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プレキャストコンクリート型枠による橋脚工事の実施

建設省土木研究所材料施工部機械研究室
 研究員
藤 野 健 一

1 はじめに
建設省総合技術開発プロジェクト「建設事業における施工新技術の開発」の中で研究された「プレキャストコンクリート型枠の設計施工技術の開発に関する研究」の成果に基づき,平成7年3月に石川県河北郡において試験フィールド制度を活用して厚肉型プレキャストコンクリート型枠工法の試験施工が実施された。
本稿はその設計・施工について紹介を行うものである。

2 厚肉型プレキャストコンクリート型枠工法
厚肉型プレキャストコンクリート型枠工法(以下本稿では「プレ型工法」という)は,一般のプレキャストコンクリート型枠工法と同様に,構造物の外壁をコンクリート製の型枠で構築した後,内部に二次コンクリートを打設する工法で,以下の特徴を有する。
・任意の形状・大きさで製品を製作し,構造物を構築することが可能
(製品の標準化や生産ロットの増大)
・製品に利用するコンクリートの品質向上がもたらす構造物の耐久性向上
また,プレ型工法特有のものとしては,
・型枠製品自体に構造鉄筋を含む(鉄筋接合作業がある)
・型枠部材と二次コンクリートの打継面にシャーコッター,ジベル等を配し,応力伝達を行う。
したがって,プレ型工法においては,鉄筋作業の合理化やプレキャストコンクリート型枠部分の構造部材としての評価など,他のプレキャストコンクリート型枠と比較して有利な面を有する。

3 設 計
今回の試験施工の対象橋脚の構造図および型枠配筋図を図ー1,2に示す。2径間連続桁で水平断面が2.5m角の正方形となる。
当初の設計では井形状のスターラップが配されていたが,施工性を考慮してこれをなくし,配力筋で強度を補完するものとした。また,橋脚が小型形状であったため縦方向の分割をなくし,プレキャスト型枠の形状は箱形とした。
鉄筋の継手には図ー3に示すモルタル充填式継手を採用した。このため,コンクリートのかぶりは継手のスリーブから表面までで設計を行っている。

4 製 造
プレ型工法においては多数の主鉄筋をモルタル充填継手で接合することが必要である。今回の試験施工では72本の鉄筋を一度に接続する必要があった。また,プレキャスト製品はそのまま構造物の出来形に直結する。これらのため,プレキャスト型枠製品には高い精度での製造が要求された。
このほか,型枠相互の接続面の仕上げ精度やシャーコッターの成形,ジベル筋用金物の取付など,型枠製造においてはかなりの工夫が要求された。また,製造に当たっては,今回は縦打ちで2回に分けてコンクリートの打設を行った(写真ー2~5参照)。

5 施 工
今回の施工では,現場で施工されたフーチングとプレキャスト型枠製品を現場で接合したため,フーチング部の鉄筋位置の精度管理が重要だった。
図ー4に施工手順を示す。以下にこの手順に従って,施工内容と今回の試験施工によって得られた施工上のポイント等を紹介する。

なお,(1)から(5)まではフーチング部の施工を,(6)以降は型枠との接合に関する施工を述べている。2段目以降の接続は(6)以降の繰り返しとなる。
(1)アンカーフレームの設置
フーチング下筋設置後,アンカーフレームを設置する。アンカーフレームは立ち上げ筋の位置精度確保を行うもので,プレキャストコンクリート型枠とフーチングの接合の可否や構造物の出来形を決めてしまうため,その位置決めや鉄筋の固定,アンカーフレームの剛性については十分に留意する必要が認められた。
(2)立ち上げ筋の設置
アンカーフレームヘ鉄筋を挿入し,接合鉄筋の位置決めを行う。写真のようにU字形に切り込みをいれて施工性を高めたが,位置決め精度が落ちることが予測されたので,アンカープレートでそれを補完することになった。
(3)アンカープレートの設置
アンカープレートを接合鉄筋の上部に設置し,鉄筋の位置を高精度で管理する。また,これはコンクリート打設等による鉄筋のずれを防止する役目も果たしている。ミリ単位の精度で鉄筋の位置決めを行う必要があるため,鉄筋をプレートに合わせる場合には困難を伴うことも生じる。このため,アンカープレートを利用する場合は,その形状や設置方法について十分に検討を行う必要がある。
(4)コンクリートの打設
配筋後のコンクリート打設時には,アンカーフレーム周囲から均一に打設を行い,鉄筋の位置精度が失われないように,十分留意して進める必要がある(実際にフレームの剛性などが弱い場合にはセンチ単位で鉄筋位置が動くことが確認されている)。

