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【H29年7月九州北部豪雨関連】 有明海へ流出した流木等への対応について ~平成29年7月九州北部豪雨~
西久保博貴

キーワード:平成29 年7 月九州北部豪雨、流木、有明海

1.はじめに
平成29 年7 月九州北部豪雨では福岡県朝倉市や大分県日田市を中心に観測史上最大となる降雨が観測された。気象台が設置したアメダスの観測地点では、朝倉(福岡県朝倉市)雨量観測所で観測史上最大となる最大1 時間降水量129.5㎜、最大24 時間降水量545.5㎜を観測した。
また、日田(大分県日田市)雨量観測所でも観測史上最大となる最大24 時間降水量370.0㎜が観測された。
この記録的な豪雨により激甚な被害が発生し、土砂流出と伴に多量の立木等が一級河川筑後川へ流出し有明海へと流れ込んだ。
ここでは、有明海へ流れ込んだ流木等の回収の対応について紹介する。

2.流木等の漂流・漂着状況
平成29 年7 月九州北部豪雨により、約22,500m3の流木等が有明海沿岸に流れ込み、海岸区域や漁港・港湾区域、河川区域等へ漂流・漂
着した(図- 1)。
近年の豪雨等による有明海沿岸への流木等の漂着としては、平成24 年7 月1 日から4 日(写真- 1)、同13 日から14 日にかけての梅雨前線豪雨や平成28 年6 月19 日から24 日にかけての梅雨前線豪雨でも甚大な被害が発生し、有明海沿岸へそれぞれ約20,000m3と約10,500m3の流木等が漂流・漂着した。

過去の災害では葦や立木などが多かったことに対し、今回の被害の特徴として被災地からと思われる根こそぎ流された『多量』の大木や多種多様な生活用品(住宅建材、プロパンガス、家財道具、生活用品など)が漂流・漂着した(写真- 2)。

3.流木等の漂流・漂着による影響
海岸施設(消波ブロック、排水機場吐出樋管)前面への流木等の漂着により、消波機能の低下(写真- 3)や排水機場からの排水の支障が生じた(写真- 4)外、漁港区域内では、流木等が漂着したことにより船舶が出航できない事態が生じた(写真- 5)。

また、一般海域では、流木等の漂流物を避けながらの航行を強いられ、移動時間の増加や漂流物による船舶のスクリュー破損等、有明海全体で様々な影響が生じた。これらの影響以外にも、ラムサール条約登録地や鹿島ガタリンピック会場などでは観光や環境面での影響が生じた(写真-6)。

4.流木等の回収への県の対応
県では、7 月5 日の降雨状況から、有明海への流木等の流出が想定されたため、翌6 日から、建設業界と防災協定に基づく対応の協議や現地調査及び情報収集を開始した。また、一般海域の漂流物回収については国土交通省熊本港湾空港整備事務所へ事前要請を行った。10 日には「災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業」を活用するため国との実施に向けた協議を行い、翌11 日には実施承認を得て、14 日から漂着物回収を開始した。
回収にあたっては、海岸区域や漁港・港湾区域、河川区域等への漂着延長が非常に長く、台風シーズンや9 月からの海苔漁期を控えていることから、過去の漂着物処理実績などを総合的に評価し、早期撤去を図るため災害協定に基づき複数の建設業者に回収を依頼した。
また、流木等が国土交通省所管や農林水産省所管の海岸のほか、港湾施設や漁港施設など様々な所管施設に漂着したことから、処分先の調整など回収・処分等がスムーズに行えるよう窓口を一本化し対応することとした。
また、県民などの関心が非常に高かったことから、回収完了までの毎週末に作業の進捗状況等についてマスコミに対し情報提供を行った。

5.流木等の回収にあたっての課題
「漁業活動への影響」や「海岸施設機能保全・自然環境保全」の観点から、速やかな撤去を進めたところであるが、有明海の潮汐や風向による漂流物の移動により回収範囲が日々変化することや、陸域から直接回収が困難な漂着物等についてはクレーンによる回収(写真- 7)を強いられ、また、陸域からのクレーンによる回収や海域からの船舶による回収がいずれも困難な遠浅の干潟に留まる多量の大木や漂着物等の回収について困難を極めた。干潟に留まる漂着物等の回収にあたっては、低水深でも航行ができる船舶を所有するNPO 法人の協力も得て回収を行ったところであるが、満潮時の限られた時間内での作業ということもあり、回収に長期間を要するなど様々な課題が生じた(写真- 8)。

また、回収した漂着物等については、①分別作業を行うこと、②排出先である処分場などとの調整により定尺に切断すること、③処理施設能力に応じ1 日当たりの搬出量が制限されることなど、すべての漂着物等の処分に約半年間を要するなどの課題も生じた(写真- 9、10)。

6.今後の対応について
今回の対応にあたっては、国土交通省所管や農林水産省所管の海岸のほか、港湾施設や漁港施設など様々な所管施設管理者と廃棄物処理関係部局だけではなく多くの市町と連携し対応を進めたことで、「漁業活動への影響」や「海岸施設保全・自然環境保全」への影響を最小限に収めることが出来たと思われるが、今回の対応で得られた教訓や課題について、効果検証を行い今後に生かしていくことができるよう取り組んでいきたいと考えている。
また、今回の災害で多量の立木が有明海へ流れ込んだ様子を目の当たりにし、森は川を通じて海を育んでいること、そして私たちの暮らしと密接につながっていること、有明海や玄海の” 海の幸”も森の恩恵を受けているということなど、大切な気づきを得た。
そこで、佐賀県ではこれを契機に、佐賀の豊かな自然を守り未来につなげていく「森川海人っ(もりかわかいと)プロジェクト」を始めた。「森川海人っ(もりかわかいと)」とは、「森・川・海はひとつ」という思いを「人がつなぐ」という意味で、具体的には森・川・海のつながりや管理の重要性など「森・川・海はひとつ」として県民一人ひとりの意識の醸成や行動につなげるため、多くの方が森・川・海に親しみ、その恵みに感謝し、守ることで、佐賀の豊かな自然を「人」が未来へつなぐことを目指している(図- 2)。

7.おわりに
漂着物の処理については本年1 月中旬にすべての処分が完了し、有明海ではこれまでどおり海苔養殖が行われ収穫が行われた。また、有明海で越冬する渡り鳥が観察されるなど、自然環境面での回復も図られた。これまで過酷な環境の中でご尽力いただいた建設業や漁業関係者の皆様、廃棄佛ついてご協力をいただいた市町関係者の皆様の外、災害関連事業採択に向けご指導をいただきました国土交通省など全ての関係者の方々に対し深く感謝申し上げます。

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