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竜門ダム堤頂部コンクリート打設用
ベルトコンベヤについて

建設省竜門ダム工事事務所
機械課長
木 村 直 紀

建設省竜門ダム工事事務所
機械係長
牧 野 千代春

1 はじめに
竜門ダムは,熊本県北東部の阿蘇北外輪山に源を発し,西へ流下し有明海に注ぐー級河川菊池川の支川迫間川に建設中の多目的ダムである。昭和62年9月に基礎掘削工事に着手し,平成2年4月より本格的にコンクリート打設を開始し,現在(平成4年8月末)まで本体コンクリート量84.4万m3のうち約83.2万m3(約99%)の打設を完了しており堤頂部の一部を残し,ほばその全容を現している。ダム型式は,重力式コンクリートダムとロックフィルダムが,接合壁を介して接する複合ダムである。竜門ダム諸元を表ー1に,ダム縦断図を図ー1に示す。また,現在の打設状況は写真一1のとおりである。

当ダムの打設工法は,連続かつ大量施工を可能としたコンクリートダムの合理化施工法として近年積極的に取り入れられているRCD工法を採用しており,ダム天端までケーブルクレーンを一切設置しない計画である。このため,複雑な構造を持つ堤頂部のコンクリート打設にベルトコンベヤ打設設備が採用され,順調に稼働しているのでその概要を紹介するものである。

2 コンクリート運搬・打設方法
本ダムの打設工法については,ダムサイト右岸の地形および地質的にケーブルクレーン工法に適さないことから,ダム堤頂部打設のための補助手段が必要など検討を要するものの,地形,打設工期,工事費の低減,施工の安全性の面で優れているダンプトラック直送方式を用いたRCD工法を採用し,施工の合理化が図られている。打設は左右両岸に標高差約10mごとにそれぞれ並列する5本,計10本の堤体進入路を造成し,進入路から打設面への乗り込みはリフトアップ桟橋を使用している。
リフトアップ桟橋は45mのトラス橋であり,堤体側に門型支柱を設置し,この支柱にセットした油圧ジャッキによりシフトアップする。シフトアップの範囲は、上下方向に約12%の勾配を限度として打設面の上昇に追随して作動させ,1回で標高12mの範囲で打設できる。なお,リフトアップ桟橋は打設範囲を越えると上部の進入路へ順次振り替えられる。RCD工法の仮設備配置図および打設概念図を図ー2~3に示す。

3 越流部打設方法の決定
本ダムは,全面越流方式のゲートレスタイプであるため,堤頂部中央のBL8~19までの12ブロック間に180mの越流部が存在する。越流部は上下流方向の幅が狭いうえ凹凸も多く,ダンプ直送方式では打設できないため,越流部専用として別途打設設備が必要となる。この打設設備の選定が本ダムでRCD工法による合理化施工を進める上での最終課題であった。
越流部の打設工法の決定については,ポンプ案,ベルトコンベヤ案,スプレッダコンベヤ(走行式)案,簡易ケーブルクレーン案,下流トレッスル案,桟橋案(リフトアップ式)などダム型式およびダムサイトの地形上から考えられる全ての工法についてコンクリート運搬,打設,工期,経済性,安全性,資機材の運搬,その他非越流部との平行作業の可能性等総合的に比較検討した。
その結果,これまでに前例がなく,いくつかの新規開発が必要なものの本ダムヘの適応性が高く,かつ汎用性の高い打設工法としてベルトコンベヤ案を選定した。

4 ベルトコンベヤ打設設備の概要と打設方法
4.1 ベルトコンベヤ打設設備の概要
本ダムで採用したベルトコンベヤ打設設備の一般図を図ー4に示す。また,設備の主要仕様を表ー2に示す。図に示すように本設備は,主ベルトコンベヤ,スクレーパ,分配コンベヤ,これらを支持するスパンフレームおよび雑作業装置によるトータル的なベルトコンベヤシステムとして構成されている。スパンフレームは上中下3層に分かれており,中央部に約180mの主ベルトコンベヤ,上部に雑作業装置,下部に分配コンベヤを配置し,各装置は互いに干渉しない構造としている。従って,コンベアフレーム直下面の打設を可能とすると共にコンクリート打設作業に影響されることなく資材の運搬・据付けなどの雑作業を可能とした。また,本設備は12対の支柱によりコンクリート打設面上方13.1m~6.4m(途中2回のリフトアップを行う)に設置されている。
主ベルトコンベヤは,ベルト表面にコンクリートが付着しにくく,付着物の除去を容易にするようゴム内部に付着防止成分を含ませたベルトを開発・採用した。
主ベルトコンベヤからコンクリートを取り出す設備としては,トリッパ方式とスクレーパ方式があるが経済性,作業性を考慮し,重量が軽く構造も簡単な後者を採用した。分配コンベヤはスクレーパにより取り出されたコンクリートを打設ヤードに分配するもので,主ベルトコンベヤのスパンフレームの下部に懸架する構造とした。分配コンベヤはスクレーパと同行して走行するよう同調機構を持たせると共に,旋回及び伸縮機能を持たせた。
本設備では,コンクリート落下高さが最大9.4mあり,材料分離による品質の低下が懸念された。そこで,材料分離が少ないシュート形状とされる,3枚のゴム板を三角に組んだ構造のトライアングル形を採用した。
雑作業装置は,型枠や鉄筋などの資材を運搬する雑運搬台車と資材の積卸しおよび据付けを行う走行式クレーンからなり,主ベルトコンベヤのスパンフレーム上部に設置したレール上を,それぞれ個別に移動・運転操作が可能である。雑運搬台車には超音波センサーによる衝突防止装置を設けた。
これらの作業は,高所でかつ作業ヤードも狭いところでの危険作業となるため,作業員の安全確保が重要となるので,各設備の移動および運転はコンクリート打設地点および雑作業地点で操作できるよう無線操作により行われ,高所での運転操作および合図人が不用となるなど安全性を高めている。
このようなベルトコンベヤシステムによる越流部の打設方法は,全国でも初めての試みであり,その設計については安全性,経済性を考慮すると共に汎用性を持たせた構造として設計を行っている。

