建設副産物の再利用および適正処理について
九州地方建設局企画部技術管理課
道路建設業協会九州支部
道路建設業協会九州支部
資源の有効利用,廃棄物の発生の抑制および環境の保全に資するため「再生資源の利用の促進に関する法律」(以下,リサイクル法という。)が平成3年10月25日に施行されました。
建設副産物は,ほとんどが安全なものであり,その多くは建設資材等として再利用可能なものです。このため,資源の有効利用を図り,処分量を減量化し,不法投棄等の不適正処理を防止するためには,建設副産物のリサイクルを適切に進めることが必要であります。
また,我が国の経済発展に伴い,近年,廃棄物が増大する中で,最終処分場などの処理施設の確保が困難となり,不法投棄をはじめとする不適正処理が増加する等,廃棄物問題は深刻な社会問題となっています。このため,こうした,廃棄物処理対策が直面する諸問題に対応し,豊かな国民生活を実現するための基礎的な条件として,廃棄物の適正処理を図るため「廃棄物の処理および清掃に関する法律」(以下,廃棄物処理法または廃掃法という。)が改正され,平成4年7月4日に施行されました。
ここでは,リサイクル法および廃棄物処理法に基づく各種の施策が適正かつ円滑に運用されるよう,Q&A形式により,その具体的な運用事例を示したものであるが,実務においてこれによりがたい場合は,関連機関と調整を図り,適切に処理されるよう願うものであります。
本稿は,道路建設業協会九州支部が質問をし,九州地方建設局企画部技術管理課が回答欄を担当して,まとめたものである。
Q-1 リサイクル法で,建設業者の立場と,実施しなればならない事項について,教えて下さい。
A-1 建設業者は,工事の施工にあたり,指定副産物を適正に処理するとともに,再生資材を利用するよう努めなければなりません。
利用を促進するために,元請け業者は「再生資源利用計画」や「再生資源利用促進計画」を作成するほか,社内において技術開発や組織体制を整備し,情報提供を行う必要があります。
請負工事では,全ての建設業者が「事業者」となり,指導,勧告等の対象となるので注意しなければなりません(リサイクル法第12条,第20条)。
指定副産物:建設発生土,コンクリート塊,アスファルト・コンクリート塊,建設発生木材
Q-2 発注者の責務と,発注に際しての注意すべき事項は,どんなことでしょうか。
A-2 工事を発注するにあたって,発注者は,設計図書および積算で
① 再生資材を使用するよう図面等に指定する。
② 建設副産物を再資源化施設へ搬入するよう施工条件を明示する。
③ 建設副産物の発生の抑制に努める。
ことが原則で,不法投棄が行われないよう工事の監督にも留意する必要があります。
特に,積算で計上する運搬距離が短いとか,処分先を明示しないで業者まかせとしたために,過去において社会問題となった事例が多いので,発注者が施工条件を明示するなどの適切な対応が求められます。
(再生資源の利用の促進に関する基本方針)
(再生資源の利用の促進に関する基本方針)
Q-3 工事を発注する場合,設計図書に,どのように条件明示が行われますか。また,積算はどのように行われますか。
A-3 条件明示について
建設副産物が発生する場合,発注者は処理方針を確定し,請負業者に適正な処理を行わせるために,施工条件を明示することが必要です。
[特記仕様書の記載例として]
① 工事現場内で再利用する場合
第○条 既設構造物の撤去に伴い発生するコンクリート塊,アスファルト塊は,No.○○付近の監督職員の指示する箇所に盛土するものとする。その場合の大きさは○○cm程度以下とし,十分締め固めを行うものとする。なお,盛土後は,○○cm程度以上覆土すること。
(注)廃掃法による最終処分場での覆土は,50cm以上。
② 工事現場外へ搬出する場合
第○条 指定副産物の搬出
建設工事の施工により発生する指定副産物(Co塊,As塊の名称)は,下記の場所へ搬出するものとする。
・搬出場所:○○県○○市○○町○○番地 ○○再資源化施設
・受入時間帯:○時○○分~○時○○分
・受入大きさ:○○cm~○○cm
・仮置き等:必要な場合は,その場所を明示し,積み替え費用を計上する。
・搬出調書等:提出を義務付ける。
(注)搬出場所は,再資源化施設または最終処分場とするものである。
③ 処理施設等が確定できない場合
できるだけ,搬出場所を明示するものとするが,施工地域が点在するような維持工事等で,処分先を特定できない場合は,その旨を現場説明事項書等に明記し,設計変更で対処する。
なお,公共工事において,これらの条件が明示されてない場合は,現場説明時に契約条件を質問書等で明らかにするよう,建設業者等も努力をして下さい。
A-3 積算について
