JR鹿児島本線・豊肥本線(熊本駅付近)連続立体交差事業
~熊本駅周辺における連立事業と九州新幹線建設事業の
同時施行について~
~熊本駅周辺における連立事業と九州新幹線建設事業の
同時施行について~
熊本県 熊本駅周辺整備事務所
計画課 参事
計画課 参事
伊 東 貢
1 はじめに
熊本市は,九州のほぼ中央に位置しており,人口は約66万人と九州第3位の人口を擁している。平成8年4月には中核市へ移行し,さらに発展を続けている状況である。しかしながら,熊本市の副都心と位置づけられている熊本駅周辺地域は,鉄道により東西に分断され,また,既成市街地が多く,道路も狭隘であるため,開発の糸口がつかめず,その発展が停滞している。
このため,熊本県・熊本市では“出会いとふれ合いの副都心づくり”「熊本駅周辺地域整備構想」を平成2年10月に策定・公表し,駅周辺の整備を進めてきた。その後,平成10年3月に熊本駅を含んだ九州新幹線船小屋~新八代間の実施計画が認可されたことから,新幹線建設事業と併せ,熊本駅付近の鉄道を高架化し,街路及び市街地の面整備が更に具体化することとなった。
平成13年度に,県が熊本駅付近連続立体交差事業を,市が熊本駅西地区区画整理事業に着手したところであるが,併せて国の合同庁舎の移転,東西駅前広場の整備,再開発事業,街路事業を総合的に進めることにより,熊本駅周辺の都市機能の向上を図るものである。
今回,本県における連立事業の特色である九州新幹線建設事業との同時施行について報告する。
2 連続立体交差事業の概要と経緯
連続立体交差事業の概要と経緯については,次のとおりである。
概要図を図ー1に示す。
(1)概 要
(2)経 緯
3 九州新幹線建設事業の概要と経緯
(1)概 要
九州地域内の主要都市間ならびに九州地域と中国・近畿地域等を結ぶことにより,産業経済活動の促進,文化交流の活性化および生活圏拡大等,地域の発展に大きく貢献することを目的として,整備が進められている。
平成15年3月13日には新八代~鹿児島中央間が開業し,博多までの早期開業が望まれている。
概要図を図ー2に示す。
(2)経 緯
4 九州新幹線建設事業との同時施行方法
(1)同時施行に至る背景
本事業の特色は,新幹線建設事業と同時並行的に施行することである。
施行方法としては,
① 新幹線高架橋を施工し,その後在来線を高架化する(新幹線先行方式)。
② 在来線を先に高架化し,その後新幹線高架橋を施工する(在来線先行方式)。
③ 二層高架方式
が考えられるが,次のような課題があった。
(課題1)新幹線開業時期が定められていること。
平成13年4月の実施計画認可時において,「概ね12年後の完成」と記されており,平成25年の新幹線高架橋工事完成が定められている。
(課題2)連立事業の負担増が予想されること。
新幹線の開業後には在来線特急等の便数減が予想され,2面6線の駅規模で対応可能であるが,開業前であれば現駅規模の確保(3面8線)が必要な可能性もあり,事業費の増,将来にわたり不必要な規模の駅部が残る。
以上の課題を解決するため,国土交通省と協議の上,九州新幹線の開業に影響の少ない,①の新幹線先行方式を採用した。
(2)施行手順
同時施行するにあたり,用地幅を最小にするため,相互の高架本体用地を仮線敷に利用する方式をとった。施工手順は次のとおり。
なお,図ー3にイメージ図を示す。
① 用地取得(本体,側道)
② 埋蔵文化財調査
③ 道路占用物移設,側道整備等
④ 在来線高架本体用地,側道敷地の一部を利用し,在来線を移設(1次仮線施工)
⑤ 1次仮線切替後に,新幹線高架橋の施工
⑥ 新幹線高架橋の下に,在来線を移設(2次仮線施工)
⑦ 在来線高架橋施工に着手
⑧ 新幹線完成
⑨ 在来線切替・事業完成
5 おわりに
本事業は,平成15年8月に区間延伸の事業計画変更認可を受け,現在,用地買収を進めている。本事業地周辺には多くの埋蔵文化財包蔵地があるため,文化財保護部局と協議し,用地買収完了後に更地化された所から試掘調査を行い,遺構等確認された場合は本発掘調査を実施している。
平成16年度には側道工事,平成17年度から仮線工事に着手する予定で,「1日でも早い」九州新幹線の全線開通,連続立体交差事業の完了を目指している。今後,支障となる道路占用物の移設既設跨橋撤去時における交通対策等の様々な案件を処理する必要があり,工事工程等については生活環境に影響する住民の関心も高く,地域連絡協議会(仮称)を設立し,説明会等を実施する予定である。新幹線建設・連立両事業と併せて街路事業,土地区画整理事業等も計画的に進められており,熊本駅周辺地域の整備が円滑に進むよう努めてまいりたい。