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宮交ボタニックガーデン青島(県立青島亜熱帯植物園)
のリニューアルオープンについて
坂本鋼治

キーワード:宮交ボタニックガーデン※1青島、シンガポール植物園、リニューアル

1.はじめに
県立青島亜熱帯植物園は、宮崎市の青島に位置し、年間約90 万人の観光客が訪れる、宮崎県内でも有数の観光地である青島神社の参道に面しております。
昭和40 年に、日南海岸国定公園における青島の特別天然記念物ビロウの群落や亜熱帯植物の保護対策と学術研究、自然科学の教育の場として設置され、同年10 月には、「シンガポール植物園(平成27 年に世界遺産登録)」と姉妹植物園の証を交換し、技術者の派遣や植物の交換などの交流を深めてきました。

2.リニューアルにむけた取り組み
県立青島亜熱帯植物園は、施設の老朽化や樹木が鬱蒼と茂る等、植物園としての魅力の低下や利用者の減少といった課題を抱えていました。
このため、平成26 年に施設のリニューアルに着手することとし、植物等各分野の専門家等で構成する「県立青島亜熱帯植物園整備検討委員会」を設置し、『南国情緒あふれる 青島の花やみどりを楽しめる 体験型の植物園』として整備プランをとりまとめ、平成28 年3 月26 日には、シンガポール植物園園長もお招きし、リニューアルオープン式典を実施しました。
また、今回のリニューアルに合わせて、施設の愛称をネーミングライツにより公募し、『宮交ボタニックガーデン青島』として平成28 年4 月1日から愛称使用を始めるとともに、これまでは有料であった大温室を無料とし、今まで以上に親しみやすい施設に生まれ変わりました。

3.リニューアル後の施設概要
所在地 :宮崎県宮崎市青島2 丁目12 - 1
主な施設:大温室(鉄骨造)延床面積779.97m2
      管理棟(木造) 延床面積216.00m2
      学習棟(木造) 延床面積216.00m2
開園時間:外 苑 8:30 ~ 17:00(年中無休)
      大温室 9:00 ~ 17:00(毎週火曜日(祝日を除く)は休館)

大温室は鉄骨造の地上2 階となっており、四方のガラス面にスロープを周回させる構造となっております。
管理棟及び学習棟は、木造の地上1 階となっており、植物園全体が見渡せる場所に配置し、青島地区などの情報を発信する観光案内ブースのほか、植物等の学習を行うための学習室やトイレを備え、利用者の憩いの場を創出するとともに、建物内部の木構造梁や天井・壁には宮崎県産のスギ材をふんだんに使用し、県産木材の活用をアピールしております。
また、建物の外観は、景観アドバイザーのアドバイスを基に景観に配慮した色彩としているほか、スギ無垢材のウッドデッキや自然石張りの通路を設けるなど、南国宮崎らしさを感じられる魅力づくりに配慮しております。

4.宮交ボタニックガーデン青島の特色
(1)シンガポール植物園とのつながり
シンガポールとの永年の交流をアピールするため、シンガポール政府観光局から許可をいただきマーライオン像を制作し、シンガポールにある像と同じで縁起の良い方向とされる東88 度の方向を向いて設置しております。
また、宮崎県県土整備部長が姉妹園締結50 周年を記念してシンガポール植物園を訪問した際に寄贈を受けた、シンガポール国花「バンダ・ミス・ジョアキム」をはじめとした、シンガポールにゆかりのある花々をマーライオン像のまわりに展示するとともに、これまでのシンガポールとの交流の歴史を示したプレートを設置した「シンガポールコーナー」を大温室内に設けております。
さらに、メインエントランスに設置した正門はシンガポール植物園の正門を模した造りとなっております。

(2)来園者を楽しませる花々の展示
1)ブーゲンビリア
ブーゲンビリアは南国イメージを代表する花で、赤やピンクの鮮やかな花色が魅力です。昭和46 年以降、シンガポール植物園からいただいた挿枝をもとに育てた8 品種を中心に16 品種のブーゲンビリアを、アンブレラ状やアーチ状等、仕立て方を工夫して大温室内に展示しております。