4.2 ベルトコンベヤ打設設備による打設方法
本設備による打設要領図を図ー5に示す。
本設備による打設は次の方法で行われる。バッチャープラントで混練りされたコンクリートはダンプトラックにより右岸進入路から堤体上まで運搬し,移動式中継コンベヤを介して主ベルトコンベヤに供給される。主ベルトコンベヤで運搬されたコンクリートは,打設地点に移動させたスクレーパによりその下部を同行する分配コンベヤに落とし込まれる。分配コンベヤは旋回・伸縮機能を持っており,これらを操作することによって本体を移動させることなく複雑な形状をした堤頂部のコンクリート打設を広範囲に行うものである。
各装置の構造及び作業状況を写真ー2~8に示す。

4.3 シフトアップの方法
EL269.75m以上の堤頂部の打設は,コンクリートの配合区分,運搬方法,施工方法等により①左岸非越流部(BL1~7),②越流部(BL8~19),③右岸非越流部(BL20~28)の3区分に分けて行われる。堤頂部の打設手順を図ー6に示す。
本設備で打設する範囲は,越流部のEL269.75~EL284.5mの約15mであり,安全性,経済性および打設工程を考慮して途中2回のシフトアップを行う。
1回目のシフトアップ高さの決定に当たっては,越流部打設時(EL275.75~EL281.00m)の右岸側非越流部の打ち上がり標高(EL284.00m)および移動式中継コンベヤの供給可能標高差(4.0m)を考慮している。2回目のシフトアップ高さの決定に当たっては,撤去時の作業性を考慮し,分配コンベヤ底部と天端(EL284.50m)の間に50cmの標高差ができるよう配慮している。

シフトアップ作業要領を図ー7に示す。シフトアップは図のように奇数番目のスパンを4台の電動チェーンブロックで順次上昇させることによって,その間の偶数番目のスパンも同時に上昇させるものである。なお,1回の上昇高さはベルトコンベヤ長の余裕から40cmとした。
シフトアップ作業は支柱の継ぎ足し,電動チェーンブロックの設置等準備に7日,シフトアップに1日,電動チェーンブロックの取外し等跡片付けに3日の約10日間で行われた。シフトアップ準備状況およびシフトアップ状況写真を写真一7~8に示す。

4.4 据付工程
本設備の据付期間中においても本体のコンクリート打設を止めないよう考慮している。すなわち,図ー6に示したようにEL269.75mまでの打設完了後,引続き左岸側(BL1~7)のみの打設を行い,これと平行して本設備の据付けを開始した。その後,左岸側がEL283.00mまで打ち上がる約72日の間に据付けを完了した。

5 コンクリート打設と品質
5.1 コンクリート打設
本設備によるコンクリート打設は,平成4年5月末より本格的に開始した。打設開始直後には設備の初期調整不良,操作員の不慣れ等もあり,時間打設量は約20m3/h程度であったが,操作に慣れるにしたがい打設能力も増加し,8月半ばには時間打設量は約40m3/hとなり,初期の目標に達した。8月末の現在での実績では,打設日数36日,コンクリート打設量12,200m3であり,本設備によるコンクリート打設量の約70%を施工済みである。
5.2 コンクリート品質
本設備では,前述のようにコンクリート材料の分離による品質低下を防ぐため,シュート形状にトライアングル形を採用している。シュートより放出されたコンクリートを観察したところによると工材料の分離は認められない。打設時のコンクリート強度試験結果を表ー3に示す。いずれのケースにおいても,設計値(110kg/cm2)を満足する結果であり,良質なコンクリートが得られている。このことによりトライアングル形シュートは,RCD工法など特殊なコンクリート打設のみならず,高落差のある一般コンクリートの打設にも適用可能なことを示唆している。

6 おわりに
越流部打設工法の選定は合理化施工法を採用する場合にあらかじめ十分な検討を必要とするもであり,竜門ダム合理化施工検討分科会を設置し,その場での議論を踏まえて選定したものである。ベルトコンベヤシステムによる越流部のコンクリート打設は全国でも初めての試みであるが,平成4年5月より打設を開始以来,平成4年9月現在順調にコンクリート打設を行っている。コンクリート打設は平成4年11月をもって打設を完了する予定であるが,今後とも工事を進めていくうえで,より安全で効率の良い打設要領の追求に努めて行きたい。
以上,竜門ダム堤頂部打設設備の概要について報告したが,今後計画される越流部の打設設備について参考になれば幸いである。

参考文献
1)丈達俊夫他:竜門ダムの施工計画と設備,ダム技術,増刊NO.1,P216~228,1991

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