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月出山川かんとうがわ橋の設計と施工

日本道路公団福岡建設局
構造技術課長
古 賀 文 俊

日本道路公団福岡建設局
構造技術課
西  浩 嗣

1 はじめに
九州の高速道路は,昭和46年に九州縦貫道の植木~熊本間14kmが開通して以来,これまで579kmが供用中である。現在,縦貫道の最後の区間である人吉~えびの間22kmと九州横断道長崎大分線の日田~湯布院間46km,別府~大分間15kmにおいて工事を進めている。
更に東九州道を主体とした4区間94kmが調査中である。
月出山川橋は,長崎市を起点とし,大分市を終点とする九州横断道長崎大分線の日田IC~天瀬IC間に位置(図ー1)する鋼4径間連続トラス橋である。本報告は,月出山川橋の型式決定から設計・施工までをまとめたものである。

2 地形・地質概要
2-1 地形概要
本橋の架設位置は,標高250m~280m前後の火山台地を月出山川がU字状に浸食した地形を成しており,台地部と平地部間の斜面は急勾配で,溶結凝灰岩が断崖状に露出している。
月出山川河道両側には典型的な沖積段丘面が発達しており,沖積低地下にはレキ質土を主体とする沖積層が厚く堆積している。
2-2 地質概要
本橋位置の地質は,下層から第三紀~第四紀にかけての日田層,更新世の耶馬渓火砕流堆積物,阿蘇火砕流堆積物および月出山川部の堆積物から成る。

3 橋梁型式の検討
3-1 橋台型式
橋台の位置は,U字状に浸食された地形の両肩部にあたり,前面は急峻地形で,背面はなだらかな平地である。
両橋台とも前面の急峻地形と,橋台巻込み盛土を考慮しつつ,出来るだけ前に出すようにした。
また,基礎型式は,地表面より数mで良質な支持層があることから直接基礎とし,高さが12m以上となることから箱式橋台(A1橋台・高さ23m,A2橋台・高さ16m)とした。
3-2 上部工型式
1) スパン割と上部工型式
スパン割の検討で考慮すべきことは,急峻斜面と,中央に位置する月出山川と,その月出山川と両橋台のほぼ中央を横断する2本の市道である。
以上のコントロール条件を満足する3~5径間の4つの型式で比較検討を行った。
 第1案 鋼4径間連続トラス橋
 第2案 鋼5径間連続箱桁橋
 第3案 PC4径間連続ラーメン箱桁橋
 第4案 PC3径間連続ラーメン箱桁橋
その結果,表ー1に示すとおり経済性,構造性,施工性等を総合評価し,第1案の鋼4径間連続トラス橋とした。

2) 主構間隔
本橋は,平面曲線R=1,200mの曲線部にあり,主構間隔と床版張り出し量が床版構造に大きく影響するため,主構間隔を5.6m~7.95mの間で4ケースを比較検討し,最も床版荷重が小さくなる6.6mとした。
3) 主構高
主構高は,前記のスパン割および主構間隔を既定値として主構高を8.0m~9.5mまでの0.5mピッチで検討した。その結果,最少鋼材量となる8.5m(平均スパン比1/9.7)とした。図ー2に全体一般図を示す。

3-3 下部工,基礎工の検討
1) 支承構造の検討
本橋は,橋脚高さが最大53mと高いことから,支承構造が下部工へ及ぼす影響が大きいので支承構造について検討をした。
図ー3に可動支承およびヒンジ支承の場合のP橋脚の地震時曲げモーメントを示す。可動支承に比ベヒンジ支承では,橋脚頭部が水平方向に固定されているため,発生する曲げモーメントが小さく,経済的となった。しかし,反対に固定構造のA2橋台には,可動支承に比べてヒンジ支承の場合は大きな地震時水平力が作用するが,橋台の支持層は良質な溶結凝灰岩であるため,支持力に問題は生じなかった。

2) 橋脚断面形状の検討
橋脚断面形状については,中空断面,中実断面およびI断面について検討した。
表ー2に橋脚頭部水平力および柱付け根の曲げモーメントと,図ー4に温度変化時の橋脚頭部水平力を示す。これによると橋脚頭部の水平力は,温度変化時では橋脚剛性が大きいほど大きくなり,これに比例して柱付け根の曲げモーメントも大きくなる。また,地震時の橋脚頭部水平力は,橋脚自重が大きいほど大きくなり,これに比例して柱付け根の曲げモーメントも大きくなる。これらの検討結果は,表ー3に示すとおりであり,経済性に優れた中空断面を採用することにした。

3) 基礎型式
橋脚基礎工の選定については,土質調査より,支持層が深く,直接基礎では掘削による市道,河川への影響が大きくなることから,場所打ち杭基礎,ケーソン基礎,大口径深礎基礎について比較検討した。その結果,経済性,施工性等から,場所打ち杭(機械掘削)を採用した。

4 設計条件
以上に述べた各種検討の結果より,本橋の設計条件は,表ー4に示すとおりとした。

5 施工概要
5-1 下部工
1) 基礎工
掘削機械は,転石や中間軟岩層の掘進が可能な全旋回オールケーシングマシンを用いて行った。
この工法は,ケーシングを全旋回させ,先端を切削しながら押し込んで行き,ハンマーグラブにより孔内の排土を行い掘進するものである。
2) 橋脚
橋脚形状が,中空橋脚であるため,鉄筋,型枠足場用として,外部はH鋼とアングルにより組み立てられた大型移動式工法を採用し,内部については,途中まで枠組足場を用い,それ以降はブラケットを設置し,枠組足場を設けて施工した(写真ー1参照)。

5-2 上部工
1) 架設工法の検討
架設工法については,現地条件等を考慮し,次の工法について検討した。
 ① トラッククレーンベント工法
 ② ケーブルクレーンベント工法
 ③ トラベラークレーンベント工法
①は,架設高さが地表面から約55mと高いことから大型クレーンが必要となるが,クレーンの搬入路がなく,またクレーンの場内移動のための整地費に多くの費用を要する。
②は,ケーブルクレーンの支柱間隔が約450mと長く,平面曲線R=1,200mの曲線区間であることから大規模な設備となる。
③は,架設能力が他に比べて劣るものの特に問題はない。
以上により架設工法は,トラベラークレーンベント工法とし,荷揚げ設備については,P橋脚に設置したタワークレーンで行い,2台のトラベラーで両方向に架設を進める(図ー5参照)。
トラベラークレーンは,吊り上げ部材重量から吊上荷重8.4tのものを使用し,設置はP橋脚のタワークレーンを用いて行った。また,移動は桁上に設けた軌条設備で行うものである。
ベントは,架設を考慮し,全部で6基必要となった。また,ベント高さも50mと高いことからトラベラークレーンを利用し設置した。

5-3 工事工程
トラベラークレーンベント工法を用いた工事工程を表ー5に示す。

6 おわりに
本橋の上部工工事は,詳細設計および工場製作も順調に進み,現場着手後約8ヶ月が過ぎた。
心配していた台風シーズンも無事乗り越え平成5年8月の完成を目指し,現場は最盛期である。
本報文が山岳橋梁の参考になれば幸いである。

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