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耐酸性レジンコンクリートヒューム管
(パーフェクトパイプ)の特性試験

麻生セメント(株)
 企画室 課長補佐
小 島  哲

麻生セメント(株)
 中央研究所グループリーダー
松 尾 一 四

1 はじめに
本年度より第7次下水道整備5ケ年計画がスタートし,事業費は16兆5,000億円,平成7年度までに処理人口普及率を平成2年度の40%から55%まで引き上げるのが目標とされている。同時に大都市における下水の高度処理や分流式下水道の改善,改策など下水道施設の質的向上を重点として推進されようとしている。
この下水道の質的向上においては,最近は食生活の変化により,下水道施設の腐食の促進が問題視され始め,多種多様な耐酸管が使用されている。さらに市街化の進展,自動車交通量の増加,あるいは管渠の埋設深さの増大等の理由により,推進工法が多用されるようになり,コンクリート管はもちろん,陶管や合成樹脂等の分野でも推進工法用の管の製作開発が行われてきている。耐酸性レジンコンクリートヒューム管「パーフェクトパイプ」は,このような状況のもと,下水道の抱えている多くの問題を一挙に解決した革命的な排水管として開発された管である。
本文では,レジンコンクリート製ヒューム管の特性試験を行ったのでその結果を報告するものである。
2 開発の経緯
昭和50年頃から,下水道関連設備におけるコンクリート構造物の腐食に関する情報が頻々と入るようになった。58年には某大都市下水道担当部署からヒューム管協会九州支部に対し,ヒューム管の防食対策耐酸管の開発の要望があり,急に関心が高まった。
当初は,ヒューム管内面を樹脂で被膜した管が数社から発表され,我が社ではタールエポキシ樹脂のモルタル層を管内面に形成する複合管をごく簡単に製造する方法を発明し普及を図ったが,この形式の管ではユーザーの満足を得られなかった。
下水道雰囲気におけるH2S → H2SO4による管内面気層部からの劣化の他に,かつての産炭地福岡県では,ボタによる造成地でのSO3によるコンクリートの膨張破壊も見逃せない。また工場廃棄物処理場のコンクリート腐食,あるいは海水,温泉水,酸性土壌によるものなど,排水管の場合は管全体の耐食性が要求されるようになった。このような背景から,レジンコンクリート単味の排水管の研究に着手した。
もともと,レジンコンクリートは作業性が極めて悪い。有筋,遠心力成形でヒューム管以上の寸法精度を確保することに苦心したが,ようやく平成1年に安定的な製造技術を確立し,翌2年3月建設省の技術認定を取得することができた。

3 製造方法
結合材として不飽和ポリエステル樹脂を使用し,硬化剤を添加した後,原料供給機の先端で骨材その他の必要な材料を配合しミキサーで瞬時に混合し,吐出口から型枠内に供給。
型枠内には,鉄筋かごを配し,型枠を遠心機で回転させながら成形を行う。

4 管の種類と形状
パーフェクトパイプには,開削工法用B形管,推進工法用S形管,推進工法用NS形管(高強度用)の3種類がある(表ー1)。

形状はヒューム管の形状・構造に類似している(図ー1)。しかし管厚については,レジンコンクリートの強度が極めて高いので各種管において以下のように設定している。
B形管:ヒューム管一種の外圧強さを満足する範囲で設定
S形管:ヒューム管の小口径推進管の外圧強度および許容推進長を満足する範囲で管厚を決め,既存の推進機械が使用できるよう外径をヒューム管に合わせてある。従って,実内径は呼び径より大きくなっている。
NS形管:ヒューム管と同一寸法にあり,高外圧・長距離推進が可能である。