建設副産物(残土含む。)に関しては,指定処分を原則としているもので,積算は運搬費用および処理費用が実態に即して計上されています。したがって,再資源化施設および最終処分場が遠距離の場合であっても,適切に費用は計上するようになっています。
なお,建設副産物の処理にあたって施工条件が明示されていない場合は,現場説明時等に契約条件を質問書等で明らかにするなど,受注者の立場としても適切な処理に努めて下さい。
Q-4 再生資源利用促進計画の作成にあたって,搬出数量が対象数量(コンクリート塊,アスファルト・コンクリート塊,建設発生木材の場合,合計の重量が200t)以下の場合でも,必要でしょうか。
A-4 指定副産物を工事現場から一定規模以上搬出する場合は,元請け業者が施工計画段階で再生資源利用促進計画を作成し,工事完了後には実施結果も記録することになっています。作成にあたっては,「建設業とリサイクル(改訂版)」(平成4年9月発行,大成出版社)の57頁の例を参照してください。
公共工事では,再生資源利用促進計画を施工計画書に含めて提出させていますが,民間工事でも該当する工事については,作成しなければなりません。
なお,いずれの場合も,再生資源利用促進計画は,工事完了後1年間,施工業者が保存することが義務付けられています。
(「建設業に属する事業を行う者の指定副産物に係る再生資源の利用の促進に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」平成3年10月25日建設省)
(「建設業に属する事業を行う者の指定副産物に係る再生資源の利用の促進に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」平成3年10月25日建設省)
以上のとおり,再生資源利用促進計画の作成にあたっては,一定規模以上の指定副産物を搬出する場合に義務付けされていますが,省令に規定されている搬出量以下の場合にも,再生資源利用促進計画を作成することは,施工計画を立案する段階から再生資源の利用の促進を念頭におくことになり,指定副産物に係る再生資源の利用の促進を実効あるものとすることができるため,自主的な計画の作成が望ましいということです。
なお,建設資材を搬入する建設工事を施工する場合に,同様な省令で義務付けされている「再生資源利用計画」の場合も,同じです。
Q-5 工事現場から再生プラントが遠距離等で,再生利用ができない場合がありますが,具体的な方針等がありましたら教えて下さい。
A-5 建設現場では,質問内容のような場合および最終処分場が現場の近くに見当たらず,遠距離にしかないという問題が多く発生すると考えられますが,建設省の直轄工事においては,建設副産物の再生利用を促進するために,指定副産物を工事現場から搬出する場合および再生資材等を工事現場で利用する場合には,一定距離の範囲であれば,「経済性にかかわらず実施する。」という運用を決めて実施しております。その詳細な内容は,「建設業とリサイクル(改訂版)」(平成4年9月発行,大成出版社)の113頁を参照してください。
なお,建設省以外の公団等を含む都道府県等の地方自治体においても,建設省の運用と同様な施策を講じているところが増えてきております。
上記運用の範囲以上の距離の場合には,最終処分場等で処理することになります。しかし,これまでは,処分を含めて運搬費用が高くなる理由で,不法投棄される事例が多々あり,社会問題となっておりますので,廃棄物処理法による許可を得た処理場に運搬するように,発注者および受注者が注意を払わなければなりません。このため,次の点について発注者および受注者が,工事施工前に確認する必要があります。
① 工事現場と再資源化施設や処分場の位置関係を把握する。
② 工事契約時に再資源化施設や処分場への搬出先を明確にする。(条件明示)
③ 維持工事等で毎年発生する場合は,地域ごとに最終処分場を確保する。
なお,再資源化施設や最終処分場があまりにも遠く,運搬費用が増大する場合は,発注者側または受注者側でそれぞれ最終処分場を確保するか,工事現場内へ移動式の処理機械を導入する等の工夫が必要となります。
Q-6 再生資材を使用する場合の技術基準と留意点を教えてください。
A-6 再生資源を使用する場合の使用基準として,建設省九州地方建設局では次のように運用を定めて,再生資源利用の促進を図っていますので,参考として下さい。
建設省九州地方建設局以外の,公団・公社を含む都道府県の各機関でも,それぞれの基準を定めておりますので,各機関の工事を受注された建設業者は,その機関における基準を満足した品質の再生資材等を使用する必要があります。
また,全国的な技術開発として建設省は,建設副産物の発生抑制・再生利用技術の開発を目的として,平成4年度より平成8年度までの5カ年計画で「総合技術開発プロジェクト」として取り組んでいます。
