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宮崎市高千穂通りにおける道路空間利活用に向けた社会実験
について~居心地が良く歩きたくなる空間を目指して~

宮崎県 県土整備部 都市計画課
街路・まちづくり担当 主幹
三 角 礼 彦

キーワード:宮崎市高千穂通り、社会実験、道路空間利活用

1.はじめに
宮崎市中心市街地のシンボルロードである高千穂通り(主要地方道宮崎停車場線)は、宮崎市の陸の玄関口である「JR宮崎駅」と、商業集積地である「橘通り」の2 つの拠点を連絡する幹線道路であり(図- 1、写真- 1)、延長700m、道路幅員40m(うち、片側自歩道部11m)の4車線道路である(図- 2)。

図1 高千穂通り位置図

写真1 高千穂通り

図2 高千穂通り横断図

また、沿道にはオフィスビルが建ち並び、沿道施設への荷捌き車両の駐停車や路上駐輪等が存在している。
令和2年度秋の宮崎駅西口の民間開発(写真- 2)や来街者の回遊性向上に向けたグリーンスローモビリティ(ぐるっぴー)の運行(写真- 3)開始にともない、地域の民間事業者を中心に中心市街地の活性化の機運が高まっており、出張販売やイベント開催などにぎわい空間としての新たな利活用が期待されている。

写真2 宮崎駅西口でのイベント開催状況

写真3 グリーンスローモビリティ

本稿では、宮崎河川国道事務所のご支援のもと、宮崎県と宮崎市が実施主体となり、令和3年度から令和4年度までの2ヶ年にわたり実施した道路空間をにぎわい空間として活用する社会実験について紹介する。

2.社会実験の概要
(1)実験課題
高千穂通りの歩道部を新たににぎわい空間として活用する際に生じる以下の4 項目の課題に着目し、実験を実施した(図- 3)。
①にぎわい創出
歩道部でのにぎわい空間の使い方
②荷捌き
荷捌きとにぎわい空間の重複
③駐輪抑制
路上駐輪とにぎわい空間の重複
④自転車通行空間
歩道部での自転車、歩行者とにぎわい空間の重複

図3 実験課題のイメージ図

(2)実施内容
①にぎわい創出
【目的】
居心地が良く歩きたくなる道路空間を創出するため、高千穂通りの自歩道空間を活用した社会実験を実施し、効果を検証した。
【概要】
協議会(国、県、宮崎市及び民間にて構成)担当者とコーディネーターが協力し、NTT前付近において、月1回程度の日常型イベントを6日間、3日間連続の日常型イベントを1 回開催した。 
また、南側全線において、週末の午後など日時の限定を想定するものとして、大規模なにぎわい創出の取組(非日常型イベント)を1 回実施した(図- 4、表- 1、写真- 4)。
【検証方法】
・にぎわい空間創出前後に歩行者数を調査
・占用者や来街者へのアンケート
【評価基準(実験を検証する上での目標値)】
・歩行者数3割増
・占用者、来街者満足度4以上(5段階評価)

図4 活用エリア

表1 にぎわい創出実施内容

写真4 昼のイベント(左)と夜のイベント(右)

【検証結果】
実験時の歩行者数は全般的に増加しており、通常時の3 ~ 4倍となる場合もあった。
この結果から、高千穂通りは、にぎわい創出の取組を実施すれば、来街者の増加が見込める環境であることが判った。
また、アンケート調査では、満足度が4.4 ~ 4.8となり、当初の目標4.0 を上回った(表- 2)。

表2 歩行者数と満足度

その一方で、占用者からは、来場者が多すぎても公道であることから来街者が歩道に滞留し、歩行者や自転車と錯綜する場面が見られ、安全性を危惧する意見があった。

②荷捌き
【目的】
停車帯において、荷捌き車両とイベント設営車両が重複することから、荷捌きエリアの集約によって、荷捌きエリアとにぎわい空間との棲み分けの可能性について検証した。
【日時】
令和4年7月12日・13日、8月5日
【概要】
高千穂通り南側の停車帯に荷捌き集約エリア
を3 箇所(L= 20m/1 箇所)設置した(図- 5、図-写真5)。
【検証方法】
・利用実態調査
・ドライバーへのアンケート調査

