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立野ダム工事用道路における超軽量盛土材の設計と施工

建設省大分工事事務所建設専門官
(前 建設省立野ダム工事事務所工務課長)
戸 次 眞 一

1 はじめに
軟弱地盤上の盛土や,急傾斜地盛土,構造物の裏込として,発泡スチロール土木工法(以下,EPS工法という。)が普及しつつある。
EPS工法とは,大型の発泡スチロール(Expanded Poly Styrol)ブロックを,盛土材として積み上げて行くもので,発泡スチロールの持つ,超軽量性(土砂重量の1/100),耐圧縮性,耐水性,EPSを積み上げた場合の自立性などの特徴を,有効に利用する画期的工法である。
EPSを用いた超軽量盛土工法は,ノルウェーで開発され,20年の歴史をもつが,日本ではこの工法を,本格的な土木工法として普及させるため,1986年,発泡スチロール土木工法開発機構を設立,これを契機に,施工実績が増加している。
また,土木材料としてのEPSに関する調査研究も各所で行われている。
立野ダムでは,このEPS工法を,工事用道路の一部で,急な領斜面上の盛土工法として施工した。

2 現地概要
立野ダムは,1級河川白川の洪水対策として計画された,治水専用ダムである。ダム地点は,白川の上流47km附近,立野の火口源と呼ばれるところで,阿蘇外輪山の西の切れ目に当り,更新世末期,カルデラ内の湖水が,断層や浸蝕によって火口瀬ができ,湖水が流出したところとして知られている。

EPS工法の施工箇所は,ダム地点より,本川白川を2km程上がった右岸斜面である(図ー1)。この斜面は,模式地質断面(図ー2)のように,下方から白川河岸の急崖,中腹斜面,上部急崖からなり,斜面中腹を現村道が走っている。工事用道路は,現村道のさらに上部に計画されている。地質は,斜面上部から,烏帽子岳溶岩類(堅硬部)の急崖,その下方斜面は崖錐堆積物(Dt)が覆い,転石の点在が見られるが,崩壊地や,樹木の傾倒は見られず,現状では安定している。
崖錐の土質構成は,礫混り粘性土を主体に,層厚は4~8m,N値は3~15の範囲にある。
その下部は,溶岩の自破砕層を挟んで栃木層(To)がある。Toは,薄岩を含んだシルト質の湖沼堆積物半固結層であるが,地下水の影響をうけ,やや軟質化している。以上のことから,崖錐と栃木層との間で,すべり面となる可能性が高く,安定検討を行った。

当区間は地形的に,一般的な盛土工法は適さないことから,補強土盛土工法(ジオテキスタイル)により,盛土安定検討を行ったところ,施工時(掘削後)の安全率は現状を上回るものの,完成後はFs=1.03~1.13の間にあり,計画のFs=1.2を下回り,なんらかの対策工が必要であるとの結論に達した。

3 工法の選定
工法の選定では,当区間で考えられる,いくつかの工法について比較検討を行ったが,在来工法では,盛土荷重が大きくなり,盛土の安定を図る上で,抑止工の併用や,工法が大規模となり,施工性,経済性で不利と認められる。一番のネックである盛土荷重が軽減できて,安定性も十分確保され,施工性,耐久性,経済性に優れている,EPS工法を採用したものである。

4 EPSの特性
(1)一般的物性
EPSの一般的物性(表ー1)1)に示す。EPSには,二種類の製造法があり,路体盛土等に使用される大型のEPSブロックは,型内発泡法により製造される。この製造法では,50cm×100cm×200cmまでのものが製造できる。
注)(表ー1)中の圧縮強度とは,EPSに荷重を加えていき,EPSのひずみが,5%に達した時点の荷重を,圧縮強度としたもので,許容強度ではないので注意を要す。

(2)各種試験で確められた特性
EPSを土木材料として使用した,実験,研究が,土木研究所土質研究室,大学等で行われている。技術指針2),材料マニュアル3)や,久楽4)らの論文では,次のようにまとめている。
① 繰り返し圧縮特性(浜田らの試験)
5%ひずみ時の,一軸圧縮強度1.1kgf/cm2の40%の載荷重であれば, 100万回の繰り返し載荷でも,ひずみの累積はない。
② 平板載荷試験(久楽らの試験)
地層内に設けた路体模型で,EPS上部に厚さ10cmのRC板のカバーリング層を置き載荷したところ,型内発泡法EPSでは,5%ひずみ時の一軸圧縮強度の10倍,11.1kgf/cm2まで耐えることがわかった。CBRは9%程度となる。
③ 走行試験(久楽らの試験)
試験走路において,総重量26.5tf,40tfのダンプトラックを16,000回走行させても,EPSは,路床,路体として耐えることができ,舗装への影響も小さい。
④ 耐久性
ノルウェーでの過去10数年の実績でも,長年土中に置き,何ら変質は認められない。

