KAWARU PROJECTについて
~佐賀県河川愛護推進事業~
~佐賀県河川愛護推進事業~
佐賀県 県土整備部
河川砂防課
計画調整担当係長
河川砂防課
計画調整担当係長
宮 原 尊 洋
キーワード:河川愛護、活動支援、森川海はひとつ
1.はじめに
佐賀県では、森川海のつながりやその管理の重要性について県民意識の醸成を図るとともに、森川海の保全活動等の行動促進を図ることで、豊かな森川海の自然環境を未来へ繋げていくために、平成29年度から「森川海人っ(もりかわかいと)プロジェクト」に取り組んでいます。
「KAWARU PROJECT(カワル プロジェクト:佐賀県河川愛護推進事業)」は、この森川海人っプロジェクトの“ 川” における取組の一環として平成31年(令和元年)度から取り組んでいます。
KAWARU PROJECT では、生活に身近な川との関わりを体験する機会の創出等により、森と川と海のつながりを実感し、その大切さを認識してもらうことで、森川海人っプロジェクトで掲げる「森川海はひとつ」という考え方を広く県民に浸透させることを目的としており、①川への関心を高め、森・海とのつながりを実感してもらうための企画・広報、② CSO(市民社会組織:NPO法人、市民活動・ボランティア団体に限らず、自治会、婦人会、老人会、PTA といった組織・団体も含む)等が新たに取り組む川に親しむ活動費用に対する補助(KAWARU チャレンジ事業)、③川に関係するCSO や森・川・海の関係者が集う交流会(KAWARU 交流会)の開催という3 つの取組で構成しています。
そして、3 つの取組の連携、すなわち、①企画・広報で川への関心を高め、② KAWARU チャレンジ事業で川に親しむ機会を創出し、③交流会で個々の活動をネットワークすることによって活動規模の拡大や新たな活動を創出することを狙っています。
今回は、KAWARU チャレンジ事業で支援した活動とKAWARU 交流会について紹介します。
2.KAWARUチャレンジ事業
KAWARU チャレンジ事業は、川に親しむ機会創出を支援するもので、初期費用に対する補助を行っています。補助率は10/10、上限額30万円とし、川への思いはあるが資金の確保が難しい地縁団体や子供クラブなどにも積極的に取り組んでもらえるよう、使いやすさに重点を置いています。
これまで、令和元年度に6 件、令和2年度に6 件、計12 件の活動に対して補助を実施しています。その内容は、地縁団体による環境学習及び川床体験(参加者数約70人)(図- 4、図- 5)、
まちづくり協議会による河川環境学習及び鮎とり体験(参加者数約50人)、子供クラブによる水生生物調査と河川清掃及び救急救命講習(参加者数34人)、ラジオ局による河川愛護啓発を趣旨とした番組制作(番組参加者数約550人)、劇団による河川の歴史を取り入れた演劇の制作(新型コロナ感染拡大防止のため上演延期)、民間団体による歴史的河川工作物(取水堰)に関する調査及び見学会開催(参加者数65人)(図- 6)、民間団体によるSUP(スタンドアップパドル)等体験と水難事故防止学習及び河川清掃(3 団体)(参加者数64人)(図- 7、図- 8、図- 9)、NPO法人による歴史的な河川工事に関する情報発信(参加者数約100人)、まちづくり協議会による親子ふれあい河川清掃と川釣り体験及び外来種除去(参加者数約200人)、3Dドローンを活用した河川の魅力発信(WEB 公開)となっており、私たち行政の担当者では思いつかないような活動内容もあり、多岐にわたっています。
支援団体の多くが、KAWARU チャレンジ事業で実施した事業を継続していきたいという意向であり、末永く続けていただきたいと考えています。
3.KAWARU交流会
KAWARU 交流会は、様々な団体による河川に関係する活動の発表・団体間の交流を通じて、河川における活動の活性化を図ろうというものです。この交流会開催にあたっては、毎年活動発表会を開催している県内の河川関係団体である佐賀水ネットと共催し、より多くの団体から参加していただけるよう工夫しました。