図5 荷捌き集約エリア配置図

写真5 荷捌きスペース利用状況

【検証結果】
集約実験では、利用した割合が高い集約箇所(エリア②:平均58%)と低い集約箇所(エリア①:平均12%)があり、各エリアとも実験が進むにつれ集約箇所の利用割合が高くなった(図- 6)。
この結果から、集約箇所の設置には、荷捌き業務の実態に応じた集約箇所の設定をすること及び集約箇所の周知が必要であることが判った。
また、アンケート調査では、集約エリアの利用について運送事業者の約5割から「業務に支障を感じなかった」との回答があり、荷捌きエリアの集約可能性が確認できた。

図6 集約箇所利用率

③駐輪抑制
【目的】
にぎわい空間と重複する路上駐輪の解消
【日時】
令和4年10月11日~ 11月10日
【概要】
高千穂通り沿道近隣に仮設駐輪場を3箇所設置・運営した(図- 7、写真- 6)。
その際、路上駐輪が多い場所に誘導看板を設置し、仮設駐輪場への駐輪を促した。

図7 仮設駐輪場配置図

写真6 路上駐輪状況(左)と仮設駐輪場設置状況(右)

【検証方法】
・仮設駐輪場の設置前後に路上駐輪台数を調査
【評価基準】
・路上駐輪台数の20%減少
【検証結果】
仮設駐輪場の利用台数は、459台/月(15台/日)、利用率は15.3%となり、実験期間中における路上駐輪自転車の減少台数は、10.9%に留まった。(平日:平均102台→平均90台、休日:平均54台→平均49台)
この結果から、仮設駐輪場が路上駐輪エリアから遠いと利用される見込みが低いことが想定される。そのため、仮設駐輪場の設置については、設置場所の再検討及び利用者への周知が必要であることが判った。

④自転車通行空間
【目的】
自歩道を活用したイベント開催時等における安全性・走行性の確保に向け、自転車通行機能の停車帯等への移行・運用の可能性について検証した。
【概要】
停車帯等での自転車通行について、双方向、片方向、矢羽根の設置など3 種類の走行実験を実施した(写真- 7、写真- 8、写真- 9)。

写真7 双方向(左)と車道の混雑状況(右)

左 写真8 片方向 右 写真9 矢羽根の設置

【日時】
双方向 令和3年12月5日
片方向 令和4年11月9日
矢羽根 令和4年10月11日~ 11月8日
【検証方法】
・自転車通行空間の自転車交通量を調査
・自転車利用者アンケート
【評価基準】
・自転車通行利用率30%
【検証結果】
・双方向実験は、自転車通行量が141台/289台(休日)、利用率が48.8%であった。
 利用者の7割が「走りやすい」との回答であったが、車道を1車線減らしての走行実験であったことから、追越車線にて車両による混雑が見受けられた。
・片方向実験は、自転車通行量は97台/144台(平日)、利用率が67.3%であり、利用者の9割が「走りやすい」との回答であった。
・矢羽根実験は、自転車通行量が11台/549台(平日)、16台/500台(休日)、利用率が2.0%(平日)、3.2%(休日)であった。利用者からは、停車帯でのバス・トラックとの混在や走行可能な広い自歩道があることを理由に「矢羽根は走行しにくい」との回答があった。
 また、バス・トラックなど関係者の約6割は、自歩道の走行を希望していることが判った。

3.おわりに
社会実験の結果、「にぎわい創出」では、歩行者と自転車との安全確保、「荷捌き」では、エリア毎の利用実態に応じた対応、「駐輪抑制」では、エリア毎の駐輪対策への対応、「自転車通行空間」では、自転車通行帯の位置設定によって、通行時の安全確保や車道の混雑発生など様々な課題が明らかとなった。
オフィス街である高千穂通りの道路空間が利活用され、「居心地が良く歩きたくなる空間」となることを目指し、国、宮崎市、民間などの関係機関から意見を伺いながら今後も課題解決に取り組んでいきたい。
最後に、社会実験の実施にご尽力いただきました高千穂通り周辺地区の道路空間利活用協議会の皆様に深く感謝申し上げたい。

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