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川の周辺の開発状況

蛇行した川の直線化

かつて、ふるさとの川は、流れのままにゆるやかに蛇行し、瀬や淵をはじめ、周辺には多くの生き物や植物が生育する湿地や河畔林などの豊かな自然があり、人々にうるおいと安らぎを与える場所でした。

しかし災害が起きやすい日本では、洪水から人々の生命や財産を守るため、効率的に川の整備が進められてきました。川はコンクリートで固められた直線的な空間となって川幅も狭められ、周辺の湿地は農地や住宅地、工場地として開発されてきました。さらに汚水流入による水質の悪化、水需要の増大による水量の減少で、生き物も人も寄りつかない場所へと変化してしまったのです。

21世紀のいま、環境保全は地球規模の課題です。成長、拡大だけを目指してきた20世紀の経済や消費生活を見直し、自然にダメージを与えない、持続可能な資源循環型・自然共生型社会への転換が急がれているのです。このような社会情勢を背景に改正された河川法では、新たに「河川環境の整備と保全」という目的が加えられました。また平成13年、首相主宰の「21世紀”環の國”づくり会議」でも、自然と共生する社会の重要性が指摘されました。

私たちはいま、かつての美しい川の環境を再び取りもどさなければならない時期に来ています。

湿地が、国土面積に占める割合は0.2%ですが、湿地環境に依存している絶滅危惧種は、鳥類5種、維管束植物190種(鳥類、維管束植物の絶滅危惧種のそれぞれ約2割)を数え、生物多様性を保全する上で、湿地は重要な役割を果たしています。

一方、日本の湿地面積の内、河川及びその隣接地に存在する湿地面積は全湿地面積の約8割です。河川と関連して存在するこれらの湿地は明治・大正期以降、土地利用の高度化に対する要請などによって約8万haが減少しており、今後いかに保全・再生していくかが大きな課題となっています。

川の環境は多様です。水や砂利などの物質的な環境、水中や周辺の動植物などの生態環境、生活・農業・工業などの現代社会環境など深くかかわっています。洪水によって一時的にこれらの環境が変わることがあっても川には復元力も備わっています。人間の体に似ていますね。微妙なバランスの上に成り立つ「川のシステム」を健全に保つことが、川の保全につながるのです。

これまでの取り組みでは、事業が生物の生息・生育環境に与える影響の回避・低減、あるいは局所的な環境の修復・復元にとどまっており、流域からの物質流入システムや川の攪乱と更新システム、すなわち「川のシステム」の再生には至っていませんでした。

このように、川の本来の姿である多様な環境を形成するためには、「川のシステム」の再生・健全化、すなわち再自然化を図っていかなければなりません。このことは、生物の多様性の確保にもつながります。

■流量変動
自然の川は、季節的な要因や台風などの大規模出水により、常にその流量、水位を変化させています。
その流量変動が冠水頻度に応じた生物の多様な生息・生育環境を提供します。

■浸食・運搬・堆積作用
自然の河川では、流れが一様ではなく速い所と遅い所が複雑に存在するため、河岸や河床が浸食されたり、運搬されてきた土砂が堆積することにより、蛇行や瀬・淵等の変化に富んだ地形が形成されます。

自然再生事業は河川環境の保全を目的とし、流域の視点から「川のシステム」を再自然化する初めての河川事業です。

また、この事業は極力人間の手を入れず、自然の復元力を活かして行う事業です。

■湿地の再生

  • 河床低下などにより乾燥化する湿地について冠水頻度を増加させることにより湿地環境を再生
  • 上流からの土砂流入を防止し湿地環境を再生
  • 既存の洪水調節池内において多様な湿地環境を再生
  • コンクリート化された湖岸の環境を再生

■自然河川の再生

  • 旧河道を生かし蛇行河川を再生
  • 河畔林の再生

■河口部の干潟再生

  • 水制工を設置することなどにより干潟を再生

これまで川の整備や流域の開発によって失われた川本来の姿への自然再生のためには、川だけではなく流域を含めた取り組みが重要です。
すなわち、流域レベルで治水機能を確保しつつ、川のシステムの再自然化を目指します。
流域や川の変遷から川の環境における問題点を把握し、その要因を推測することにより流域の視点から計画を策定します。

流域の視点から横断的連携を図り、流域からの物質流入・流出システムの再生を図ります。 過去の人為的な改変を取り除き、川の撹乱と更新システムの再生を図ります。

▲浸食を許容する河岸の形成

自然再生事業は、あらかじめ定められた事業スケジュールを重視するこれまでのやり方とは違い、事業実施による自然の反応(レスポンス)をモニタリングし、その状況に応じて計画の内容にフィードバックしながら順応的に見直すとともに、段階的に事業を実施する21世紀型の新しい公共事業です。

※インパクト=レスポンスとは、人為による影響をインパクト、そこから河川環境がどのように応答するかをレスポンスと定義し、河川事業の実施に伴うインパクトとレスポンスの関係を明らかにすることにより確立される予測手法をいう。


計画の策定段階・事業実施段階及び事業実施後の管理段階において、NPOや関係機関等との意見交換及び協働による積極的な連携を図ります。

  • 蛇行河川の再生
    過去に直線化した水路を旧川を利用して蛇行河川に復元し、湿原環境を再生するとともに、下流への土砂流入を抑制する。

  • 土砂流入防止対策
    河川沿いに水辺林、沈砂池、土砂調整地をつくることにより、湿原へ流入する土砂、栄養塩などの負荷を軽減する。

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