5 設 計
工事用道路のEPS工法施工数量は次のとおり。
 全施工延長  L=172.2m
・1期工事(平成2年度)  ℓ=65.1m
・2期工事(平成3年度)  ℓ=81.3m
・3期工事(平成3~4年度)ℓ=25.8m
・EPSの使用量(D20 50 cm×100 cm×200 cm)3,450m3
設計は1期工事(H鋼杭併用)区間と,2期工事以後とで,若干異なるが,本文では平成3年度に施工した2期工事区間について紹介する。
(1)検討断面
検討断面は,施工区間の中で,盛土高が最高となる断面で行う。
構造としては(図ー3)の標準断面図で示すごとく,下部はL型コンクリート擁壁で固定,側面をH鋼とSPCパネル,腹起こしで保護,内部は,下方に水抜きパイプを2m毎に布設,地山は遮水用の不織布を敷き,下方より大型のEPSブロック(50cm×100cm×200cm)を積む,4段目で厚さ15cmのコンクリート床版層を設け,さらにEPSを積む。最上面は,同じく15cmのコンクリートによるカバーリングを行い,その上に,路床砕石,路盤工,舗装工を施工する。
また,地震時安定工法として,EPS上部の路床材,路盤舗装材および地覆荷重の地震時慣生力,SPCからの反力を上部アンカー工に持たせる。下部アンカーは,L型擁壁にかかる地震時水平力の一部を負担させる。

(2)設計項目
設計は,擁壁工の実施設計として取扱う。設計項目は次のとおり。
① 基礎部L型擁壁の設計
② 地震時慣性力をうけるアンカーの設計
③ 支柱,腹起こし,SPCパネルの設計
④ 地覆の設計
なお,L型擁壁の安定計算は,荷重として下記を考慮する。
①常 時
・フーチング上の鉛直荷重
・フーチング上の上載荷重(1tf/m2
・SPCパネルからの反力
・土圧水平力
② 地震時
・フーチング上の鉛直荷重
・SPCパネルからの水平反力
・土圧水平力
・擁壁天端下側の慣性力
(3)土 圧
地山は,掘削時でも安定し,安全度が確保されるので,地山からの土圧は考慮しない。
水平土圧としては,地山に載るすべての盛土材料荷重を,擁壁背面のくさび土塊として水平力を求める。本設計では,地震時の計算において,構造物が決定されているので,地震時の検討結果のみ(図ー4)に示す。荷重集計は(表ー2)となる。

(4)L型擁壁
(表ー2)の結果を使い,安定計算すると,地震時の滑動に対し,Fs=1.01<Fs=1.2となり安全率を下回る。したがって,水平力の一部を下段アンカーに負担させる設計とした(図ー5)。

(5)上段アンカー
上段アンカーは,SPCパネルからの水平反力およびEPS上部の路床材等の地震時慣性力を作用させるものとする。なお,アンカーは3.0m毎に配置する。

(6)アンカー定着部の構造
盛土本体と,アンカーの連結は,ターンバックルを使用した事例もあるが,本設計では(図ー6)のごとく,水平力に対し鉄筋およびコンクリートのせん断により抵抗する結合方法とした。

6 施 工
EPSの施工に特別な技術は要しないが,この工法は,EPSを重ねた場合の自立性を利用し,荷重を吸収分散することにより成立するので,施工面を常に水平に保ち,EPSブロックを密接させることが重要である。施工誤差は,最下層の設置精度に大きく左右されるので,最下層の設置に当っては,段差を生じないよう慎重に行う必要がある。そのほか,ガソリン等の鉱物性油脂,火気には絶対に近づけない。また,長期間の直射光線にさらさない注意が必要である。

7 動態観測
工事箇所は,EPSの動態観測を行うものとし,計器を設置した。
・沈下量測定      ・土圧計(垂直)
・パネル土圧計(側圧) ・鉄筋計
・伸縮計         ・傾斜計
(総重量31.9tfトレーラー走行試験結果)
載荷時の土圧の増大
 ・土圧計(垂直)   0.0147kgf/cm2
 ・パネル土圧計(側圧)0.0101kgf/cm2
観測の結果,圧力の増大はごく僅かで,EPSの許容圧縮応力と考えられている一軸圧縮強度1.1kgf/cm2の1/2を十分に下回る結果が出た。

8 あとがき
EPS工法は,徐々に施工実績も増え,工法も確立されつつあるが,例えば,荷重分散効果を上げるに必要な路床厚をどれだけとればよいかなど,未解明な部分もある。今後,計器による現地観側を継続し,工法の改良へ活用したい。

参考文献
1) 発泡スチロール土木工法パンフレット(EPS開発機構)
2) 超軽量盛土材としての発泡スチロールの利用技術指針(案)(平成2年2月土木研究所)
3) 材料マニュアル第2版(平成2年3月EPS開発機構)
4) 新材料の超軽量盛土材料への利用技術の開発(土質研究室 久楽,竹内,青山,草野)

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