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九州管内の幹線道路整備計画等について

建設省九州地方建設局
道路計画第一課長
大 井 健一郎

1 地域の現状と整備の方向
九州地方は豊富な国土資源や海洋資源,温暖な気候に恵まれ,今後の発展の可能性が極めて高い地域である。しかしながら,域内を結ぶ高速交通体系の整備の遅れ等により,南北に加え,東西方向の発展の差異が生じていることや,離島,半島など地理的,自然的制約下におかれた地域が多いことなどから,域内の一体的かつ均衡ある発展が課題となっている。
また,九州は高度成長期を通じて大幅な人口流出を果たしたこともあり,かなりの地域が過疎地域の指定を受けており,人口内訳を見ると,九州の老年人口比率は14.3%(全国12.1%)とかなり高い値を示している。
産業面では近年,IC産業を中心とする先端技術産業の定着とテクノポリス計画の進展,構造不況からの立ち直りや産業構造の転換(ソフト化),さらには大手資本,地場資本を巻き込んだリゾート開発といった新しい方向が見られるものの,食料基地九州を支えてきた農業においては,米の生産過剰,貿易の自由化問題を背景として,その根幹を大きく揺さぶられつつある。
一方,昭和40年代後半からの人口,産業の地方分散化傾向は,九州においても人口・産業の定着を促したが,近年東京圏への再集中へと変換しており,中央との社会経済格差も拡大傾向にある。
このため,今後の方向としてアジア太平洋地域との地理的近接性や多彩な自然,豊富な歴史的文化遺産等,九州の地域特性を最大限に生かした個性的な地域づくりを促進し,既成の大集積地に過度に依存することなく,地域主導により環境と調和のとれた地域づくりを進め,自律的な経済圏を確立することが重要であり,そのためには,広域的な幹線道路網の整備が不可欠と考えている。

2 道路整備の現況
九州地方の道路網の骨格をなす高規格幹線道路網の整備は着実に進められており,供用延長については全国で14,000kmの約38%が供用されているのに対して九州では,全体延長約1,500kmの約41%にあたる616kmが供用されている。しかしながら,九州の東沿岸,北西沿岸等では高速道路が未整備であり,地域経済発展の阻害要因となっている。

高規格幹線道路網と一体となって幹線道路網を形成する一般国道,県道の整備についての九州と全国の比較では,九州の整備率は,指定区間を除く一般国道(県および政令指定市管理)と主要地方道で全国よりかろうじて上回っているものの,その他においては全て下回っており,特に一般国道指定区間の整備率が36.2%と,全国平均の49.7%に比べて大きく下回っている。

また,図ー3に見られるように,都心部のDID地域内の混雑が著しくなってきており,このことは,都心部の交通集中に道路整備が追いついていない状況を示している。

九州の一般国道は,図ー4に示されるように,全国に比べても,1車線の狭幅員道路の占める割合が高く,また,4車線以上の広幅員道路は,全体の約8%しかなく,整備の立ち遅れが目立っている。

3 道路利用の現況
九州における機関別輸送は,貨物のトンベースでは,全国と比べて海運の比率が幾分高いものの全体では自動車のシェアが圧倒的に高く,図ー5に見られる様に,昭和45年と平成元年との比較でも自動車の役割がますます増加していることがうかがえる。

品目別輸送量の機関別分担を見てみると,貨物の品目によって自動車利用と鉄道・船舶利用とにはっきり分化しており,生鮮食料品や日用品については,自動車輸送の利便性により,ほぼ100%のシェアとなっている。

視点を変えて,私達が一日の生活でどれだけ道路に頼っているかということを,福岡市在住のみち子さんという女性を仮に想定して,詳しく調べてみると,表ー2の様な結果となり,特に食品について,合計約3,000kmもの輸送を道路によって行われている事が判った。

4 道路整備の方針
平成5年度から始まる第11次道路整備五箇年計画に向けて,多くの人の意見を各種懇談会等で聞きながら道路整備の方針を検討して来たものであり,①生活者の豊かさを支える道路整備の推進,②活力ある地域づくりのための道路整備の推進,③良好な環境創造のための道路整備の推進,の3本の柱を立てて,計画,事業を進める事としている。
(1)生活者の豊かさを支える道路整備の推進
くらしの利便性を向上させるために総合的な渋滞対策を推進すると共に,公共交通機関の活用を支える道路整備を進める。エネルギー効率からは大量輸送機関と自動車は,図ー7の中京圏の例に見られる様に地域によっては大差ない。この為,大量輸送機関も道路と一体となった整備が必要であり,「モーダルミックス」の施策を進める事が大事である。

九州は全国でも地形,地質が道路にとって厳しい事から,災害による通行止めも多く,一般国道に限っても,年間の通行止め時間は延べ5万時間を越えている。これらに対して安心して通れるネットワークを作る事と共に,交通事故に対しても安全な幹線道路網の整備を進める事としている。

また,高齢者や身障者が安心して通行できる,エレベーター付き立体横断施設(一般国道3号,福岡市東区)等の整備に務めるとともに,沿道への車乗り入れ部での歩道の切り下げの改善を図るなど快適な歩行環境の整備を推進する。
市街地における駐車場の整備とともに,自動車利用者のための「たまり空間」として,一般道路に休憩施設を計画的に配置する。その際,地域の状況に応じ,地方公共団体等の設置する郷土資料館等の地域振興施設と連携し,「道の駅」として地域交流の核の形成とサービスの高度化・多機能化を図る。平成5年度には整備の為の検討,調査を実施する事としている。

(2)活力ある地域づくりのための道路整備の推進
九州の均衡ある発展を図り,魅力と活力のある21世紀の九州づくりの基礎としては,高規格幹線道路網およびこれらと一体となって機能する幹線道路網の整備を推進する事が必要である。
平成4年4月での九州内の高規格幹線道路供用延長は616kmで計画延長の41%となっている。平成4年度中には,これに加えて,九州横断道の別府大分間,西九州自動車道の福岡前原道路が供用開始される。第11次道路整備五箇年計画内には図ー11に示す人吉ーえびの間,日田一湯布院間が供用開始され,従前よりの九州縦貫,横断自動車道がつながり,九州の7県が高規格幹線道路網で初めて一体となって連結される事となる。これと同時に西九州自動車道,南九州西回り自動車道も各々,起点および終点側より,新規供用および延伸を図るものであり,その整備効果を見る為,時間距離を図で表わすと,図ー13のようになる。長期では九州内の高規格幹線道路網が全線完成すると,図ー14のように九州がより一体的な地域となるものである。

また,高規格幹線道路網と一体となって,地域の連携による「地域集積圏」の形成,集積圏相互の交流の促進,交流拠点等との連結を図る,地域高規格道路を軸とした道路ネットワークの整備を推進する。

(3)良好な環境整備のための道路整備の推進
地球温暖化防止の観点から,バイパス整備による渋滞解消,輸送の効率化等により,燃料消費を削減し,CO2排出量の抑制を図る。また,自然環境との調和,良好な生活環境の保全,形成を図る。

5 おわりに
九州の振興を図り,知識集約型,高付加価値型の先端事業,学術研究機関の誘致,リゾートの推進等を行う為には,主要幹線道路ネットワークの整備が不可欠であり,これらの整備促進,早期完成の為には,今後とも道路投資額の大幅な拡大,財源の確保が必要であり,関係各位の一層のご支援,ご協力をお願いする次第である。

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