5 パーフェクトパイプの特性試験
(財)土木研究センター審査証明取得時の試験データ(文献ー1)を中心に,パーフェクトパイプの特性について以下に述べる。
5.1 耐酸性
 5.1.1 試験方法
レジンコンクリート,普通コンクリートの供試体(10×20cm円柱)を5%硫酸溶液に浸漬し,測定期間ごとに取り出して質量変化測定を行った。
 5.1.2 試験結果
浸漬後の供試体の質量を図ー2に示す。不飽和ポリエステルレジンコンクリートは質量変化は全くなく,外観も変化が見られない。一方普通コンクリートは,質量が50%以下に減少し残存供試体も内部まで劣化が進んでいる。このように不飽和ポリエステルレジンコンクリートは,酸,特に下水道で問題になっている硫酸に対して高い耐酸性を有している。文献ー2によると,不飽和ポリエステルレジンコンクリートの耐酸性は60年(60年後の劣化率20%)の実績評価が出ている。

5.2 剛性
 5.2.1 試験方法
パーフェクトパイプ,コンクリート管の接合部を含まない輪切り短管(長さ500mm)を,JIS A 5303に規定する外圧試験方法により,荷重とたわみ量の関係および,外圧強さ(ひびわれ,破壊)の測定を行った。
 ①パーフェクトパイプ:B形呼び径200
 ②ヒューム管    :B形1種呼び径200
 5.2.2 試験結果
ひび割れ規格までの荷重とたわみの関係を図ー3に示す。パーフェクトパイプは,コンクリート管に比較して大きな外圧強度を有し,ひび割れ荷重は,コンクリート管のひび割れ荷重を大きく上回っている。ひび割れ規格荷重時(2600kgf)の内径たわみ量は,平均で0.32mmであり剛性管の基準であるたわみ率1/200以下という基準を大きくクリアーしている。従って設計上剛性管として扱うことが出来る。

5.3 折れ曲げ強さ
 5.3.1 試験方法
以下に示す供試体について,アムスラー型100ton曲げ試験機で曲げ試験を行った。
供試体
 ①パーフェクトパイプ B形呼び径250
 ②ヒユーム管     B形呼び径250 1種管
 ③ヒユーム管     B形呼び径250 2種管
 ④陶   管     厚管呼び径250
 5.3.2 試験結果
結果を表ー2に示す。パーフェクトパイプのひび割れモーメントは,コンクリート管に対し1.5倍の耐力を有している。
小口径管は細長いため,開削工法であれ,推進工法であれ,胴折れが事故の大部分を占めている。この胴折れ現象は,開削工法の場合は単に外圧による曲げ荷重によって発生し,推進工法の場合は推進圧入力と土圧荷重や転石あるいは方向修正によって生じる荷重などが合成され,管体に大きな胴折れ力が作用するためと考えられる。よって曲げ強さを比較する事によって,胴折れに対する管の抵抗性を比較する事ができるが,パーフェクトパイプは,胴折れに対して大きな抵抗性を有している。

5.4 軸方向圧縮耐力
 5.4.1 試験方法
パーフェクトパイプをJIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて,軸方向に荷重を加えて圧縮強度試験を行い,破壊荷重を測定した。
供試体:パーフェクトパイプS形呼び径250,長さ300mm(供試体個数12個)

 5.4.2 試験結果
軸方向圧縮強度の平均値は,1014kgf/cm2であり,Ⅱ類E7用コンクリートの圧縮強度700kgf/cm2に比較して大きく上回っている。このデーターを基に,推進管の許容推進長を算出した。手順を以下に示す。
① パーフェクトパイプの許容圧縮応力度Fca
建設省都市局下水道部監修「下水道推進工法の指針と解説」に準じて,軸方向圧縮強度の平均値より標準偏差,安全率を考慮して許容圧縮応力度を算出した。
  Fca=427.5kgf/cm2
② パーフェクトパイプの圧縮応力度Fと圧縮ひずみの関係,実験式
  F=0.317ε+19.4(実験式)………①式
  ①式に427.5を代入し,ε=1287.4μを得る。
③ パーフェクトパイプ推進中の最大ひずみと平均ひずみの関係
 εmax=1.327εmean+104.2(実験式)………②式
 ②式に1287.4を代入,εmean=891.6μを得る。
 これを①式に代入し,F=302kgf/cm2を得る。
 これが推進管の許容応力度σca=302kgf/cm2である。この許容応力度を基に推進管の許容推進長を算出した。図ー4に呼び径300のパーフェクトパイプとヒューム管の許容推進長を比較した。パーフェクトパイプはヒューム管に比較して約2倍の推進長をとることができる。

