都市計画道路「庄の原佐野線」元町・下郡工区の整備に伴う「宗麟大橋 」等架設工事について
石和徹也
キーワード:庄の原佐野線、宗麟大橋、送出し架設、クレーン・ベント架設
1.はじめに
都市計画道路「庄の原佐野線」は、東九州自動車道や都市内道路と一体的に機能し、地域間の連携と都市活動の活性化を目的とした、大分市内の東西骨格軸となる幹線道路である。本路線の整備により、交通渋滞の緩和や高速道路へのアクセスが強化され、さらには、災害時の緊急輸送道路としての役割が期待される。大分IC から、都市計画道路「下郡中判田線(通称:米良BP)」までの約6.0㎞区間が、地域高規格道路「大分中央幹線道路」として国の指定を受け、国道210 号から国道10 号までは、平成20 年度に供用を開始している。今回紹介する「元町・下郡工区」は、平成20 年度から事業着手しており、今年度中の供用開始に向け取り組んでいるところである。
2.「元町・下郡工区」の事業概要
(事業区間)大分市六坊南町~大分市大字下郡
(事業費)約146 億円
(事業延長)1.2km (道路幅員)31.3m ~ 56.0m
(道路規格)第4 種第1 級
(設計速度)60㎞ /h (車線数)4 車線
(事業期間)平成20 年度~平成29 年度
本工区は、国道10 号及び大分川を跨ぐ橋梁のほか、中世の豊後国を支配した大友氏の菩提寺に関する重要な文化財「旧万寿寺跡」の上空に架かる橋梁がある。今回は、その3 橋梁を中心に紹介する。なお「宗麟大橋」は、大分川河口部では弁天大橋の建設以来、約半世紀ぶりの道路橋新設となる。
3.宗麟大橋
当橋梁は、大分川の河口から約3k600m に位置する橋長349.4m の鋼6 径間連続非合成鈑桁橋である。鋼材には耐候性鋼材を使用しており、上部工は、架設位置での河川断面の形状によって、低水路部では、ベント設備が設置できないため桁の前部に手延機を継ぎ足し、順次後方ヤードで桁を組み立てながら送り出していく「手延式送出工法」、高水敷き部では、「クレーンベント工法」の架設を採用し、非洪水期に実施した。以下、主に手延式送出工法による架設を中心に紹介する。
手延式送出工法による架設は、平成27 年10月から平成28 年3 月に実施した。まず、桁の送り出し架設は、左岸側の高水敷を利用して、約100m の軌条設備を設置した。これは、14 基のベントの上に、軌条桁・軌条レール・運搬台車からなるものである。その後、軌条設備の上に手延べ機・桁を組み立て、送り出し架設は、合計4回実施した。
なお、工程短縮を図るため、架橋の上・下流側に200t 吊クレーン等を配置し、2 班同時施工とした。当橋梁は上部工標準断面が全幅31.3m で、主桁8 本の同時送り出しとなるため、送り出し前に、主桁を全て横桁・対傾構で連結した。加えて、事前に送り出しステップ毎に解析した反力計算をもとに常に荷重管理を行い、ジャッキの盛替え毎にも荷重調整を実施することで、事故防止に努めた。
クレーンベント工法による架設は、平成28 年3 月から平成28 年5 月に実施した。左右岸の高水敷き部にベントを設置し、地上で地組を行ったものを、順次架設を実施した。
床版コンクリートの打設は、平成28 年10月から平成29 年3 月に実施した。標準幅員が31.3m にも及ぶため、打設後のひずみが大きくなるため、打設順序等を検討し、打設時等のひずみが最小限となるように打設計画を立て、1 回当たり約300m3で11 回の打設とした。
なお、大分市街地内での大規模な架設工事であるため、県民からの注目度も高いため、広報活動にも重点を置いており、例えば、県民を対象に、一般公募において、床版工完成時には、手形で桜を描くイベント(応募数約740 件)を実施したり、また、橋梁名(応募数約1,700 件)を決定した。
4.観音殿陸橋 かんのんでんりっきょう
当初、補強土壁等の盛土形状で設計検討していたが、「旧万寿寺跡」の遺構が出土したことから、関係機関との協議を行った結果、遺構保存のため橋梁形式に変更となった。この橋梁は、工場で製作したセグメント桁を現地で連結し、各径間ごとにクレーンによって架設する方式を採用している。架設には、360t 吊クレーンを2 台使用し、平成29 年4 月24 日から5 月22 日まで実施した。当現場は、病院や商業施設が隣接しているため、防音壁を設置することにより、騒音低減(約15db)を図り、同時に目隠し効果になっている。
一方、今年度中の開通に向けて施工業者が輻輳しているため、工事関係者で構成される連絡協議会を毎月実施し、加えてより分かりやすい資料とするために、ドローンによる空撮で見える化を実施している。なお、橋梁名は、この場所より、「蒋( まこも) 山( さん) 観音殿」と書かれた墨書土器(花瓶( けびょう) の下部破片)が出土したことに由来する。
5.万寿橋 まんじゅはし
本橋梁は、国道10 号と立体交差する橋長66.0mの「鋼単純鋼床版箱桁橋」である。まず上部工を3分割して架設するためのベントを2 基設置し、その後、9 分割した鋼桁を工場から運搬し、現場で3 ブロックに地組したうえで、クレーンで架設した。特に、国道10 号を跨るブロックの架設については、交通量(約20,000 日/ 台)が多いことから、平成28 年12 月23 日~ 25 日の夜間(午後9 時~午前6 時)交通規制(国道10 号は、全面通行止め)を行い、細心の注意を払いながら事故等混乱無く完了した。現在、残る工事は、鋼製排水工や壁高欄、橋面舗装となっている。
6.おわりに
これまでも、建設産業の魅力を発信するため、様々な広報活動等を行ってきており、開通に向け、引き続き情報発信に取り組むこととしている。供用開始前には、ウォーキング等のイベントを予定している。
最後に、当該工区は、今年度中の供用開始を目指して、現在(5 月31 日現在)、34 施工者へ発注しており、工程管理や現地立会など、当事務一丸となって取り組んでいる。併せて、事業の推進には、地元住民あるいは施工業者、設計コンサルタントなど多くの関係者の皆様方の協力を得ながら進めているところである。この場を借りて、改めて、心から深く感謝申し上げる。