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地上デジタル放送用河川防災情報提供システムの開発について
~九州地方整備局が文部科学大臣表彰(開発部門)を受賞~
房前和朋

キーワード:地デジ、データ放送、防災情報、TVCML、ソフト対策

1.はじめに

去る平成24年4月17日、「科学技術分野の文部科学大臣表彰」の表彰式が文部科学省講堂にて行われました。
九州地方整備局で開発した「地上デジタル放送用河川防災情報提供システム(以下、TVCMLシステム)」が、国民生活の発展向上等に寄与し、実際に利活用されている画期的な研究開発として、「科学技術賞(開発部門)」を受賞しました。
これは、「スーパーコンピュータ技術の開発育成」を手掛ける富士通など大企業や研究機関と並び、わが国を代表する技術開発の一つとして表彰されたものです(写真.1)。
この技術開発では、NHKの全面的な技術協力や東京大学防災研究所など、多くの方々のご支援、ご協力をいただいた結果であり、深くお礼申し上げます。


2.TVCMLシステムとは

TVCMLシステムとは、地上デジタル放送用に河川の防災情報を迅速(リアルタイム)かつ正確に報道機関に提供するシステムです(図.1)。
九州地方整備局以外でも、いくつかの県等でデジタルテレビの「データ放送」用防災情報提供の試みが行われています。
しかし、こうした防災情報提供はわずかな県でしか行われておらず、国民の生命を守る防災情報の提供に格差が生じていました。
また、情報の提供項目や品質、データの提供手法を定める「定義書」の解釈が異なり互換性に課題があるなど、県を跨る規模での防災情報を行うには不十分でした。
県が異なることにより防災情報が提供されない、または提供の仕方が異なることは国民にとって不利益と考え、九州地方整備局では全国に先駆け、九州全域の膨大な防災情報をリアルタイムかつ均質な品質で提供することを目的とした、TVCML定義書の作成及びTVCMLシステムの開発を行いました。

TVCMLシステムは、九州全域の国土交通省・各県の水位・雨量観測所(約2,000観測所)の10分データ等の膨大な情報を、地デジのデータ放送に最適な形式にリアルタイムで変換し、また不足している情報を補い、安定して報道機関へ提供する能力を有しています。


3.TVCMLシステムの普及

九州地方整備局ではNHK(東京、福岡)のご協力をいただき、平成22年2月に九州地方整備局版TVCMLシステムによるデータ放送に向けた試験運用を開始しました。
この九州地方整備局版TVCMLシステムによって提供された防災情報を用いて、全国に先駆け平成22年7月にNHK総合のデータ放送にて、九州全域を対象に放送が開始されました。
また、その完成度の高さから、NHKと国土交通省本省間で協議が行われ、九州地方整備局版TVCMLシステムを正式に国土交通省のTVCMLシステムとし、NHKにて全国で放送することが決定しました。
速やかに各整備局等でTVCMLシステムの
整備が行われ、平成24年4月には首都圏を含む40都道府県・約1億人以上にTVCMLシステムを用いた防災情報が、NHK総合のデータ放送にて放送されています(図.2)。残る7県についても、本年度出水期中には放送が開始される見込みとなっています。
このように短期間で、日本全域を対象とする河川防災情報をリアルタイムかつ正確に「地デジ」のデータ放送で提供するという非常に困難な取り組みを、NHKと国土交通省が協働し、成し得たことは本当にすばらしいことと考えています。
また、単に放送するだけではなく、地デジ放送画面は、1都3県を除きほぼ同一となっていることも特徴です
これは国土交通省が日本国全域でほぼ同等な項目・品質で防災情報を提供し、NHKが多くの地域でほぼ同等な画面・操作で放送を行うという、行政と報道機関が国民により良い防災情報を提供する目的で協働した結果だと思います。
今後は、より迅速かつ正確に防災情報の提供を行うとともに、予報・警報等の提供する情報項目を充実させたいと考えています。

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