5.5 粗度係数
 5.5.1 試験方法
マニングの粗度係数算定のための水理実験方法により,粗度係数を算出した。実験装置の概略を図ー5に示す。
試験体:パーフェクトパイプB形管呼び径200,5本(有効長2.0m/本,総延長10m)

試験体:パーフェクトパイプ B形管呼び径200,5本(有効長2.0m/本,総延長10m)

 5.5.2 試験結果
パーフェクトパイプの粗度係数は,0.0084となり,コンクリート管の粗度係数0.013さらには塩ビ管の粗度係数0.010をも上回っている。このため流速を大きくとれ(クッターの公式),特に実内径の大きいS形の場合,外径が同じコンクリート管と比較すると,流量が1.7~2.0倍確保できる。
参考までに図ー6にパーフェクトパイプS形管とコンクリート小口径推進管との呼び径と流量との関係を示す。図から呼び径350のパーフェクトパイプの流量は,コンクリート管の呼び径400と同等以上の流量を有し,むしろ450の管の流量に相当する。

5.6 耐摩耗性
 5.6.1 試験方法
長さ295㎜×幅142㎜×高さ60㎜の鉄板製の型枠中に供試体をセットし,鉄製ロッドを供試体上に挿入し,モーターの駆動によってドラムが回転すると,ロッドが供試体面に転がり水流下で衝撃・摩耗作用を与える。以上の試験よりスリヘリ係数を算し,耐摩耗性を比較した。
なお,スリヘリ係数はスリヘリ減量を単位面積当たりのスリヘリ損失容積量として表す。

 5.6.2 試験結果
結果を図ー7に示す。レジンコンクリートは,普通コンクリートに比較して大きな耐摩耗性を有している。

5.7 管接合部の水密性
 5.7.1 試験方法
接合された2本の管の両端を密封し,3kgf/cm2の水圧をかけて一定時間保持した時,継手部から漏水がないか調査した。試験は直線接合と曲線接合で行い,曲線接合の場合の接合角度は,全国ヒューム管協会で指導しているコンクリート管の許容曲げ角度とし,呼び径250の場合,2°55′呼び径600の場合1°40′とした。試験水圧保持時間は3分とした。
試験体:パーフェクトパイプB型管,呼び径250,600各2組
 5.7.2 試験結果
結果を表ー3に示す。パーフェクトパイプの接合部は,直線接合はもちろんのこと,曲線接合でも許容角度以内なら水密性は高く,漏水の心配はない。

5.8 その他の特徴
 5.8.1 加工性
パーフェクトパイプは,結合材に樹脂を使用しているので,孔開けや切削などの加工を簡単に行うことができる。
 5.8.2 軽量
レジンコンクリートの嵩比重はコンクリートに比較して90%と軽く,しかもB形管,S形管は管厚が薄いので重量はコンクリート管の60%~70%と軽量であり,作業性が良い。
 5.8.3 靱性
レジンコンクリート特有の靱性に富み,応力の分散が均一に行われるので,局部荷重や衝撃に対して強く,施工時のトラブルが少ない。

6 あとがき
以上,パーフェクトパイプの特性について試験結果を基に述べてきたが,パーフェクトパイプはレジンコンクリートの大きな特徴である耐酸性に優れているだけでなく,下水道管として重要な条件である水理特性,さらには土木資材として必要な剛性をも併せ持った管である。今後,都市化の進展とともに,小口径推進が伸びていくであろうが,長距離推進への対応,胴折れ等施工時のトラブル低減をパーフェクトパイプは可能にしていくと考えている。

 参考文献
(1) パーフェクトパイプ 土木材料技術・審査証明報告書(技審証第0109号)
(2) 高分子論文集 Vol.44.No.3(1987)

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