国道3号鳥栖拡幅八坂橋 における
上下線分割施工橋梁の一体化について
上下線分割施工橋梁の一体化について
国土交通省 九州地方整備局
佐賀国道事務所 工務課
建設監督官
佐賀国道事務所 工務課
建設監督官
草 野 裕 一
キーワード:既設横締め位置、既設桁キャンバー、施工ヤード、安全対策
1.はじめに
国道3号鳥栖拡幅は、佐賀県鳥栖市姫方町~酒井西町間の著しい交通渋滞の緩和と交通安全の確保を目的とした4 車線化の全長2.4kmの現道拡幅事業であり、八坂橋は事業区間の終点側に位置し、筑後川水系の大木川を渡河する橋梁である(図- 1)。
2.工事概要
国道3号鳥栖拡幅は現道拡幅事業であり、八坂橋においては、Ⅰ期施工として上り線を令和3年度に施工完了し供用しているが、商工団地北入口交差点内にかかるため、Ⅱ期施工の下り線と一体化する必要がある。今回、Ⅱ期施工として下り線の施工及びⅠ期施工との一体化を行ったものである(表- 1)(図- 2)(図- 3)。
3.Ⅰ期施工の既設桁との接続における検討事項
3.1 既設桁との接続方法
Ⅰ期施工との接続には、既設部の施工時に設置された横締めPC鋼材にカップラー接続具を用い接続する(図- 4)。
3.2 主桁製作時の着目点
Ⅰ期施工部の既設桁との確実な接続をするため、既設桁の出来形を事前に測定する必要があり、Ⅱ期施工の主桁製作に反映させることが重要であった。
1)既設桁の正確な横締め位置
2)既設桁のキャンバー(そり)量
3.3 既設桁の出来形測量方法
主桁製作の着手時には、下部工の施工中であったため、既設桁を直接計測することができなかった。そのため、3D地上レーザースキャナを用い横締めPC鋼材の位置や主桁の側面形状を測定した(写真-1)(写真-2)。
測定して得られた点群データから必要な位置情報を抽出し、出来形測量結果とした(図- 5)。
また、横桁毎に横締め位置の測定も行った(図- 6)。
レーザースキャナーで得られた横締め位置と設計位置と重ね合わせ、出来形図の作成を行った(図- 7)。
同様に、主桁製作時のキャンバー(そり)量が横締め接続に影響することから、主桁架設時に既設桁のキャンバー(そり)量と合わせる必要があった。
点群データの主桁端部を直線で結び、主桁の中央部のキャンバー(そり)量を測定した。
それらの得られた出来形成果結果を基に、主桁製作時に横締めの位置及び、プレストレス導入後の主桁キャンバーを反映させ製作を行った。
4.カップラー接続による横締め
主桁架設後に、横締めケーブルを挿入し既設側の横締めケーブルとの接続を行った(写真-3)。
既設部の施工時に設置された横締めPC鋼材の定着具にカップラーをねじ込む(写真-4)。
接続が完了したカップラー接続具にシースを取付け、接続完了とする(写真-5)。
5.架設計画及び施工
主桁架設において、以下の1)~ 3)に示す施工条件が課題となった。
1)拡幅工事に伴う迂回した国道3号に近接する狭隘な施工ヤードでの架設桁組立(図- 8)。
2)架設桁を引出した手延機の解体。
3)120tクレーン及び、解体機材の仮置きによる一般通行車両の視界の悪化。
これらの課題について、以下の架設方法による施工計画を施工者である(株)富士ピー・エスより対策案が提示され、採用することとした。
1)手延機の組立を無くし、架設桁の組立延長を短くした。
2)架設用クレーンを120t → 360tへの能力アップにより、架設桁をクレーンで直接架設とした(写真-6)。
なお、セグメント桁を所定の位置に据え付けることで台車による引出しの手間が省け、3日程度の架設期間の短縮にも繋がった(写真-7)。
セグメント桁組立完了後に、360tクレーン、120tクレーンによる相吊り架設を行った(写真- 8)。
6.安全対策
架設中は気象情報サイトとアラームメール機能を備えたリアルタイムの安全ツールを使い、風速の予測確認を行った。10分間の平均風速10m/sを計測時は、一斉メール配信の通知により架設作業を一時中断させる対策を行った。
供用中の国道3号との境界に設置の仮設ガードレールより施工側の位置に、レーザーバリアシステムを設置し、桁が制限範囲内に侵入した場合は、クレーンオペレーターと玉掛け合図者に回転灯とブザーで警告するとともに、見張員を設置し一般車両への注意喚起も併せて行った(写真-9)。
なお、クレーン旋回時に主桁の荷ぶれを抑制するため、主桁の両端部に介錯ロープを設置した(写真-10)。
7.おわりに
国道3号鳥栖拡幅における供用中の上り線に新設の上部工(下り線)を一体化する工事であった。
八坂橋(下り線)の桁製作については、3D地上レーザースキャナーを用い既設桁の横締め位置・キャンバー(そり)量を反映し、狭隘な施工ヤードにおいては、使用機械の変更及び架設計画を工夫した。
また、一般車両の通行する道路に近接した主桁架設に対する安全対策を実施したことで無事故かつ施工の効率化を図ることができたと考える。
最後に、本工事に際し施工者である(株)富士ピー・エスの工事関係者の皆様にお礼を申し上げるとともに、本報告が今後の橋梁工事の参考になれば幸いである。