福岡市周辺道路網計画
(特に福岡外環状道路)について
(特に福岡外環状道路)について
建設省福岡国道工事事務所長
中 垣 光 弘
1 はじめに
近年のモータリゼーションの進展にともない,産業,経済から日常生活に至るまで,増大する自動車交通需要に対して道路の担う役割はますます重要なものとなっている。
弥生時代から2000年以上の歴史を持つ福岡市が都市の形態を整えたのは平安後期といわれている。
以来,大陸への貿易基地であり,九州の政治,産業の中枢都市であった。明治22年市政制定5.1万人であったが九州の中枢都市として発展し昭和60年では110万人都市に成長した。
その活力は市域を越え広がっており,福岡市への3%以上の通勤依存関係にある市町村数は,52市町村(昭和60年国勢調査)にも及ぶ。人口の集中や都市域の拡大に応じ,人々の移動は大量,かつ広域化し,道路の混雑,通勤距離の増大,交通事故など多くの交通問題が生じている。
福岡外環状道路は,これらの交通問題に対処するため,計画された重要な幹線道路であり,交通基盤が弱体な福岡都市圏西南部地域における道路網の核となる道路としてその早急な整備が望まれている。
2 福岡都市圏の都市活動と道路交通の概要
2-1 福岡都市圏の人口およびDID地区(人口集中地区)の推移
福岡都市圏(福岡市と周辺の春日市,大野城市,粕屋町,志免町)は急激な人口の伸びがみられ,福岡市内も増加しているが,近年その周辺市町での伸びが著しいことがわかる。
DID地区(人口集中地区)の推移は,昭和40年以降急激な市街地の拡大があり,特に南部,西
2-2 道路交通の概要
自動車の福岡市関連交通を道路交通センサス(全国道路交通情勢調査)より見ると,都市圏の拡大やモビリティの向上によりトリップ長が増加し広域交通量が増加しており今後も増えると予想される(図ー4)。
自動車交通需要の変化では,福岡市に流出入する交通の伸びが大きく,交通需要が郊外部に今後とも伸びていくことが予測される(表ー1)。
図ー5は福岡市の自家用自動車の行政区間相互の交通需要を見たものである。交通需要は都心である福岡市中央区,博多区を中心に展開し,発生集中量で都市圏の約6割を占める一点集中型構造となっている。
2-3 道路網の概要
福岡都市圏の道路網は,国道3号,201号,202号,263号,385号の一般国道と九州自動車道を骨格として形成されており,これら幹線道路によって圏域外の主要都市と連絡されている。そして,これら幹線道路網を補完する形で主要地方道や一般県道が配置されている。
福岡都市圏の一般県道以上について道路の混雑状況を見たのが図ー6である。
都心部の主要道路を中心に著しい混雑状況をしているのがわかる。
その受け皿となる福岡市の都市計画道路の整備状況は,図ー7に示す通り,整備済率は市全体で38.2%であり,11政令指定都市中第10位と低い水準にあり,今後の整備の促進が要請されている。
特に急激に市街地が拡大した西南部方向で交通網の整備が遅れている。
3 福岡都市圏の道路整備の課題と基本方針
福岡都市圏は他都市とくらべて道路整備が遅れており,交通需要に対応した道路整備が早急に必要である。そのため,都市計画街路等の整備促進を図り道路ストックを拡充することが先決である。
さらに交通需要が一点集中型になっており,中心部の混雑が著しく放射状道路だけでは集中する交通需要を処理できず環状道路が必要である。そのため,福岡外環状道路と都市高速道路の整備により放射・環状道路を組み合わせたネットワークを確立することが必要である。また,確実性・迅速性を持った高規格道路の整備により九州の中枢都市として各地方との連絡を強化する必要があり,九州縦貫自動車道および都市高速道路と一体となった西九州自動車道路の整備が急務である。
4 福岡外環状道路の事業概要
福岡外環状道路は,福岡都市圏の骨格を形成する重要な幹線道路であり,福岡都市圏の様々な交通問題に対処する道路として,その早急な整備が望まれていた。昭和62年6月に閣議決定された「第4次全国総合開発計画」において,福岡外環状道路は高規格幹線道路として西九州自動車道の一部に組み入れられ,九州の新しい交通ネットワークを形成することになり,急速に事業が展開することとなった。
福岡外環状道路は一般国道202号のバイパスとして昭和48年度に事業化されたが,事業費が莫大であること,市街地(主に住宅地で通過地域の86%が市街化区域およびDID区域である。)を通過していることから,遅々として事業が進まず,昭和52年に城南区片江地区において区画整理事業関連で用地が取得され,昭和57年3月に側道として延長約420mが部分供用されただけであった。
その後も年間10億程度の予算で用地買収を進めていたが,1,000億円を越える事業費が必要であることから「幻の外環」とも呼ばれていた。
前にも述べた通り,全国をネットする高規格幹線道路に取り組まれたことにより,昭和63年度より本格的に事業を進めることが出来るようになり,事業が急速に進展することとなった。
当道路は,図ー8に示すとおり,福岡市博多区月隈から同市西区福重に至る延長16.2kmである。幅員は40mで,昭和44年,道路区分3(幹線道路に相当するもの)として都市計画決定されている。
