福岡外環状道路等における3次元GISシステムについて
国土交通省 福岡国道事務所
副所長
副所長
徳 留 忠
1 はじめに
本システムは①福岡外環状道路等の事業を行うにあたり,地域住民の方々へ事業を容易に理解認識して頂ける事,②福岡外環状道路及び都市高速道路のデジタルデータ,各地の設計協議等議事録,CADデータ等をデータベース化し,既存データの有効活用,統合管理システム運用を図る事を目的として構築した。
このシステムを複数路線に対応させるため,前年度は博多バイパス及び今宿道路のデータベースを構築し外環システムのインターフェースによりアクセスさせ,事務所所管の各路線の総合管理の容易性を図るものとした。
2 システムの概要
(1)3次元VRの作成
従来,地元説明会では,「平面図,縦断図,横断図」やパース画,フォトモンタージュ等を利用し説明していたが,地域住民の方々には理解しにくい面もあったと思われる。これは,2次元図面等からの3次元想像の正確性やその想像さえ不可能の場合がある事,また視点が固定化されているので視覚可能な範囲が限定されている事等により統一された想像領域の形成が出来にくい事が要因と考えられる。
今回の3次元VRシステムでは2次元地図と3次元VRの連動表示により,現在位置の把握と臨場感及び細部観察を同時に実現できるものとした。なお,3次元VRは,2次元地図等より正確な3次元形状を表示し,視点は3次元空間の任意の位置とする事より,誰が見ても即座に理解が出来,その結果として本来の事業説明が円滑に行えた。
(2)属性データベース
本システムの中に図面データ,写真データ,議事録等を格納し,必要な時に3次元VR,2次元地図の位置情報やキーワード検索から呼び出すことにより,日常業務の図書の保管性を向上させた。特に福岡外環状道路では,地質データや地下水位データを記録したため,今後は,事業損失データ等として活用が期待できる。
(3)議事録検索システム
住民打合せ,警察協議,所内打合せ等の各協議議事録約32,000枚をこのシステムに格納させ,議事録検索ができる様にし,業務の効率性,整合性を向上することが可能となった。具体的には,協議相手,担当課,担当者,開催場所,タイトル,協議年月等による検索の他,議事録の本文全てを対象としたキーワード検索(全文検索)が可能である。
また既存議事録のスキャニングデータを取り込み,協議時の資料(図面等)への書き込みも確認できるものとした。
3 今後の活用方法
本システムはWed/LAN対応により,所内の各課で閲覧でき,事務の迅速性や,簡素化を向上させた。今後は,用地取得状況や施工時における工事工程進捗状況,出来形管理,さらに供用後には,道路台帳,構造物変状経歴,補修補強履歴,災害履歴,交通事故分析等の維持管理のデータベースとして十分活用できるものと考える
4 終わりに
本システムは地域住民等への合意形成手続きの迅速化を目指し,事業説明を従来の2次元より3次元に進め,より理解を深度化させ得るツールとして活用してきたが,行政における電子化を地域住民等に浸透させるためにも有益となるものである。また,道路事業に対する説明責任を果たすためにも貴重なツールとなり,地域住民の方々へのわかりやすく説明できるシステムであると確信している。
今後は,施工時,供用後における各資料を格納し,さらなる活用性のあるシステムヘと拡張すると共に利用して参りたい。
最後に,本稿の執筆にあたり御協力いただいた,パシフィックコンサルタンツ(株)をはじめ関係各位の皆様に紙面を借りて厚く御礼申し上げます。