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ダム模型を使った分かりやすい広報活動
九州地方整備局 渡邉正弘
はじめに

耶馬渓ダムは、山国川総合開発の一環として、洪水調節、流水の正常な機能の維持、上水道、工業用水の供給及び発電を目的として、一級河川山国川水系支川山移川に建設された多目的ダムであり昭和60年に完成しました。

1.模型製作の経緯

耶馬渓ダムでは平成19年8月台風5号の出水において洪水調節を行い、ダム下流河川の水位の上昇を抑え、浸水被害を軽減させることができました。しかし、ダム下流河川の一部に堤防未整備区間があり、浸水被害が発生したため下流域住民から「浸水被害はダム操作が原因ではないか」といったダムの操作に対する疑問の声が寄せられました。これまでダムの機能や働きについての広報は、パンフレットやパワーポイントなどを使い、グラフや表を用いて説明を行っていましたが、今までの説明方法では一般の方々にとって分かりづらく、結果として説明不足であったことを感じ、どのように広報を行えば正しく理解して貰えるかを検討しました。その結果、職員の意見から誕生したのがダム模型です。

2.模型の概要

模型は実際に水を使い、実演を行うためダムの効果を目で見て手で触って確認することができ、水の動きを視覚的に捉えられるようになっています。
製作にあたっては、地域へ出向いて説明を行うことを前提に、持ち運びを可能にするため以下のことをポイントに製作しました。
○コンパクト(車に乗り、重量が軽い)
○丈夫   (水漏れがしない)
○シンプル (操作が簡単)
・タンクから水を流し雨を表現
・スポンジを敷き詰め山の保水能力を表現
・本川上流河道からも流出があることを表現
・下流河川に堤防を設け一部堤防未整備区間を表現

3.模型の諸元

・耶馬渓ダム本体の形状を約1/400のスケールで製作。
・縦80cm×横120cm×高さ90cm
・重量15kg(水を除く)

4.模型の操作説明

模型の構造は単純ではあるが、洪水調節の一連の流れである《降雨→流入→ダム貯水位上昇→放流》及び《河川水位上昇→堤防未整備区間での家屋浸水及び浸水軽減》を表現できるようになっています。
○洪水調節を行わない場合(ダム無しを想定)
タンクから水を流し、ダムの底部に開口部を設けているため、ダムに水が貯まらずに下流河川に流すことができ、そのまま流出するため堤防未整備区間から水が溢れ、家屋が浸水する構造となっています。
○洪水調節の効果
タンクより水(上記1と同じ量)を流し、常時満水位の状態から一定量ゲート放流を行います。この時ダム流入量より放流量が少なくなることにより貯水池の水位が上昇し、下流河川は氾濫しない又は軽減することを説明します。
また、耶馬渓ダムは、支川に設けられたダムであるため、本川流域で大きな出水が発生した場合には、ダムで洪水調節を行っても下流で氾濫が生じる恐れがあることを併せて説明を行います。
○異常洪水時操作(ただし書き操作)
ダムにも限界があることを知って貰うため、水が一定の量貯まるとダム上流部に設けられたクレストゲートから放流を開始し、放流量を徐々に増加させ、最終的に流入量と同じ量をダムから放流することを説明します。この場合、ダム下流河川で氾濫が生じるが、ダムでただし書き操作を行うことで、避難する時間を稼ぐことができるなどを説明します。

5.まとめ

模型を使いこれまで下流自治体職員及び地元住民、マスコミや小学生などに説明を行い、次のような意見を頂いた。
・初めて模型を使った説明を受けたが、分かりやすかった。
・子供達にはダムの全体像や治水の役割が分かりやすかったなど。
結果、模型による実演により、ダムの効果を視覚的に捉えることができたため、たれでも分かりやすく、正しい理解が得られるようになりました。
ダムの操作機能に関しては、知られていないことや誤った理解をされていることも多いと思います。しかし、多くの場合、説明をおこなえば理解して頂けると考えています。
今後も引き続き分かりやすいダム機能の説明方法の一つとして、ダム模型を活用し一人でも多くの人にダム機能や働きについて正しく理解して貰えるよう広報を行っていきたいと思います。

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