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宮崎県におけるインフラストック効果と
今後の社会資本整備について
東憲之介

キーワード:ストック効果、現場体験ツアー、PR 活動

1.はじめに
宮崎県では、近年、東九州自動車道や細島港など社会インフラの整備が進み、地域活性化の期待が大きく膨らんできている。
国においては、厳しい財政制約の下、ストック効果を重視した社会資本整備への重点化を進めることとしているが、今後とも社会資本整備が必要な本県においては、道路、河川、港湾などのインフラ整備によって、地域経済の活性化や生活環境の改善が図られる「ストック効果」をしっかりと検証し、社会資本整備の必要性・重要性を広くPRしていくことが重要であると考えている。
本稿では、今年度実施したストック効果のPR等に関する取組の紹介と、地方創生に向けた今後の社会資本整備について意見を述べる。

2.ストック効果事例集の作成・公表
(1)ストック効果事例集の作成
国土交通省では、平成27年4月に本県における東九州自動車道と細島港の整備に伴い企業進出や木材輸出の促進等の効果が生じた事例など、全国13のストック効果の好事例をとりまとめ、公表された。
これを受け、本県においても、これまで整備を進めてきた道路や河川、港湾などのインフラについて、ストック効果を検証し、事例集を作成することとした。
事例集の作成にあたっては、本庁と土木事務所職員が、市町村や関係企業等に足を運び、整備が推進されたことによる具体的な効果をはじめ、統計データや地域住民等の生の声の収集など様々な視点から調査を行った。

(2)知事定例会見で事例集を公表
県では、県内20の事例をとりまとめ、同年7月8日の知事定例記者会見で公表した。
河野知事は、「宮崎こそが、このインフラ整備のストック効果を最も発信できる、また実証できる、そういう立場にあるという思いのもとに、広くPRをしていきたい。」と力強く意気込みを語った。
県では、この事例集を、国への要望活動をはじめ、県庁ホームページへの掲載や、庁内のパネル展示、さらには各種会議や職員研修、民間研修などにおいても活用するなど広くPR活動に努めている。

(3)事例発表
また、同年6月25日には、宮崎市で「東九州新時代のインフラストック効果」をテーマに、「九州地域活性化シンポジウム」が開催され、地元経済界や自治体など約610名が参加した。
このうち、パネルディスカッションでは、宮崎県商工会議所連合会の米良会頭がコーディネーターをつとめ、行政側のパネリストとして参加した内田副知事が、事例集の公表に先立ち、本県におけるストック効果事例(東九州自動車道、都城志布志道路、細島港、油津港)について発表し、活発な意見交換が行われた。

3.県民に対するストック効果のPR活動
本県では、実際の道路や河川などのストック効果と地域づくりについて県民が体験し、ストック効果を感じることが重要だと考え、同年8月と12月の2回にわたり、地元の出版社との協働企画で現場体験ツアーを開催した。

(1)国道219号 道路のストック効果現場体験
●概要
西米良村の「平成の桃源郷」を目指した独自の取組は、「地域づくり表彰」(国土交通大臣賞)を受賞するなど、全国の地域活性化の模範となっている。それを支えてきたのが、宮崎市から西米良村につながる「命の道」国道219号である。
今回は、これまでの道路整備効果(ストック効果)を実感していただきながら、早期完成が期待される工事現場を見学していただいた。
日 時:平成27年8月20日(木)
参加者:一般募集した45名

●地元の声(小川作小屋村運営協議会上米良会長)
道路整備のおかげで観光客が増加しています。そして、地域の活性化にもつながっています。

●参加者の感想
・人や物流がスムーズになるのは良いことです。
・今後も道路の整備をお願いします。
・村の方の気持ちが一つになって良い。
・また、友人を誘って西米良に行きたい。

(2)諸塚村インフラの「ストック効果」現場体験
●概要
平成17年9月の台風14号で河川が氾濫し、複数の家屋が全壊するなど甚大な被害を受けた諸塚村。これまで進められていた宅地嵩上げ等を行う水防災事業が平成27年3月に完成し、洪水に対する安全性が向上、中心商店街では店舗の新築も進むなど、新たなまちづくりにも期待が寄せられている。それを支えてきたのが、河川や道路のインフラである。
今回は、宮崎市から諸塚村までの日帰りインフラツーリズムを開催した。
日 時:平成27年12月10日(木)
参加者:一般募集した40名

●地元の声(諸塚村観光協会事務局長)
これからも、インフラのストック効果による観光客の増加、地域の活性化を期待しています。

●参加者の感想
・インフラっていうのがやっぱり大事なんだなあ。
・応援の気持ちで買い物しました。
・諸塚村最高でした。3月頃、泊付きで来たい。
・山間地のインフラはまだまだだと感じました。

4.市町村の取組状況
県内市町村においても、広報誌などにより積極的にストック効果のPRが行われており、都城市においては、都城志布志道路のストック効果、日南市においては、油津港や東九州自動車道の完成に向けてのストック効果が、広く市民にPRされている。

5.地方創生と今後の社会資本整備について
本県は、東九州自動車道などのインフラ整備の着実な進展に加え、大型クルーズ船の相次ぐ寄港など、国内外に向けて大きく飛躍する時を迎えているものの、中山間地域を多く抱え、少子高齢化に伴う人口減少や都市部への人口流出に歯止めがかからない状況が続いており、地域活力の低下が懸念されているなど、取り巻く環境は依然として厳しい状況にある。
地方創生に向けた取組が各地域において展開される中、その実現にあたっては、それぞれの地域が持つ特色や独自性、優位性を最大限生かせるような地域づくりに取り組むとともに、それと歩調をあわせた社会資本整備を進めることが、早期にストック効果を発揮する上で大変重要であると考えている。

現在、県内の各地域においては、高速道路等の開通を見据えた交流人口拡大や観光振興に対応するため、隣接市町村が連携した観光協議会の発足をはじめ、観光地の再興、中心市街地の活性化など、様々な活動が行われている。
本県には、豊かな自然や歴史文化をはじめ、豊富な農林水産資源、さらには、温暖な気候を生かしたスポーツのキャンプ地など、多くの魅力的な地域資源が存在し、これらを最大限活用した地域経済の再生、活性化をより一層推進し、地方創生に繋げていくためには、行政と住民が同じ夢を描き、しっかりと議論しながら、協働していくことが大切であると考えている。

6.おわりに
社会資本の整備に関わる私たちの使命は、人口減少社会の到来など、様々な課題に向かいながら、将来の世代、これから生まれてくる人たちが、地域で安心して豊かに暮らせるための基盤を整備していくことである。
そのためにも、引き続き、ストック効果を積極的にPRし、整備の重要性や必要性を理解してもらいながら、社会資本整備を計画的に進め、地域の活性化に繋げていきたい。

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