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新たなコンクリート品質管理手法の提案
一全数検査方式コンクリートRI水分計による単位水量管理一

日本道路公団 九州支社福岡技術事務所
 技術調査課長
下 登 新 一

日本道路公団 九州支社建設部
 建設第一課
榎 本 敬 二

1 はじめに
耐久性のあるコンクリート構造物を築造するためには,品質の良いコンクリートの使用とコンクリートの性質や構造物の特性に合った施工法の採用が不可欠である。すなわち品質の良いコンクリートの条件は,所定のワーカビリティーと強度・耐久性を備えていることが必要である。
JHのこれまでのコンクリートの受入れ検査では,所定のワーカビリティーは粗骨材の最大寸法およびスランプ試験等で,強度は材齢28日の圧縮強度試験で検査を行ってきた。
しかし,この管理では打設している配管先端部の生コンを検査していないこと,および全量をチェックしていない等の問題点もあり,既設構造物の一部には,コンクリートの単位水量に起因すると考えられる早期中性化(密実性に欠け中性化速度が速まる)による鉄筋腐食,強度不足など,劣化・損傷が確認されている。
このような現状を踏まえて,JH日本道路公団九州支社において,全数検査方式コンクリートRI水分計(以下「RI水分計」という。)を活用した単位水量管理手法の導入(試行)に取り組んできたので紹介するものである。

2 RI水分計の概要
RI水分計は,ラジオアイソトープを利用した技術で,図ー1に示すように水分計と密度計からなる。
水分計及び密度計の測定原理は,放射線源に速中性子線源である252Cf(カリフォルニウム252)とγ線源である60Co(コバルト60)を用いたもので,コンクリート中を透過してくる速中性子線及びγ線の強さ(数)を計測することにより,間接的にコンクリート中の水分量と密度を測定することができる。

3 RI水分計の特徴
RI水分計の特徴および導入効果は次のとおりである。
① 水分量測定装置を圧送配管に容易にセットでき,生コンクリート全ての単位水量を連続して,直接的に監視できる。
② 基準生コン車を設定し,他の生コン車との比較(変動管理)により,生コン車1台毎の品質の安定性を評価できる。
③ データを全数常時確認し,異常値に対し即座に対処可能なことから,施工業者の生コン取扱い意識の向上と生コン製造者の骨材・水量管理の強化が図られる。

4 現場計測
現場計測は図ー2の手順で行う。
① 水分計と密度計を50cm以上離して,配管を挟み込むように,上下から設置する。
② 管厚による影響を補正するため予め空の配管を10分間程度測定する。
③ 基準となる生コン車1台を計測し,a値(単位水量を算出するための補正係数)を設定する。
④ 以後,全数連続計測を行い,パソコンに表示される生コン車1台毎の単位水量を確認する(③で計測した基準値との比較)。
現場計測状況を写真ー1に示す。なお,測定したデータは,結果報告書(日報)として変動管理図を出力し,監督員に報告する。

5 計器誤差および測定精度
RI水分計の計器誤差は理論的に計算でき,線源がフレッシュな状態で,単位水量換算にして
約32/√T kg/m3(T=測定時間(秒))
の標準偏差がある。従って,生コン車1台当り約8分の打設とすると,単位水量で約1.5kg/m3の誤差が生じるものである。
測定の精度は,これまでの各種検証試験により,単位水量の偏差で0~5kg/m3,加水に対する追従性も評価できることを確認した。

6 今後の品質管理
平成13年度に単位水量管理工事を試行的に実施した。対象となった8工事では,施工者および生コン製造者の意識の向上が伺え,合理的かつ効率的な品質管理ができた。
今後の単位水量検査は,RI水分計と従来から確認している印字記録とのセットによる「単位水量変動管理」が実用的であると判断している。
なお,管理基準としては,1日の品質状況を判断する日平均値と,1台毎の品質を管理するためにJHの管理図法を準用して,内側境界と外側境界を設定することを検討している。

7 おわりに
「コンクリート標準示方書(2002年制定)」に規定しているフレッシュコンクリートの単位水量試験方法は,これまで各種試験方法が開発されているが,実用可能な適切な手法が無いのが現状である。その中でこのRI水分計は,コンクリートの単位水量を概ね評価しており,受入れ検査(配合検査)の一手法として有効であると言える。
今後,RI水分計を使用する「新たなコンクリー卜品質管理要領(基準)」を確立し,本管理手法が本格導入されれば,なお一層の品質・耐久性の向上に繋がるものと期待する。

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