このほど,4分科会の中のコンクリート副産物分科会は,「コンクリート副産物の再利用に関する用途別暫定品質基準(案)」をまとめております。
今回の暫定品質基準(案)は,平成6年度からを目途に仕様書に盛り込んでいくためのたたき台としてまとめたもので,急がれるコンクリート副産物の再生利用を促進させていくうえでの当面のガイドラインとなります。
暫定基準(案)は,コンクリート用再生資材,舗装用の路盤材および裏込め・埋戻し材に関する品質基準(案)からなっています。
基本的には,これまで提案されている既往の品質基準(案)をとりまとめたものであるが,一応暫定的としているものの,品質基準のたたき台が示されたことで,コンクリート副産物の再生利用に関する研究開発と再生材の積極的な利用が広がることが期待されます。
Q-7 建設工事では,排出事業者は元請け業者でしょうか。元請け業者の立場と注意事項を教えて下さい。
A-7 建設工事においては,発注者から直接工事を請け負う元請け業者が排出事業者となります。
排出事業者は,建設廃棄物の運搬や処分を無許可業者に委託したり,廃棄物の不法投棄を行うと厳しく処罰されますので注意して下さい。
運搬および処分を下請け業者に行わせる場合は,委託契約書を取り交わし,①産業廃棄物の種類およびその数量,②運搬の最終目的地,③処分または再生の場所の所在地,処分・再生の方法等を明記することにより,処理責任が下請け業者に移行されます。
このため,元請け業者は,契約内容(条件明示)や,近隣の処分場を把握するのはもちろんですが,下請け業者の指導・監督の義務もありますので,注意を要します(廃掃法第3条,第12条)。
Q-8 建設廃棄物の処理について,下請け業者はどのような点に注意したらよろしいのでしょうか。
A-8 建設工事の下請けをする場合は,次の点に留意して施工を行って下さい。
① 下請け業者だけの判断で処理しないで,必ず元請け業者の指示を受けてから処理する。
② 工事に着手する前に,処理方法を元請け業者と協議する。
③ 下請け業者が自分で処理するときは,処理業者としての許可を取得していなければならい。
④ 下請け業者が自分で処理しないときは,元請け業者の指定した処理業者に廃棄物の処理を依頼する。
⑤ 元請け業者に処理結果の報告をする。
(「建設廃棄物処理ガイドライン」より)
(「建設廃棄物処理ガイドライン」より)
Q-9 工事現場で発生した建設廃材を,元請け業者が運搬する場合と,協力会社や下請け業者に行わせる場合がありますが,それぞれの扱いについて教えて下さい。
A-9 建設廃棄物の運搬にあたり,元請け業者は諸法規および「建設副産物適正処理推進要綱」(平成5年1月12日,建設省経建発第3号)に基づき,施工するわけですが,その基本は次のとおりです。
(1)取扱いの基本
元請け業者は,排出事業者として廃棄物を適正に処分する責任がありますので,工事現場での指導を徹底する必要があります。
① 施工計画書に建設廃棄物の処理方法を記載する。
② 建設廃棄物の取扱いについて,作業員や関係者を指導する。
③ 運搬・処分を下請けさせる場合は,委託契約書を交わして必要事項を記載すること。
④ 建設廃棄物の処理状況等を監督する。
(2)運搬の基本
汚泥を除く建設廃棄物は,標準仕様のダンプトラックで運搬することができます。
運搬にあたっての基本は,
① 現場内で廃棄物が混合しないようにする。
② 廃棄物が飛散または流出しないようにする。
③ 元請け業者は,マニフェスト(集荷目録)を発行する。さらに,過積載の防止や路面汚損防止にも努めなければならない。
建設汚泥の運搬には,その性状に応じて次の車両を使用します。
(3)運搬・処分の基本
建設廃棄物の収集・運搬または処分を下請け業者に委託する場合は,「産業廃棄物処理業」として県知事等の許可を受けた業者でなければなりません。
したがって,他県,他政令市にまたがるときは,該当する県知事等の許可が必要となります。なお,元請け業者が自ら運搬・処分を行う場合は「産業廃棄物処理業」の許可を受けなくても行うことができます。
建設廃棄物の運搬を自社で行う場合,
下請け業者(協力会社も含む。)が建設廃棄物の収集,運搬または処分を行う場合は,「産業廃棄物処理業」として知事または政令市の市長の許可が必要となります。
さらに,元請け業者は下請け業者と委託契約書を締結し,さらに適正処理のための監督や確認を行う必要があります。
Q-10 建設工事で指定された処分地が最終処分場でない場合,どのように処理したらよろしいのでしょうか。
A-10 設計図書で明示されていても,最終処分場でない場合は不法投棄とみなされて,廃掃法による罰則の対象となりますので,請負業者は注意して下さい。
そういう箇所が条件明示された場合は,その変更が可能であるわけですから,発注者と協議して,適正な処分場へ運搬するように設計変更の対象とすべきですので,発注者へ積極的に働きかけて下さい。