
日常業務を消化しながらの受験準備なので厳しい点もあろうかと思いますが,冒頭にも述べたとおり土木施工管理技術検定については,自らの技術的経験の集大成ともいうべき試験ですので,付け焼き刃ではなく長期的な視野に立った準備を早い段階から行っておくことが突発的な状況を克服する重要な要素となります。
急な状況の変化が生じても慌てず落ち着いて受験できるよう,日常業務を通じた技術的素養の向上や日頃の受験準備を進めていく必要があろうかと思います。忙しいから受験できないのではなく,忙しいからこそ受験する意味があるのだと考えて下さい。

4 これまでの出題事例と対応
受験に先立ち,過去の出題傾向ならびにそのパターンを十分に理解し,自分なりの回答を作成する訓練が重要であることは,先に述べたとおりです。
ここでは過去に遡り,必須・選択問題それぞれの分野毎の出題数を見ることとします。
これらの表から言えることは,問題が建設技術全般から幅広く出題されていること,選択問題では,労働基準法,労働安全衛生法,振動規制法,騒音規制法等建設業に密接に関係する各種法規について数多くの問題が出題されていることです。
特に我々技術者は,日常取り扱う技術的な事柄については比較的熱心に取り組むものの,苦手意識の強い法律に関する問題は敬遠しがちですので,まんべんなく得点するためにもこの際法規関係もしっかり勉強しておく必要があります。

5 小論文への対応
土木施工管理技術検定においては,1・2級試験とも実地試験には自らの技術的経験を記述する設問が設けられています。この設問は,受験者が「土木施工管理技士」として必要とされる技術的経験や問題解決能力を備えているかどうかを確認するためのものですので,当然配点も高く設定してあることが予想されます。
技術論文は,“明確”に“正確”にをモットーとし,読みやすく,理解しやすい文章であることが望まれます。したがって,論文を書く前に記述する事柄や,そこで何を訴えたいかを十分に整理し,簡単なメモ(箇条書きで十分)を作成した上で文章を組み立てる習慣をつけることも重要です。
問題については,例年の出題事例からだいたいのパターンは推測できるわけですから,事前に問題を想定し,文章を書く訓練を積んでおくことも事前の準備としてお勧めします。
日常業務では,パソコンを使い切り貼りで文章作成を行っていますが,一つ一つの文章を文意に沿って組み合わせる方法と違い,一つのテーマで貫かれた文章を手書きで書くことは相当の訓練を必要とします。
我々技術者の多くは,文章を書くことに対し苦手意識を持っています。しかしながら技術論文は,小説などと違って文学的センスを必要としません。
要は,自分の考え・経験を5W1Hの要素毎に分解し,分かりやすく論理的に表現すれば良いのです。新聞や専門書の技術レポートを参考として良い小論文を書く訓練を行って下さい。

6 おわりに
社会資本整備を担う建設事業の役割は,産業経済の発展や国民ニーズの多様化に伴い今後ますます重要な課題となっていくことが考えられます。
良質の社会資本整備を推進するためには,社会的要請に対する十分な認識と高度な技術力を備えた技術者の育成が不可欠となります。
確かに,僅か一日か二日のペーパーテストでその人間の全ての技術的素養を確認することはできないかもしれません。しかしながらその人がどのくらいその試験を受験するために準備をしたか,何事に対しても真摯に対応する人物であるかどうか,基本的な技術や法律に対する認識を備えているかなど,技術者としての必要条件をうかがい知ることはできるのではないでしょうか。
むしろ重要なのは,難関を突破し晴れて「土木施工管理技士」となってからのちに,それぞれの現場で問題解決に当たるとき,技術者であるという認識を持って自らを律し,困難な課題に対し技術的に正しい対応がとれるかどうかということであると思います。
したがって,「土木施工管理技士」への合格は,建設技術という世界の入り口の最初のドアにすぎないと考えた方が妥当なようです。我々がそれぞれの担当業務を果たしていく過程では多くの課題に対処しなければなりません。その中で自らの人間性と技術力を常に磨き続ける姿勢を貫けるかどうかという命題に対する試練がこの試験の本当の役割でもあるように思います。
働きながらの勉強は確かに厳しいものです。しかしながらこの道のプロとして,土木施工管理技士は挑戦するに足りる資格ではないでしょうか。
皆様方のご健闘をお祈りいたします。

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