(5)アンカープレート除去
養生後,アンカープレートを切断,除去する。
(6)ガスケット,スペーサ取付
プレキャストコンクリート型枠(一段目建て込みの場合はフーチング)の接合面にゴム製のガスケットとスペーサを設置する。プレキャスト型枠工法では,目地のうちモルタルが充填された部分を構造断面として評価するため,断面欠損を起こさないようにガスケットの曲がりなどに注意して設置する必要がある。
(7)プレキャストコンクリート型枠建て込み
工場で製造されたプレキャストコンクリート型枠をクレーンで建て込む。今回の施工においては,100t吊りのトラッククレーンを使用した。一回の設置は約20分程度で終了した。接合鉄筋のうち四隅の鉄筋については40mm長くし,接続ガイドとして利用した。これは,72本の鉄筋を接続するに当たって非常に貢献していた。写真に示すように,鉄筋を合わせただけでは設置精度が確保されないので,添え木を使ったり,測量を行ったりして出来形を確保する必要がある。
(8)継手へのモルタル充填
型枠建て込み後,鉄筋の接合のためにプレキャストコンクリート型枠の内側から継手へのモルタル充填を行う。充填は,一面一括方式で行ったため作業の合理化が図れた。

(9)ジベル筋取付
モルタル充填により,プレキャストコンクリート型枠の主鉄筋が接合された後,ジベル筋の取付を行う。今回の設計では,かなりの本数が必要となったため,取付作業には大変な手間を要した(最終的には,工場生産時にジベル筋を取り付け,製品の搬送を行ったため,現場作業を省略することができた)。
(10)二次コンクリート打設
プレキャストコンクリート型枠内に二次コンクリートを打設する。構造物に弱点を作らないように,型枠接合面と約50cmの差を持って二次コンクリート打設を行った。

5 まとめ
今回の試験施工を通じて,プレ型工法の実用性およびその将来性について確認・検証することができた。現在,調査結果のとりまとめを行っているが,二次コンクリート打設時の側圧や一段ずつ打設した場合のコンクリートの発熱については支障がないことが明らかとなった。一方,鉄筋の接合に要する位置精度の確保(工場製造,現場施工)や製品コストの低減,コンクリート打設回数の低減など,さらに改善する必要がある事項もわかった。

6 あとがき
平成7年度の兵庫県南部地震はコンクリート構造物等に対する諸基準の見直しを引き起こしている。本研究は災害以前から継続して実施してきたものであり,この見直しを考慮しなくてはならない部分を含んでいると考えられる。基本的な事項については,新しい基準に準拠して適用することによって実用に供することが可能であるが,見直し作業の結果に基づき,本工法の現場への適用をお願いしたい。
最後に,この工法は合理化施工分科会プレキャストWG(岩松委員長,魚本リーダ)の指導の下,㈶先端建設技術センター,民間企業13社(㈱大林組,鹿島建設㈱,佐藤工業㈱,清水建設㈱,大成建設㈱,㈱竹中土木,秩父小野田㈱,飛島建設㈱,西松建設㈱,日本国土開発㈱,㈱フジタ,不動建設㈱,前田建設工業㈱)の共同研究により開発されたものである。また,試験施工は建設省北陸地方建設局道路部道路工事課,金沢工事事務所の皆様の多大なご協力の下に進められた。関係各位に厚くお礼を申し上げたい。

参考文献
1)プレキャストコンクリート型枠の設計・施工技術の開発に関する研究共同研究報告書(Ⅰ),(Ⅱ),平成7年
2)一体型厚肉プレキャスト型枠の試験施工,セメント・コンクリートNo.582,PP76~83,藤野,米村,1995.8
3)倉見高架橋下部工事,日経コンストラクション9-8,1995,PP80~85,常田,吉田

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