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九州における「防災道の駅」の選定
~激甚化・頻発化する自然災害に備えた広域防災拠点の整備に向けて~

国土交通省 九州地方整備局
道路部 交通対策課 課長
巻 木 健 三

国土交通省 九州地方整備局
道路部 交通対策課 係長
鵜 木 昌 宏

国土交通省 九州地方整備局
道路部 交通対策課 係員
佐 野 将 輝

キーワード:道の駅、防災、広域防災拠点

1.はじめに
国土交通省では、「道の駅」第3ステージの取り組みとして、防災拠点化、ポストコロナ、地域センター化に向けた取り組みを推進している。
特に防災拠点化の取り組みの一環として、都道府県の地域防災計画で「広域的な防災拠点」に位置づけられ、今後、防災拠点としての機能が期待できる「道の駅」を「防災道の駅」として選定し、防災拠点としての役割を果たすためのハード・ソフト両面からの重点的な支援を行うこととしている。今回、都道府県からの提案を踏まえ、選定された「防災道の駅」は、全国で39駅、うち九州では6駅である。
本稿では、「防災道の駅」の制度及び九州における取り組みの現状を紹介する。

2.これまでの防災拠点としての道の駅
(1)「道の駅」の機能
『通過する道路利用者へのサービス提供の場』をコンセプトに、休憩・休息の場として「道の駅」制度は平成5年度に誕生した。
その後、様々な機能を取り入れながら変遷し、『道の駅自体が目的地』をコンセプトに、公共サービスの集積や、防災インフラ、訪日外国人観光客への案内、情報発信の強化により、地域の拠点機能化とネットワーク化を行った。
防災面として、「道の駅」には、24時間使用可能となる駐車場、トイレ、情報施設等があり、さらには農産品等の食品や生活用品も取り扱っていることから、避難所としても利用されている。
(2)激甚化・頻発化する自然災害への対応
九州管内の「道の駅」(137駅)のうち、地域の防災拠点施設として約9 割(125駅)が何らかの防災設備を備え、約4 割(59駅)が地域防災計画に位置付けられており、地域の防災拠点施設として役割を担っている(図- 1)。
また、多くの「道の駅」は幹線道路や結節点等の交通要衝に接していることから、交通インフラが比較的安定し、被災時には優先して復旧される点もあるため、地理的にも優位性があり地域の防災拠点に適している。
このことから、平成28年熊本地震では、道の駅「あそ望の郷くぎの」において、広域的な復旧・復興拠点として活用された(写真- 1)。
地域の安全・安心を支える「道の駅」として、今後も南海トラフ地震等の激甚化・広域化する自然災害に備えるべく、より高度で広域的な復旧・復興活動拠点の位置付け・整備が望まれている。

図1 九州管内(137駅)の防災施設の整備状況( 令和3年4月時点)

写真1 道の駅「あそ望の郷くぎの」における自衛隊による復旧・復興拠点の活用事例

3.「防災道の駅」制度の誕生
(1)「防災道の駅」について
前述2.(2)のとおり、広域防災拠点としての必要性の高まりを受け、第3 ステージでは『地方創生・観光を加速する拠点』を推進する取組みの中で、全国の安心拠点となる「防災道の駅」を選定し、重点的に支援を行うこととなった。
本制度では、広域的な防災拠点施設として、自衛隊、消防警察、医療機関、TEC-FORCE 等の救急・復旧・復興活動、緊急物資の基地機能等が円滑に機能するため、ハード面やソフト面の重点的な支援を行うこととしている(図- 2)。

図2 「防災道の駅」の制度の概要

(2)選定要件
「防災道の駅」は、広域的な防災拠点としての役割を担うことから、都道府県の防災(受援)計画に位置付けられていることが必要であるほか、防災活動の支障にならないよう基本的な施設整備・体制が整っていること(あるいは今後3年程度で整えるための具体的な計画が確認出来ること)が選定要件となっている(表- 1)。

表1 選定要件

(3)重点的な支援内容
「防災道の駅」の役割を果たすために、様々な機能強化のための支援策を講じることとしている(表- 2)。
ハード面では、それぞれの役割に対して求められる機能に応じた、基本的な施設整備や、更なる防災機能強化に対応する施設整備を支援する。ソフト面では、災害時に適切かつ円滑に対応できるために、BCP(業務継続計画)策定や実践的な防災訓練の実施等の支援を行うものである。

