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《 通 り 名 で 道 案 内 》
~福岡市中心市街地におけるきめ細かい道案内~
九州地方整備局 甲斐靖志
1.はじめに

「通り名で道案内」とは・・・・・
我が国の住居表示方法は、道路、鉄道、河川などによって区画された地域に付けられるブロック(街区)を基本とする方法(街区方式)が一般的です。この方法は、住居表示としての大きな役割を果たしていますが、地域に不慣れな来訪者にとって目的地の特定のしやすさという点からは、必ずしも適していないとの声も聞かれます。
一方、欧米の住居表示で一般的に行われている「道路方式」は、通りを基本とし、通りの名称及び沿道施設に付けられた番号により場所を表示する方法で、地域に不慣れな来訪者でも容易に目的地を特定できると考えられます。
このようなことを背景として、通りの名称と概ねの位置を表す番号を使って目的地をうまく特定できるようにしたのが「通り名で道案内」の取組です。

2.「通り名で道案内」のルールとメリット
(1)場所を特定するルール
1)通りに名称をつける
通りの名称は従前から地域に親しまれている通称名を用いることが良いですが、通称名が無い通りに新たに命名する場合は、地域の関係者で十分な合意形成を図る等、住民、行政、場合によっては学識経験者等も含めた協働の取組が重要です。
2)通りの起点から概ねの距離(10m単位)を位置番号とする
道路上には、路上施設の管理番号や住居表示など、様々な数字が表示されています。そこで位置番号に「♯」記号を付し、路上の他の数字との混同を防ぐと共に、来訪者は、どの様な街や観光地においても、「♯」記号の付された番号を探せば、位置を特定することが可能となります。

3)起点を背に右側に奇数、左側に偶数を表示する

このような「通り名で道案内」のルールは国土交通省で従来から取り組んできたものを応用したものです。
国道(国土交通省管理)及び高速道路では、道路利用者の緊急時の連絡や道路管理上必要な情報として路線番号、起点地名、起点地からの距離を100m刻みで道路上に「地点標」として設置しています。

(2)道案内上のメリット
案内する人は、通りの名称と位置番号を使って案内すれば、地域に不慣れな人でも場所の説明や確認がし易く、分かりやすく道案内が出来ます。
また、案内される人は目的地に面する通りまでたどり着いたら、位置番号により現在地から目的地までの距離がおおよそ予測できるし、どちらの方向に向かって位置番号が増加するのか、偶数か奇数かを合わせて見ることで行きたい方向に近づいているかどうかが現地で分かります。

3.「通り名で道案内」の基本3要素

《基本要素1:地点標( 現地表示)》
通りの名称と距離を示す位置番号を表示した「地点標」を、電柱や照明柱等に設置します。
継続的な取組としていく観点から、「地点標」は、各地域の創意・工夫を凝らし、景観への配慮や低コストでシンプルなデザインとすることが考えられます。

《基本要素2:通り名マップ》
「通り名で道案内」を実施する地域では通りの名称と交差点部等の主要な位置番号を表示したマップを作成し道案内に活用します。既存の地図や観光マップを活用することも有用な手段です。

《基本要素3:沿道施設案内》
沿道の施設(店舗、観光資源等)は、自らの施設の案内に通りの名称と位置番号を活用します。

4.福岡市中心部での取組
(1)取組の背景と目的
福岡市の中心市街地には、国内はもとより、韓国や中国をはじめとする海外からの観光客も多く訪れており、都市型の観光スタイルが人気となっています。
また、九州新幹線鹿児島ルートの全線開通(2011年春)とともに、さらなる観光客の増加が見込まれているところです。
一方で、地域に不慣れな観光客等への案内については、来街者が分かりやすく歩くためのツールが不足しているという課題があり、地域からも分かりやすい道案内の仕組みが求められています。
こうしたなか、福岡国道事務所では福岡市と連携しながら、平成21年3月より、福岡市中心部を横断する国体道路(直轄国道202号)の中央児童会館前交差点~赤坂3丁目交差点間、約1.4kmにおいて『通り名で道案内』の取組を開始しました。
以下に、実施内容や今後の展開等を紹介します。