2)シンガポール植物園から贈られたラン
昭和40 年にシンガポール植物園と姉妹植物園の締結をして以来、平成19 年に天皇皇后両陛下のお名前がつけられた2 種類のラン「レナンタンダ アキヒト」と「デンドロビューム ミチコ」、平成27 年に寄贈をうけたシンガポールの国花「バンダ・ミス・ジョアキム」、これらを大温室内に
展示しております。

3)世界三大花木
世界三大花木である、「ジャカランダ」「カエンボク」「ホウオウボク」すべてを園内で観賞することができます。「カエンボク」「ホウオウボク」は大温室内で、「ジャカランダ」は外苑で観賞することができます。

(3)植物観賞を楽しむための施設計画
大温室内の植物について、多様な視点場から植物の観賞ができるようペデストリアンデッキを設置して、外部ガラスに沿って緩やかなスロープを上りながら、四季折々の植物を俯瞰でき、変化に富んだ視点場から楽しめる施設としております。

5.リニューアルによる効果
(1)来園者の増
リニューアル前の来園者は、年間、外苑で約9万8 千人、大温室で約1 万8 千人でありましたが、リニューアル後の来園者は、9 月末までの半年で、外苑が約21 万8 千人、大温室で約8 万1 千人となっており、来園者が大幅に増加しています。

(2)青島地域の活性化
植物園に隣接する民間施設において、リニューアルを契機に施設の建替が計画され、植物園と一体的な空間としたオープンカフェが計画される等、地域の新たな魅力の創出に貢献しています。
また、近接する青島海水浴場内に設置された海の家「青島ビーチパーク」と一体的な利用につながるよう、夏の約2 ヶ月間には植物園内の夜間ライトアップに取組み、青島地域の観光地としての魅力向上に取組んだところです。
さらには、老朽化で営業をとめたホテル等の跡地利用について、新たな施設整備の計画が発表される等、植物園のリニューアルを一つの契機に青島地域の活性化に繋がる動きが見られるようになりました。

6.今後の取組
(1)新たな人の流れの創出
植物園のリニューアルを契機に、周辺にある民間施設の開発が次々と計画され、さらなる青島地域における観光客の増が期待されます。
このような中、道路に面し、一角にバス停が設置されている西口のある植物園西面(写真- 13)はバックヤード機能を担い鬱蒼としており、車やバス利用者から「植物園がどこにあるか分からない」との声が寄せられております。
このため、西面の再整備を行う事で、植物園の認知度を高めるとともに、培養温室等の施設の再配置や更新を行い、これまでのバックヤードとしての役割に加え、サブエントランスとしての機能を付加していきます。
さらに、青島参道と植物園内を結ぶ新たな通路を整備することで、周辺施設から閉ざされた植物園から、開かれた植物園へと生まれ変わるよう、取組んでいきます。

(2)海外観光客への対応
植物園がリニューアルしたことで、多くの観光客が訪れるようになり、その中には大型クルーズ船の寄港による海外からの観光客も数多く見られるようになっております。
今後は、園内の看板やパンフレットについて多言語化をはかり、「おもてなし環境」を今まで以上に向上させます。

(3)新たな魅力の創出
これまで昼間のみの開園でありましたが、昨年の7 月~ 9 月の約2 ヶ月の期間、園内の夜間ライトアップを試行したところ、約1 万人の来園があり、「ライトアップがきっかけで初めて植物園に来た」という声も多く聞かれたところであります。
このことから夜間も営業できるよう、フットライトや照明灯の整備を行い、昼間の植物園とは違った魅力の創出により、来園者の増に取組んでいきます。

7.おわりに
開園から50 周年を機会に園内施設のリニューアルを行ったことで、多くの来園者が訪れる魅力ある植物園に生まれ変わったところでありますが、周辺の民間施設等との連携を図った取組等により、青島地域の更なる魅力向上に貢献していきたいと考えております。
最後に、今回の整備にあたり技術的指導をいただきました「県立青島亜熱帯植物園整備検討委員会」の委員の方々はもとより、本事業の推進にご協力いただいた地域住民の皆様方、設計・施工等に携われた関係各位に厚く御礼申し上げるとともに、さらなる取組に向け今後一層のご支援・ご協力をお願い申し上げて、事業の紹介とさせていただきます。

※1 ボタニックガーデン=植物園

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