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九州地方整備局における建設現場の週休2日推進の取組み
楠本敦
竹下真治
宮下大志

キーワード:週休2 日、働き方改革

1.はじめに
平成28 年4 月に発生した「熊本地震」では、被災直後から九州各地の建設業者が被災地に集結し、被災状況の把握、支援物資輸送路確保のための道路啓開、施設の応急復旧等様々な対応を迅速に行い、被災地の復旧・復興に貢献して頂きました(写真- 1、2)。

しかしながら、災害発生時に、被災地へ繋がる道を切り開くなど、地域の安心・安全の守り手である建設業が「将来にわたって持続可能な業界か」と問われると、増加する技術者の離職や新規入職者の減少により、他産業と比べ10 年早く就業者の高齢化が進んでいる現状から、業界そのものの破綻が懸念される状況です。

2.週休2 日制の取組み
将来の担い手である若手技術者の入職を妨げる原因の一つは、この業界の休日の少なさにあると言われています。
平成25・26 年度全国の完成工事(n=2,397)を対象とした現場の休日取得状況をみると、全体の約半数が4 週4 休以下となっているのに対し、週休2 日となる4 週8 日を実施している現場は、全体の1 割にも届いておりません(図- 1)。
このような現状の中では、小学生の頃より週休2 日に慣れ親しんでいる学生は、建設業に興味を持ち、土木・建築を専攻していたとしても、この障壁の前に足踏みし、他産業へと流れることが懸念されるため、九州地方整備局では建設業界への新規入職者数の拡大を目的とした週休2 日制のモデル工事を「改正品確法」が施行された平成26 年度より実施しています。

3.完全週休2日制の試行
平成26 年度から28 年度にかけては、土日の現場を完全閉所とする「完全週休2 日制」の試行を実施しました。
(1)平成26・27年度の試行
平成26 年度は、天候に影響されないトンネル内の新設舗装工事(2 件)、平成27 年度は、天候に影響されるPC橋梁上部工工事(2 件)を対象として試行したところ、達成率は高い結果となりました(図- 2)。

(2)平成28年度の試行
 a)試行内容
過去27 年度の試行で高い達成率となったことから、平成28 年度は、夜間作業を含む工事及び熊本地震災害復旧工事等以外の全ての工事まで、試行対象を拡大しました。
取組み実施の選択は、契約後に受注者の意思により決定する「受注者希望型」とし、実施の意思表示をした現場には、週休2 日モデル工事である旨を掲示することとし、地域の方々へ周知することを意識しました(写真- 2)。

また、実施後の工事成績評価については、「100% 達成」の場合のみ加点することとしました。一方、数多くの工事にチャレンジして頂きたいため、未達成の場合においても減点しないこととしました(図- 3)。

 b)実施状況
平成29 年11 月20 日現在、繰越工事を含む契約済み対象工事(360 件)のうち、実施の意思表示をした工事は111 件(約31%)となりました(図- 4)。

111 件の工種別内訳において、一般土木が50件と最も多い結果となりました(図- 5)。

週休2 日の実施を意思表示した111 件中61件の工事が完成しており、そのうち達成件数は、53 件となっています(図- 6)。

達成工事53 件の内訳は、以下のとおりです。特徴的なのは、「機械設備」の達成率(達成件数/ 完成件数)が他工種と比較し、高いことです。これは、「機械設備」の現場作業が短期集中型で、週休2 日に取組みやすい面があったためと考えられます。
 ○一般土木22 件 (88%)
 ○機械設備 8 件(100%)
 ○ As 舗装 7 件 (78%)
 ○その他工種 16 件
週休2 日を達成した工事受注企業にアンケート調査をしたところ、工夫した主な点として以下の回答が得られました。
 ○日当たり作業量を高めた(作業員の増員)
 ○悪天候を想定した工程を計画した
 ○作業手順の見直し
作業員を増やすなど、日当たり作業量を高めたということに関しては、その手法について議論がありますが、建設現場での生産性を向上させる取組みである「i-Construction」の概念に繋がるものです。
また、週休2 日を実現するという観点で、計画工程の作成や作業手順を見直すことは、これまでの概念と異なるものであり、週休2 日を意識したことで、休みの確保に繋げられたという実績は、今後の制度検討の糧になると考えられます。
一方、達成できなかった8 件について、主な理由は、以下のとおりです。
 ○計画工程より実工程が時間を要した。
 ○天候による工程の遅れ
加えて、受注者からは、土日に休日を限定する平成28 年度の試行に対して、「現場打ちコンクリート工の場合、打設後、必ず散水作業が必要となるが、土日を休日とした場合、散水作業ができなくなるため、希望したくても希望できない。」といった意見も頂いたところであり、休日の曜日設定を自由にすることで、多様な工夫が可能となり、より多くの工事現場での実施に繋がると考えられます。

 c)週休2 日普及へ向けた課題
360 件の対象工事のうち、249 件(69%)の工事が週休2 日を選択しませんでした。
選択しなかった主な理由は以下のとおりです。これらは、今後、週休2 日を普及させていく際の課題として捉える必要があります(図- 7)。
 ○発注段階の工期設定が厳しい 56%
 ○他工事との調整が必要 19%
 ○人員、資材の確保が困難 5%
 ○河川工事(出水期施工)の制限 4%

