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県道高鍋高岡線 本庄橋の開通について
~地域に愛される橋を目指して~

宮崎県 高岡土木事務所
工務課 道路担当 主査
亀 岡 知 志

キーワード:景観まちづくりアドバイザー、地元との協働、橋の日

1.はじめに
宮崎県中央部の東諸県ひがしもろかた郡国富町に位置する本庄橋(図- 1)は、昭和33年の架設から60年以上が経過し、老朽化しているうえに、幅員も狭く、近年、交通量が増加し大型車同士の離合ができないなど通行にも支障が生じていたことから、平成22年度から新たな橋の整備を進め、令和2年9月に供用を開始しました。
新橋の開通により、橋の耐震化が図られるなど、緊急輸送道路としての機能が向上するとともに、歩道が両側に設置され、歩車道とも安全・安心で快適な通行が確保されました(図- 2)。
本稿では、供用開始前後に取り組んだ、景観への配慮と地元との協働の取組をご紹介します。

図1 本庄橋位置図(宮崎県東諸県郡国富町)

図2 橋梁の幅員構成

写真1 開通後の本庄橋の様子

【全体事業計画】
・延長 L= 890m 
・幅員 W=車道6.5m(全幅14.5m)
・上部構造
PC4 径間連続箱桁 橋長 L= 224m
・下部構造
壁式橋台(ニューマチックケーソン)N= 2 基
壁式橋脚(ニューマチックケーソン)N= 3 基
・事業期間 平成22年度~令和2年度
・事業費  約42 億円
・計画交通量 12,400 台/日

2.施工時の取り組み
(1)景観との調和
まず、現場の施工で配慮した点は、新たな視点場の創出と景観との調和についてです。
橋の中央部には、新たな視点場として、歩道幅員を広くしたバルコニーを設置し、清流「本庄川」の風景や、冬場になると設置される鮎を捕獲する地域の伝統漁「あば漁」の様子などを間近に見ることが出来るようにしました。
また、橋梁の高欄、照明はもとより、全ての道路付属物について、専門家に意見を求めて、色彩を決定し、景観への配慮を行いました。

写真2 アドバイザーとの現地検討の様子

具体的には、県の景観まちづくりアドバイザー派遣制度を活用し、カラーコーディネーターを現地に派遣してもらい、本庄橋周辺の景観を実際に歩いて見ていただきました。
そして、現地の景観に調和する色として、景観色でもあるグレーベージュ色の提案を受け、橋梁の高欄や照明、ガードレール、転落防止柵等の道路付属物の色に採用しました。

写真3 グレーベージュ色を採用した高欄<

(2)地元住民との協働
次に配慮した点は、県民との協働、公共事業への理解と関心を高める取組についてです。
親柱には、「ヨイマカ」と言われる地元本庄稲荷神社の夏祭りと地域の伝統漁「あば漁」のレリーフを設置しました。

写真4 親柱のレリーフ(ヨイマカ)

これは、地元の町役場に本庄橋を地元のPRに活用できないかと打診したところ、快くデザインに使用する写真を提供してもらいました。
「あば漁」は本庄橋の建設工事に伴いしばらく設置を見合わせていたそうですが、新橋の開通を機に復活し、今後も冬の風物詩になってくれそうです。

写真5 橋のバルコニーから「あば」を望む

写真6 親柱のレリーフ(あば漁)

また、橋名板の文字は、通学路として橋を利用する小、中、高校の児童・生徒に書いてもらいました。
小中学校は地元の教育委員会にお願いをし、高校については、私の高校時代の英語の先生が、たまたま校長先生としていらっしゃったので、久しぶりにお会いしてお願いをし、快く引き受けていただきました。

写真7 橋名板とレリーフ

この時に、橋の名板はどの橋も〇〇川、〇〇橋〇〇はし等の書く文字や位置が決まっているという話をしたところ、普段何気なく見ているが、知らなかったと感心していました。
橋の日などのイベント時にはこのような話もしてみると参加者の記憶に残るのかもしれません。

写真8 橋名板を書いてくれた高校生の1人

開通後に発刊された町の広報誌に橋名板の文字を書いてくれた高校生の記事が掲載されていましたが、「この場所に一生残ると思うとうれしい」、「将来、子供ができたら、連れてきて自慢したい」、「家族が一番喜んでくれた」とのコメントを見ると子供たちに依頼して本当に良かったなと思いました。

3.開通後の取り組み
(1)地元の協力
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、令和2年夏に予定していた宮崎発祥の記念日「橋の日(8月4日)」の関連行事や開通式典は行えませんでした。
しかしながら、地元商工会や建設業協会が橋の開通を祝うとともに、コロナ禍でも地元を盛り上げたいということで、連携して本庄橋周辺で地元住民との協働による活動を行いました。
具体的には、地元の保育園児と高校生が、旧橋への感謝のメッセージを込めた絵や文字を大きな板に描き、それを工事用の仮囲いの一部として使用することにより、公共事業に関する理解と関心を高める取組を行いました。

写真9 保育園児と高校生が書いたメッセージ

写真10 地元保育園児と関係者

また、新しい橋の開通を機に、これまで国富町では行なわれていなかった「橋の日」イベントを令和3年8月4日に本庄橋において初めて開催しました。

写真11 「橋の日」に高欄の清掃活動

写真12 「橋の日」イベント後の集合写真

4.終わりに
最後に、新しい本庄橋の開通に協力、尽力された、地元の方々、設計会社、建設会社、国富町役場の関係者各位に改めて感謝いたします。

写真13 開通直後の本庄橋(令和2年9月末撮影)

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