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御笠川洪水予報について

福岡県 土木部 河川課
 企画調査係長
鴨 打  章

1.はじめに
御笠川は,その源を福岡県太宰府市の宝満山に発し,牛頸川,諸岡川等の支川を合わせ,福岡の都市部を貫流し博多湾に注ぐ,幹川流路延長24㎞,流域面積94㎢の二級河川です。この御笠川において,近年,平成11年6月と平成15年7月の2度にわたり,その流域に位置する博多駅周辺が浸水する等甚大な災害が発生しました。こうした状況を受け,福岡県では平成19年度完成を目指して,河川激甚災害対策特別緊急事業による河道掘削,護岸整備,橋梁改築等のハード対策を進めております。さらに,ソフト対策として御笠川を水防法に基づき平成17年3月30日に福岡管区気象台と共同で洪水予報河川に指定し,同日より御笠川の洪水予報を開始しました。

2.洪水予報の概要
洪水予報とは,大雨が降り洪水が発生するおそれがある場合に,福岡管区気象台が降雨量を,福岡県が河川水位をそれぞれ予測し,両者が共同で洪水情報を提供することです。この情報は,関係行政機関等に伝達するとともに,報道機関等の協力を得て広く一般の方へ伝えるものです。御笠川の洪水予報の概要を表ー1に,平面図を図ー1に,伝達経路を図ー2に示します。

3.洪水予報の効果
情報は,関係行政機関や報道機関により,水防団や地下街管理者及び地域住民に伝達されます。従来は,実績水位で開始していた水防活動が,予測水位をもとに事前に活動が可能となり,迅速な水防活動が可能となります。また,同時に河川水位情報が予測の段階において地域住民等に伝達されることにより,早めの自衛行動がうながされることとなります。洪水予報の効果のイメージを図-3に示します。

4.今年度の状況
今年度につきましては,台風14号や7月の梅雨前線豪雨により各地で災害が発生しました。九州において,特に宮崎県では,連続雨量が1000mmを超えた降雨を記録しました。また,福岡県の南部を束西に流れる矢部川の上流域では,梅雨前線により局地的な豪雨に見舞われ,公共土木災害が多く発生しました。幸い,福岡都市圏周辺は大きな降雨がなかったため,洪水予報のための待機は数回あったものの,洪水予報の発表までには至りませんでした。

5.現状と課題
前述しましたように,御笠川は流域が94㎢程度の中小河川でありますが,その流域のほとんどが都市化されている状況です。したがって,流域の流出率は非常に高くなっており,上流で降った雨が一気に川へと流入し流下するため,洪水到達時間は非常に短く,過去の水害から判断して,2時間程度と考えられます。
このような河川で洪水予報を実施するためには,降雨後から予測するのではなく,降雨前から予測する必要があります。そのため,降雨予測と流出解析から導かれる水位予測の精度向上が不可欠であります。また,水位予測から発令までの時間の短縮を図るため,日頃からの演習等による職員のスキルアップが必要となります。

6.おわりに
近年において,地球温暖化が原因とも言われている局地的集中豪雨が各地で頻繁に発生する傾向があります。現在進めている河川改修工事等のハード対策は,限られた予算の中で実施しているため,その進捗には限界があります。したがって,水防活動や避難を迅速に行うための手段として,少ない予算で効果が期待できるソフト対策を並行して進めることが必要であると考えます。福岡県におきましては,御笠川と並ぶ中小河川に関し,流出解析や降雨と水位の関係を検証するための高水流量観測等を実施し,洪水予報に関する解析を進めております。今後早急に第2,第3の洪水予報河川を指定し,ソフト対策を拡充してゆきたいと考えております。

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