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甲突川リバーサイドウォーク整備事業
新田福美
丸田満弘

キーワード:甲突川、リバーサイドウォーク、ライトアップ

1.はじめに

甲突川は、鹿児島市の西方に位置する八重山(標高676m)に源を発し、姶良カルデラ等から噴出した火砕流堆積物からなるシラス台地を南下し、鹿児島市内に入り、市街地を貫流して鹿児島湾に注ぐ本川流路延長24.6㎞、流域面積106.2㎞2の二級河川である。

この甲突川においては、平成5年の8.6豪雨災害の際には、浸水家屋11,586戸(床上8,469戸・床下3,117戸)、浸水面積424ha、また甲突川に架かる5石橋のうち新上橋と武之橋が流出するなど甚大な被害が発生した。

被災後、事業費約390億円(激特事業268億円・助成事業66億円・県単激特事業等56億円)により、平成5年から平成11年度まで改修が行われ、現在に至っている。
本稿では、河川改修の終わった甲突川に多くの人が親しむことができるよう、現在、整備を進めている甲突川リバーサイドウォーク整備事業について報告する。

2.事業概要
(1)目的
県民や観光客などの方々が、川に親しみ、憩える場となる水辺空間を創出し、「力みなぎるかごしま」を実現することを目的とする。

(2)全体事業費等
事業着手:平成21年度~
整備内容については、利用者や地域の方々の意見を聴きながら進めることとしているため、全体事業費や具体的整備内容は特に定めていない。

(3)延長
L=4.8km(武之橋~岩崎橋)

(4)ゾーニングと整備方針
【水辺のステージゾーン】(武之橋~高麗橋)
県民が集い憩えるような水辺空間の整備を行う。
【加治屋町歴史散策ゾーン】(高麗橋~平田橋)
歴史を感じ、風情ある河畔となるような水辺空間の整備を行う。
【健康増進ゾーン】(平田橋~鶴尾橋)
河畔の自然を楽しみながら散策・ジョギングができるような水辺空間の整備を行う。
【水辺のふれあいゾーン】(鶴尾橋~岩崎橋)
水生生物の生育環境に配慮した水辺空間の整備を行う。

(5)主な整備内容
①階段工の改築(利用しやすく)
全ゾーンの既設階段については、誰もが利用しやすいように勾配を緩くし、新たに手すりを設置する。
②階段工の新設(利用しやすい階段を)
既設の階段は、数が少ないことから、より水辺空間に親しんでもらうため、利用しやすい階段を必要な間隔で整備する。
③高水敷の平滑化(歩きやすく)
改修の際に整備した低水路護岸の高水敷は、表面の凹凸が大きい溶結凝灰岩を敷き詰めているため、利用者が歩きやすいように表面の平滑化を行う。
④ライトアップ(加治屋町歴史散策ゾーン)
加治屋町歴史散策ゾーンについては、鹿児島中央駅からも近いことから、観光客の方々に甲突川が憩える場となるよう鹿児島市が行う河畔公園とも連携しライトアップの整備を行う。
ライトアップの整備内容は、護岸天端から下方を照らすベースライトを15m毎に設置し、その中間に足下を照らすフットライトを設置する。また、散策路となる高水敷の水際には転落防止を兼ねた誘導灯(埋め込み型ライト)を4m毎に設置する。これらの照明器具は、ランニングコストを考慮し、LEDライトを採用し、誘導灯については、個々が太陽光発電を備えている。

⑤床止工の設置(飛び石を併設)
健康増進ゾーンと水辺のふれあいゾーンの区間(平田橋~岩崎橋)は、改修後、河床が低下傾向を示していることから、本事業で床止工を設置することとしている。この床止工には、利用者の回遊性の確保と水辺に近づくことができるようにするために飛び石を併設する。

3.ライトアップの試験点灯

ライトアップの設計に先立ち、意見の分かれると思われる明るさや設置位置・間隔、電球色などについて、完成後どのような雰囲気になるのかを確認するために、現地で試験点灯を行った。
試験点灯は、県民の方々等の意見を多数聴くため、甲突川の河川敷で毎年行われる伝統行事「曽我どんの傘焼き」(写真-4参照)の前夜祭等に日をあわせて実施した。

試験点灯では、護岸に単管パイプを仮組みし、照明器具の設置位置や間隔を確認し、カラーのビニールフィルムを被覆することで、赤や青などの色の確認も行った(写真-5参照)。
また、高水敷にさつま町の「奥薩摩のほたるを守る会」から借りた竹灯籠にろうそくや照明を入れたものを約90個準備した(写真-6参照)。

さらに、パソコン用のプロジェクターを使って護岸に甲突川の昔の風景(石橋など)を映し出すことも試みた(写真-7参照)。

試験点灯当日は、一般の見物客を対象にアンケートを実施したが、「とてもきれい」、「ぜひ整備して欲しい」、「観光に役立つと思う」等の意見を多数いただいた。
これらのアンケート調査結果も踏まえ、試験点灯の結果として、複数の色を使った照明を日常的に照らすことは、川面の雰囲気に合わない。また白色よりは暖色系(電球色)の方がより暖かみがあり雰囲気が良いということで、本施工は、暖色系の一色で通常照らすこととした。しかし、橋梁については、赤、青、緑など照明の色が時々刻々変化するLEDを設置することで視覚的に楽しめるよう配慮した(写真-8~9参照)。

4.現在の整備状況

本事業は平成21年度から着手しているが、これまでは、平成23年3月に全線開業した九州新幹線の終着駅である鹿児島中央駅に最も近い加治屋町歴史散策ゾーンの整備を重点的に進めてきた。
このゾーンについては、鹿児島市街地の中心部であることから、本事業のメイン箇所とするためにライトアップを中心に、2基の階段、1基のスロープの新設、既設階段の改造、散策路等の整備を行った(写真-10~12参照)。
なお、このゾーンの点灯セレモニーを九州新幹線全線開業記念イベントの一環として全線開業日の3月12日に盛大に行うこととしていたが、前日の3月11日に「東北地方太平洋沖大地震」が発生したことから、演奏や合唱等のステージはすべて中止し、規模を縮小して点灯式のみを実施した。
加治屋町歴史散策ゾーン完成後の平成23年度以降は、残りの3ゾーンの整備を順次進めていくこととしている。

5.おわりに

本事業は、河川改修が終わった甲突川の河川空間を利用して、広く県民や観光客の方々が憩える施設の整備を進め、鹿児島の観光スポットの1つになることを目指しているものである。
今回紹介した事例は、従来の河川事業とは少し路線が異なるものであるが、このような計画にチャレンジできることは土木技術者として大変有意義なものであり、今後、同様な事業を計画している皆様に少しでも参考になれば幸いである。

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