令和元年度の第1 回交流会は、令和2年3月の開催に向け準備をしていましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からやむなく延期としました。その後も、令和2年7月豪雨への対応や新型コロナウイルス第2 波、第3 波の影響もあり、開催が絶望的な時期が続きましたが、会の規模を縮小し、新型コロナウイルス感染防止措置を徹底したうえで令和3年1月30日に交流会を開催しました。
当日は、14 団体が8 分間の持ち時間で活動内容を発表されました。そのうち9 団体がKAWARU チャレンジ事業で補助を受けて実施された活動に関する発表でした。発表では、子ども、若手、中堅、ベテランと幅広い年代の方々が登壇され、取組の目的や内容、成果をPRされました。
総参加団体23 団体・機関、参加者数56人というコンパクトな規模でしたが、参加者の皆さんは真剣に発表に見入ってらっしゃいました。
ある若手から川の安全講習、川下りの活動報告に加え、佐賀県の川の観光資源としてのポテンシャル、課題及び提案が発表されたときに、有力ベテラン参加者が、「今度一緒に何かやりたいなー」とつぶやかれているのを聞いて、横のつながりの萌芽を感じました。本来であれば、各団体の発表をネタに、交流の時間をたっぷりとって大いに盛り上がっていたはずですが、次回以降に持ち越しとさせていただきました。
4.今後の取組について
KAWARU PROJECT がスタートして2年が経過し、12 団体の活動への補助と交流会の開催を行いました。この間、令和元年佐賀豪雨、令和2年7月豪雨という2 度の大きな出水に加え、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の災難がありました。
令和元年佐賀豪雨では、六角川水系の流域において浸水面積約6,900 ヘクタール、浸水家屋2,936 戸となる大規模な浸水被害が発生しました。このことは、私たちに河川が氾濫した時の怖さを実感させ、治水対策の重要性を強く認識させることになり、こういった面で河川への関心を高めることになりました。
しかし、河川は私たちに、このような災いももたらしますが、農業・水道・工業などに使用する水資源、多くの動植物の生息・育成・繁殖環境を保全したり、人間に潤いや安らぎをもたらす貴重な自然空間といった、様々な恵みも与えてくれます。県民の河川に対する関心が高まっている今、河川の恵みについても広く認知していただけるよう、広報などに取り組んでいきたいと考えています。
新型コロナウイルス感染拡大防止に国を挙げて取り組まれている状況下では、ソーシャルディスタンスの確保、三密回避が強く求められます。KAWARU PROJECT は、人が集まる活動を促進する側面もあり、取組自体に理解が得られないのではないかという不安が常にありました。
しかし、河川は屋外(当たり前ですが・・・)であり、ソーシャルディスタンスも確保しやすく、密な状況にもなりにくい環境です。マスク着用などの対策をきちんと行うことで、川に親しむ活動は、コロナ過にあって、数少ない楽しみの一つとなり得ます。これまでの川での活動内容を、新型コロナウイルス対策とあわせて紹介するなどし、川に親しむ活動のすそ野を広げていきたいと考えています。
5.おわりに
KAWARU PROJECT は、まだ始まったばかりですが、河川関係団体の皆様、KAWARU チャレンジ事業・KAWARU 交流会にご参加いただいた皆様のご理解とご支援のおかげで、2 度の出水とコロナ過でも何とか事業を継続することができました。紙面を借りて御礼申し上げます。
今後も、県民の皆様の川に親しむ機会の創出を支援することにより、河川ファン(マニア)を増やし、河川に加え森や海の方々も含めた交流を通じてつながり(ネットワーク)を広く、大きくし、より多くの方に「森川海はひとつ」を実感していただけるようKAWARU PROJECT に取り組んで参りたいと考えています。皆様、応援、よろしくお願いします。