福岡県における今後の社会資本整備のあり方
福岡県 県土整備部長 増田博行
社会資本整備は、県民の安全で安心な生活の確保、経済活動や産業の育成、都市機能の広域的な相互補完等を支える重要な社会基盤であり、地方が成長戦略を描くためにも不可欠なものであると考えております。
福岡県では、県民一人ひとりが福岡県に生まれ、生活してよかったと実感できる「県民幸福度日本一」を目指して、県民生活の「安定」「安全」「安心」の向上に取り組む新しい「福岡県総合計画」を、平成23年度末を目処に策定しております。この計画の実現のためには、さまざまな県民生活を支える良好な交通基盤の整備が不可欠であり、さらに、道路交通、鉄道交通、海上交通、および航空交通が連携を図り、快適な交通環境を構築することが重要です。そのためには、交通関係者(県民、交通事業者、行政)が同じ方向に向かって交通施策を進めることが必要であるため、「新たな交通ビジョン」についても総合計画と同時に策定を進めているところです。
さて、本県は、昨年3月に全線開通しました九州新幹線・鹿児島ルートや、平成26年度までに県内区間すべてが供用予定の東九州自動車道など、高速交通ネットワークが発達しております。
また、これらと一体となって機能する福岡・北九州都市高速道路、有明海沿岸道路などの地域高規格道路も整備が進んでおりますが、県内各地に立地する自動車、IT関連、バイオ、リサイクルなど各種産業の発展を支援し、自立ある地域の発展と地方部における定住・交流の促進を図るためには、国道322号や県道筑紫野古賀線などの幹線道路ネットワークの整備が十分とは言えず、これらの整備を計画的に進めることが必要です。
また、これからの日本の発展には、成長著しいアジアの活力を取り込み、産業の国際競争力強化を図ることも不可欠です。本県では、国が新成長戦略で位置づけている7つの戦略分野の中で、「グリーン・イノベーション」、「アジア経済戦略」を強力に推し進め、本県経済の活性化を図るとともに、わが国の成長を牽引する目的で「グリーンアジア国際戦略総合特区」の申請を北九州市、福岡市、両政令市と一体となって行いました。この特区構想の目標の一つとして、「東アジア海上高速グリーン物流網と拠点の形成」を掲げています。
具体的には、韓国や中国の主要都市まで約1日での輸送が可能で航空輸送に遜色ないスピードでありながら、低コスト、かつ、低環境負荷である国際RORO船を活用した海上高速物流網の構築と拠点の形成を目指しております。この目標実現のため、昨年秋の「日本海側拠点港」の選定において「総合的拠点港」となった博多港、北九州港をはじめ、県が管理する苅田港、三池港、両重要港湾を含めた連携や機能強化の推進、利用の促進を図ってまいります。
先の東日本大震災では、社会資本整備が持つ最も重要な使命の一つとして、「国民の命と暮らしを守る」ことが改めて強く認識されたところです。
本県でも、梅雨前線や台風がもたらす集中豪雨、近年多発傾向にあるゲリラ豪雨などにより大きな被害を幾度となく受けております。このため、再度災害防止や災害予防のための河川事業を推進するとともに、人命に直結することが多い土砂災害の予防に資する砂防事業の着実な推進や、高潮対策、道路防災事業の推進が重要かつ不可欠であり、これらの整備を計画的に進めるとともに、昨年の国における検証作業により事業継続の対応方針決定がなされた五ヶ山ダム、伊良原ダムについても、平成29年度までの完成を目指して計画的な事業推進に取り組んでおります。
最後になりましたが、今年度当初予算から新しい交付金として、地域自主戦略交付金制度が導入されましたが、結果として、地方の社会資本整備に係る交付金の総額が大幅に減額されることとなり、継続事業の実施に支障を来しました。本県では、県単独費による公共事業関連予算を大幅に増やして対応することで、必要な事業費の確保を図りましたが、橋梁をはじめとした高度成長期に大量に建設された社会資本が、今後、一斉に更新時期を迎えることもあり、社会資本整備関連予算の総額確保は、ますます重要な課題となってまいります。事業の「選択と集中」を進めつつ、県民の安全で安心な生活を確保し、持続可能で活力ある県土づくりを進めるため、今後とも必要な社会資本の整備に努めてまいります。