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平成26 年度版 九州地方整備局制定の「九州地区における
土木コンクリート構造物設計・施工指針(案)」について
甲斐靖志

キーワード:コンクリート、設計指針、品質向上

1.はじめに
コンクリート構造物については、新幹線トンネル覆工コンクリート剥落や高架橋の床版コンクリートの塩害による劣化などコンクリート構造物の不具合が相次いで顕在化し、コンクリート構造物の品質向上が求められている。そこで九州地方整備局においても、土木コンクリート構造物の耐久性を向上させる観点から、平成14 年に学識者等で構成する「九州地区長寿命コンクリート構造物検討委員会」を設置し、当該指針(案)の前身となる「九州地区における土木コンクリート構造物の設計・施工指針試行(案)」を策定するとともに、モデル現場での試行検証を実施・反映させるなどして、平成20 年度に国土交通省のコンクリート構造物に関する各種規定、基準、指針あるいは土木学会コンクリート標準示方書等を補完する「九州地区における土木コンクリート構造物の設計・施工指針(案)」(以下「本指針(案)」という。)を策定し、九州地方整備局で発注する設計業務において本指針(案)の活用試行を行ってきたところである。
そのような中、コンクリート標準示方書が2012 年制定版として改訂されたことなどを受け、平成26 年4月に本指針(案)を改定した。本指針(案)は、「コンクリートのひび割れ対策」「高密度鉄筋対策」「第三者を交えた専門評価機関の活用」「代替骨材の取扱い」等を特徴として編集されており、今後の土木コンクリート構造物の建設システムや維持管理システムの理論的なあり方を明確にすると共に、具体の実施対策が定められている。今回の改訂においては、大幅に改訂されたコンクリート標準示方書と整合を図ったと共に、試行業務において明らかとなった改善、工夫
すべき事項あるいは使いやすさや間違い防止等をも考慮した記載内容となっていることから、その概要を以下に紹介する。

2.本指針(案)の構成及び特徴
この指針の全体構成(図ー1参照)及び具体的な特徴としては以下の通り。
①構造物の建設プロセスを示すことにより、業務担当を明確にし、構造物建設における責任の所在と監督・検査行為の実施体系を示した。
②工事着手前には、発注者、設計者、施工者による三者連絡会(工事監理連絡会)を開催し、これを有効に活用し、様々な問題について協議、調整する。
③高度な技術を要する場合や三者での解決が困難な場合は、専門評価機関を交えて問題解決を図る(図ー2参照)。
④工場製品は、積極的に使用すること。
⑤配筋状態や施工環境を考慮した最小スランプ(コンクリートを円滑かつ密実に型枠内に打込むために必要なスランプの最小値)を設定できる。
⑥初期ひびわれ(温度ひびわれ,乾燥収縮ひびわれ)に対して、その安全性を照査する設計段階から耐久性能についても検討すること。
⑦設計段階において維持管理を考慮した検討を行う。

3.本指針(案)の主な改訂点
1)「2.2 コンクリート構造物の性能照査」
2.2.4 構造物の耐久性照査
①中性化……………………………… 本指針:2-6
●中性化速度係数の予測値(αp)を削除
②塩害………………………… 本指針:2-8 ~ 15
●鋼材腐食発生限界濃度(Clim)の算出式が、セメントの種類毎に設定され、水セメント比の変化に対応
●鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値(Co)の算出式の変更
●塩化物イオンに対する設計拡散係数(Dd)の算出式を追加
●コンクリート表面における塩化物イオン濃度(Co)について、離岸距離10m 及び20 mの値を補間(図ー3参照)
●塩害に関する環境が厳しい場合については、W/C を0.45 以下等にする旨を追記
●コンクリートの塩化物イオン拡散係数(Dk)の算出式について、セメントの種類が追加拡充されたことへの対応
●「塩害に対する照査を満足する拡散係数およびかぶり判定図」を、水セメント比からかぶりを算出できる「塩害に対する照査を満足する水セメント比およびかぶり判定図」に変更(図ー4参照)

2)「2.3 初期ひび割れに対する照査」
2.3.1 一般… ………………………… 本指針:2-17
●初期ひび割れに対する照査が、温度ひび割れ照査に限定されているため、初期ひび割れ全般の記述に変更
●温度ひび割れに関する記述であるため、「2.3.2 温度ひび割れの照査」に移動
2.3.2 温度ひび割れの詳細… …本指針:2-18 ~ 23
● 2012 年版の記述、現在の詳細実施状況等を踏まえ、記述内容を精査
●温度応力解析を実施するにあたり、2次元CP法は2007 年版、3次元有限要素法は2012 年版に準ずることを追記
●安全係数とひび割れ発生確率に関する解説図、解説表を追加(図ー5参照)
●温度ひび割れの対策として、リフト割りを変更する際の留意点を追記

3)「3.2 施工計画の検討」
3.2 施工計画の検討… …………… 本指針:3-4 ~ 5
●「施工計画の照査」は現状と馴染みにくいので「施工計画の検討」とし、「検討項目」「確認項目」「変更」について記述

3.3 コンクリートの運搬・受け入れ計画・受け入れ時の確認……………………… 本指針:3-5 ~ 6
●受け入れ時の確認について追記

4.その他の改善点
1)QAにわかりやすい事例の追加
張出し式橋脚における照査を例として、「①従来の基準に基づく照査」「②指針(案)及び手引書(案)に基づく照査」の基本的な流れを示した資料を追加した(図ー6参照)。

5.おわりに
現在、我が国では中央自動車道笹子トンネルにおける天井板崩落事故等を踏まえ、社会資本の的確な維持対策の一つとして長寿命化に向けた取り組みが必要になっており、本指針(案)の活用によって九州地区で建設する土木コンクリート構造物を計画的かつ効率的に品質の向上を図るため、構造物の計画段階において考慮すべき性能や計画段階から施工段階までの流れの中で実施すべき対策など、コンクリート構造物を建設するうえで実施すべき事項を示すことで、コンクリ-ト構造物の長寿命化対策に努めているところである。
今後も引き続き、さらなる適用範囲の拡大などを順次進めていく予定であり、本指針(案)が有効に活用され、より一層の社会資本整備の充実に寄与することを望む次第である。
おわりに、本指針(案)の改訂にあたりご尽力いただいた濱田委員長(九州大学大学院工学研究院教授)、各委員ならびに関係機関各位に感謝申し上げると共に、本指針(案)の策定において立ち上げの段階から永きにわたり委員長としてご指導、ご尽力いただきました故 松下博通様(九州大学名誉教授)に心から感謝申し上げます。

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