工事発注にあたっては、週休2 日が可能となるような適正な工期を設定することが前提条件となる中で、「発注段階の工期設定が厳しい」という理由が最も多かったという結果を踏まえ、今後は、これまで以上に実情に則した適正な工期設定が重要になってくると考えられます。
次に多かった「他工事との調整が必要」という理由については、自社だけでは工程計画を決定できないため、週休2 日を希望しづらいという主旨ですが、このことについては、多くの企業に週休2 日取得の重要性を理解して頂き、業界全体として意欲的に取組むことで改善が図られると考えられます。

4.平成29年度の試行
(1)適正な工期設定
平成29 年度の試行は、週休2 日普及へ向けた課題として最も多かった「発注段階の工期設定が厳しい」という意見を踏まえ、適正な工期設定を徹底する取組みとしました。全国統一的な取組みとして、以下4 項目の対策を図り、より適正な工期を設定することとしました。
 ○工期設定支援システムの導入
 ○準備・後片付け期間の見直し
 ○工事工程の受発注者間の共有
 ○余裕期間制度の活用

 a)工期設定支援システムの導入
施工に必要な日数を、日当たり標準作業量等を基に、所要日数及び工程を自動作成するシステムを開発し、原則として全ての土木工事に適用しました。

 b)準備・後片付け期間の見直し
準備・後片付け期間の実態を確認し、工事の主たる工種区分毎に最低限必要な日数を設定しました(図- 8)。

 c)工事工程の受発注者間の共有
適正に設定された工期については、関係機関との協議や支障物件の移設等工期に影響を与える外部要因まで含めて作成されたものであるため、受発注者間において工事工程のクリティカルパスと関連する未解決課題の対応者及び対応時期について共有を原則化することをで効果を発揮できるようにしています(図- 9)。

 d)余裕期間制度の活用
週休2 日を確実に行うには、余裕期間制度(フレックス方式)の活用も有効です。フレックス方式は、実工期に余裕工期を加えた期間を全体工期に設定しており、全体工期の範囲内で受注者が工事の始期と終期を選択できる制度です。よって、週休2 日に必要な工期を受注者が決めることが可能となります(図- 10)。

(2)九州地方整備局の実施方針定
平成29 年度は、全国統一の取組みとして、工期全体を通じて週休2 日相当の休日を確保することとされていますが、九州地方整備局としては、現場の休日取得状況で、4 週4 休以下が、全体の約半数を占めている現状を鑑み、一定の条件下では、週休2 日相当の定義を4 週6 休以上としました。

(3)間接工事費の補正
工期全体において4 週8 休を確保した場合に限り、工期日数の延長に要する経費として、共通仮設費を1.02 倍、現場管理費を1.04 倍とする増額補正を行います。

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(4)試行対象及び実施状況
対象工事は平成29 年5 月10 日以降に契約手続きを行う工事のうち、災害復旧工事等を除く工事とし、週休2 日制の実施は、平成28 年度同様に、契約後に受注者の意思により決定する「受注者希望型」としました。
平成29 年11 月20 日時点の契約済み対象工事219 件のうち、週休2 日を選択した工事は80件(約37%)です(図- 11)。

80 件の工種別内訳における主な工種は以下のとおりです(図- 12)。
 ○一般土木50 件(63%)
 ○維持修繕13 件(16%)
 ○通信設備 5 件( 6%)

契約済み対象工事(219 件)のうち、112 件(51%)の工事が週休2 日を選択しませんでした。選択しなかった理由の上位は以下のとおりです(図- 13)。
 ○発注段階の工期設定が厳しい 43%
 ○他工事との調整が必要 25%
 ○人員、資材の確保が困難8%
 ○河川工事(出水期施工)の制限4%

平成28 年度と比較すると、「発注段階の工期設定が厳しい」という理由の占める割合が56%から43% に減少はしたものの、工期設定支援システムの導入等4 つの対策を実施しているにもかかわらず、このような理由が残っていることについては、今後も課題意識を持ち、適切に対応していく必要があると考えられます。
平成29 年度の制度に基づき実施している工事については、平成29 年11 月20 日時点において、完了している工事がないことから、達成状況は不明ですが、今後、更に現場で休日が確保され、受注者が自然体で取組みやすい制度に改良していく必要があるため、試行結果について、確実に検証していくこととしています。

5.おわりに
建設業界の週休2 日の確保は、長らく問題視されながらも、先送りされていましたが、試行を通じて受発注者とも、その重要性を意識し始めたところです。
国土交通省では週休2 日の確保等の取組みが公共・民間問わず多くの工事へ広がるよう、週休2 日の確保に関する情報を発信する「週休2 日応援サイト」を平成29 年11 月1 日に開設しています。
併せて、受発注者の情報を双方向で発信するFacebook も開設しています。

担い手不足という構造的課題を抱える建設業が将来にわたって持続可能な産業へと転換していく為には、建設産業における生産性の向上を加速させ、週休2 日の確保を含めた働き方改革を推進させる必要があります。そのために、九州地方整備局として、あらゆる企業が積極的に週休2 日に取組めるよう、その環境づくりに努めて参ります。

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