しかし,高規格道路として採択されたことから,都市計画決定されている幅員の中に自動車専用道路(1種3級)を取入れ図ー9(標準断面図)および図ー10(完成予想図)に示すような複断面構造とした。
また,この自動車専用道路と一般街路とのアクセスとして,一般国道3号福岡南バイパス,都市計画街路博多駅春日原線(通称:筑紫通り),一般国道385号,都市計画道路六本松東油山線(県道東油山唐人線),一般国道263号,一般国道202号今宿道路と交差する箇所にインターチェンジを設置する計画とした。
インターチェンジの形式は,市街地であることから極力用地面積を少なくするため,ダイヤモンド型としている。
インターチェンジの間隔は平均3~4kmであり,高速自動車国道と比べて幾分短くなっているが,これは本道路が福岡都市高速道路と一体となって福岡都市圏の自動車専用道路網を形成するものであり,都市高速道路的な機能を多大に発揮すると思われるからである。
本道路の起点部である月隈では,都市高速道路および太宰府月隈道路(仮称)と終点部の西区福重では,都市高速道路および今宿道路と自動車専用道路どうしが接続するためジャンクション形式となっている。
5 外環状道路の整備効果
福岡外環状道路の整備効果としては次のことが考えられる。
〇 福岡都市圏の骨格となる路線であり,地域産業経済の発展に大きく貢献する。
〇 福岡都市圏における放射道路が環状方向に連結される事により,円滑な交通が確保され,所要時間が短縮される。
〇 福岡市西南部地域における生活道路は,交通混雑,交通安全が問題となっているが,当道路が整備されると通過交通が排除され,これらの道路の混雑が減少する。
〇 広い歩道と豊かな植栽は沿道環境の改善をもたらし,快適で,潤いのある空間を創造する。
6 組織協力
当道路は,福岡市にとっても西南部の交通の鍵を握るものであることから,福岡市は事業の推進を全面的にバックアップするため,昭和63年4月に福岡市土木局に新に外環状道路推進部を設置した。
外環状道路推進部は部長以下用地課,調整課,管理課からなっており,総勢18名の体制を取っている。また,平成元年には,さらに福岡市土地開発公社に外環状道路用地課を新設した。
外環状道路の用地取得については,市および市土地開発公社は建設省から用地業務委託を受け,当事務所と一体となって地区を分担し,円滑に用地取得を行っている。
調整課は,地元および関係機関等との調整を当事務所と一体となって行っており,本事業を進めるにあたり強力な助っ人となっている。
7 最近の事業経過
急速に事業を進めることになったことから,昭和63年5月末から全線16.2kmにわたり地元説明に入った。昼間は図面作成,夜は地元説明と,土曜,日曜,盆を除き連日行い,46回の説明会が終了したのは秋風が吹き始めた9月であった。説明対象者数は2,000人にも及んだが,大きな反対もなく,全線の測量立ち入りについては了解が得られた。
説明会にはいる前,最も心配している事は,自動車専用道路が入ることによって,インターチェンジ付近の幅員が広がり,当道路と調整して建造された建物が新たに用地買収の対象になることであった。福岡市西南部の日常的な交通渋滞に強い危機意識を住民の方々は持っておられ,福岡現状道路の整備に非常に協力的であった。
その後,起点側と終点側から用地買収に入り,現在順調に事業が執行されているが,更に住民の理解を得るため,側道で供用していた片江地区600m区間については,平面部をモデル道路として,平成元年12月16日供用した(写真ー1)。
8 事業進め方
事業の進め方としては,延長16.2kmと長く,平面部については,整備効果の高い区間から整備していく。福岡外環状道路は,福岡都市高速道路,一般国道3号・一般国道202号バイパスと一体的に利用する交通が多いことから,これらの道路との接続を考慮し,両側の第1工区,第4工区から整備することを考えている。このため,設計協議用地買収もこれらの区間を重点的に行っており,1工区の福岡南バイパスから一般国道385号,4工区の一般国道263号から今宿道路までの平面部については早期に完成させることを目途としている。また平面部全線については,平成10年代早期の完成を目指している。
自動車専用道路部については,福岡都市高速道路が博多区月隈および西区福重まで完成した後に事業に着手することを予定している。
9 おわりに
設計協議については,3地区を残すのみでほぼ完了している。
今後の作業としては自動車専用道路部の都市計画決定,またそれに伴う平面部の都市計画変更等の作業を早急に行う必要があり,現在鋭意その準備を進めているところである。
当然,環境アセスメントも実施することとなるが,当道路の沿道は,ほとんど良好な住宅地を形成していることから,環境に対する十分な配慮が必要である。
設計施工にあたっては,特に道路環境に配慮し,沿道と調和が図れるよう努力し,住民に愛され,期待される道路として,一刻も早い完成をめざして,アジアの拠点として発展著しい福岡都市圏の良好な都市構造の形成に役立ちたいと考えている。