(2)国体道路での取組状況
本取組の実施区間は、市内でも特に観光客による散策が多く、分かりやすい道案内が来訪者をはじめ地元からも求められていたエリアです。
しかし、沿道には多くの商業ビルやマンションの張り付きがみられ、民地側との調整に時間を要すること、電線類が地中化済みであることなどから、福岡国道事務所が管理する照明柱を活用し、取組を開始することにしました。

1)通り名標識標示板の設計及び設置
通り名標識標示板は、下記の配慮事項を踏まえてデザイン案を作成し、地元関係者との協議を重ねて意匠及び設計仕様を決定しました。
製作した通り名標識標示板は、対象区間の主要交差点付近に位置する照明柱を対象に、約60~80m(歩く速度で1分に1箇所目に付く程度)の間隔で30箇所に設置しました。

<配慮事項>
        

  1. 市内他地区(大名地区等)の標示板との整合を図る    
  2. 照明柱のデザイン・塗装色の違いに留意しつつ、景観に配慮し視認性を高める工夫を行う    
  3. 低コストで飽きのこないシンプルなデザインとする    
  4. ユニバーサルデザインへの配慮を行う

2)福岡市を始めとする関係機関との連携
福岡市と連携し、時期を合わせて国体道路と接する大名地区の主要な道路においても本取組を展開することにより、面的案内が可能となるようにしました。(写真- 7、8)

福岡市とは国体道路沿道での標示板設置位置の検討や、広報資料作成などの調整を行いました。また、地域住民の方へ説明会を実施するにあたり、町内区分と校区区分が異なるため、関係機関で調整・連携しながら地元との合意形成を図りました。

3)利用者の意見
設置後の利用者アンケート結果では、「取組を導入した方が良い」という回答が8割以上あり、そのうち、「場所を教える時に便利」、「行きたい場所の目印になる」といった回答が5割を占め、概ね好評です。また、通り名のルールについては「わかりにくい」といった回答が約4割あり、うち6割は「表示番号の意味が分からない」でした。

4)通り名標識標示板の追加設置
地域住民からは、取組の導入に対して、多くの方から好評をいただく一方で、さらに分かりやすくするため、通り名標識標示板の数を増やしてほしいといった意見もあがってきました。
このため、9月より、さらにきめ細かな道案内が可能となるよう、歩道片側で20m間隔ごとの109箇所に通り名標識標示板を追加設置しました。(写真- 9、10)

5.今後の展開

今回の福岡市中心部での取組開始については、テレビニュースや新聞報道等で取り上げられ、マスコミからも注目されています。
今後、この取組が浸透し、街を訪れる方々が使いこなして「まち歩き」を楽しんでいただくためには、さらなるPRが必要不可欠です。
福岡国道事務所では前項で述べた利用者の意見等を踏まえ、今後、以下のような『通り名で道案内』を展開していくことを検討しています。
  1. 2011 年春の九州新幹線鹿児島ルートの全線開通を目標に、国道202 号(国体道路区間)の全区間において、通り名標識標示板を設置すること。。
  2. 『通り名で道案内』の知名度の向上を図るため、次のような取組を行うこと。

        

  1. 『通り名で道案内』のルールに関する広報の実施
    例)ルールを解説する案内板の設置など    
  2. 地域の方々との連携によるPR及びフォローアップの実施
    例)沿道店舗等の店舗案内での名刺やチラシ等への活用促進など    
  3. 今泉地区、天神地区、博多駅周辺地区等福岡市内他地域との連携・調整による面的な展開

これらの取組については、今後とも地元をはじめ福岡市や関係機関と協働で進めていきます。
最後に、本報告にあたりご協力いただいた関係各位に、この場をお借りしてお礼申し上げます。

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