表2 機能強化のための主な支援<

4.九州の「防災道の駅」
九州で選定された「防災道の駅」は、災害発生箇所・地域への進出拠点・活動拠点として位置付けられ、自衛隊、消防、警察、TEC-FORCE 等の拠点となる予定である(図- 3、表- 3)。
広域防災拠点としての基本的な防災機能(耐震化、無停電化、通信設備、貯水タンク、防災トイレ、防災倉庫)は概ね整備されており、未整備施設も、今後、3年程度で整備予定である。今後は、広域防災拠点の役割をより明確化し、更なる防災機能強化を図ることとしている(写真- 2)。
BCPは、すべての「道の駅」において、未策定である。災害協定や防災訓練の災害時オペレーションの基本となるものであり、すべての関係者がより実践的に行動できる計画として策定される必要があることから、BCP策定は急務である(写真- 3)。

図3 九州・沖縄ブロックの「防災道の駅」位置図

表3 「防災道の駅」の位置づけ、施設・体制(令和3年6月時点)

写真2 「防災道の駅」における施設整備状況

写真3 道の駅「たるみずはまびら」における桜島火山爆発総合訓練の実施状況(令和2年1月11日)

5.今後の取り組み
(1)推進体制の構築
選定された「防災道の駅」においては、広域防災拠点としての役割を担うため、現状での課題等を整理し、必要な機能強化として整備方針の検討を行うこととなる。整備方針については、国や県・自治体の「道の駅」担当者、駅長はもとより、県や自治体の防災担当部局も加えた推進体制を構築し検討を行うこととしている。
また、より実践的・機能的な施設整備を行うために、実際に利用することとなる自衛隊、消防、警察等の関係者からの意見を組み入れながら検討を進める必要があると考えている。
上記推進体制により、整備方針を策定し、今後「防災道の駅」としての役割・機能を有する施設、体制の整備を行う予定である。
(2)進め方と課題
今回、選定された「防災道の駅」においては、速やかに役割・機能を発揮する必要があり、推進体制のもと速やかな整備方針及びBCPの策定が求められる。広域防災拠点の役割など関係者が認識を共有しスピード感をもって調整を図ることが重要になる。
さらに、整備方針に基づく速やかな施設整備が必要であり、整備に必要な予算を確保することが重要になる。
また、整備・策定された施設及びBCPは、訓練等により実現性・実効性のあるものとなるよう必要に応じて見直し等を継続的に行っていく必要がある。特に、BCPは、災害時における行動の基本となるものであるが、九州の「道の駅」では策定された事例がなく、運営に携わる駅長や従業員などの方々には馴染みがないものである。実践的な訓練を繰り返し行うことにより、実現性・実効性のある内容に見直して行くとともに、分かりやすく誰でも理解しやすい内容にしていくこと、又、すべての関係者が共有できるものにしていくことで実践的な心構え、ノウハウを醸成していくことが重要になる。
国としては、それぞれの「防災道の駅」において、実現性・実効性のある施設整備やBCP策定が速やかに整備されるよう重点的な支援を行っていきたいと考えている。

写真4 道の駅管理者との意見交換会の様子

(3)他の「道の駅」への展開
冒頭に記載したとおり、現在、一部の「道の駅」では、地域防災計画に位置づけられ、地域の避難所に位置づけられていることにより、災害時は地域の防災拠点として生活物資の提供など重要な施設にもなっており、「道の駅」の運営は、地域住民にとって必要不可欠なものとなっている。そのため、万が一に備えた準備が必要であり、被災時でも業務を継続させることが重要になる。
今回、「防災道の駅」の選定でBCPを策定することとなり、他の「道の駅」の先駆事例になる。災害時、スムーズな運営再開が可能となるよう地域防災計画に位置づけられた「道の駅」においてもBCPの速やかな策定が行われ、更なる防災力の向上に繋がることを期待している。

6.最後に
「防災道の駅」は、今年度、全国で39駅、うち九州では6駅が初めて選定されたところである。それぞれが目的・役割に応じた施設整備やBCP策定、防災訓練等が全国の「防災道の駅」で行われていくことになる。
選定された九州の「防災道の駅」が、今回の取り組みにより先進的で機能性の高い施設として整備され、全国の模範になる施設となるよう期待している。

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