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地域に密着した綱ノ瀬(つなのせ)川ふるさと砂防計画について
亀岡知志

キーワード:日之影町、綱ノ瀬川、検討委員会、ふるさと砂防事業

1.はじめに

宮崎県日之影町は県の北部に位置し、九州の百名山に名を連ねる傾山などの山々と、深いV字谷を形成した渓谷が大自然の美を織り成す、自然豊かな人口約4,200 人(平成25 年4 月1 日現在)の町である(図1)。 平成17 年度から、自然を活かした「森林セラピー事業」に取組み、平成19年4 月に「森林セラピー基地」としてグランドオープンし、「自然の恵みが人を呼ぶ里」をキャッチフレーズに、森の癒しを求め県内外から多くの人がウォーキングロード等の利用に訪れている。
 五ヶ瀬川水系綱ノ瀬川は、その日之影町の北に位置し、流域の地質は花崗岩で渓流沿いには河畔林が繁茂し、魚類はヤマメ、タカハヤが生息すると共にキセキレイ、カワガラス等の鳥類も生息する自然環境豊かな渓流である。
 当該渓流では、平成19 年8 月2 日~ 3 日に来襲した台風5 号の最大時間雨量113㎜という記録的豪雨により大規模な土石流が発生し、人家1 戸及び田畑が流出するという甚大な被害に見舞われた(写真1)。
 今後の降雨等により堆積土砂の流出や新たな渓岸渓床の浸食等が懸念されたため、災害関連緊急砂防事業及び特定緊急砂防事業により砂防えん堤2 基を平成24 年3 月末までに整備し、一定の整備効果を得ている(写真2)。
 しかしながら、下流域にはまだ不安定な巨石や土砂が残っており、今後の降雨等によりその土砂の流出や新たな渓岸渓床の浸食等が懸念されるため、災害防止を図りながら、地域の振興及び発展に寄与する『ふるさと砂防事業』(※)を地元や町と一体となって新たに計画することとした。

※『ふるさと砂防事業』とは?
地域社会の安全で快適な生活基盤づくりを推進するとともに、市町村の砂防事業に対する理解を深めるため、個々の自然・社会特性を考慮しつつ地域に密着した砂防事業を展開し、地域の発展に資することを目的としている。そのため、県が策定した砂防計画に基づく砂防事業を県知事の委任を受けた市町村長が実施する事業である。

  

2.綱ノ瀬川ふるさと砂防事業
2.1 ふるさと砂防計画の策定
上記流域のふるさと砂防計画を策定するにあたり、学識経験者、地元住民代表者及び関係自治体からなる検討委員会で審議を行い、ふるさと砂防計画を策定した。なお、策定にあたっては住民説明会を開催し、幅広く意見を収集し、それらを反映する形で砂防計画を策定している。
2.2 整備方針
当該計画の対象地である鹿(しし)川地区は、綱ノ瀬川の源流に位置し、九州山地を形成する連山の麓にあり、大自然と豊かな水に恵まれた集落である。
また、平成22 年4 月にオープンした「鹿川地区交流センターつりがね」は、登山客や小学生の宿泊学習、スポーツ少年団やプロバスケットボールチームの合宿などに利用されている。
このため、この地域の特色を生かした『ふるさと砂防事業』として、護岸や床固め等の砂防施設だけでなく、他の事業も利用して一体的に広場・休憩施設等を整備し、県内外からの交流人口増加に伴う当該地区の活性化に繋がる施設を整備する方針である。
検討委員会や地元説明会での討議を踏まえ、次の3 つのゾーンに区分し、ゾーンごとに以下のコンセプトで整備計画を策定した。

3.整備方針
3.1 水辺のふれあい親水ゾーン
1)整備方針(コンセプト)
人々が水辺にふれあうことにより、潤いと安らぎを得ることをテーマとするゾーン。

2)整備内容
下流部に位置するこのゾーンは、宿泊研修施設である「鹿川地区交流センターつりがね」から近いこともあり、さらに川幅が広いことから床固工にすべり台、直下流に河川プールを付加させて水辺で楽しむことのできるゾーンとして整備する。

  

3.2 渓畔(けいはん)セラピーゾーン
1)整備方針(コンセプト)
水辺の生物を保存し、人と生物のふれあいをテーマとするゾーン。

2)整備内容
中流部に位置するこのゾーンは、3ゾーンのほぼ中央に位置するため、駐車スペースやイベントさらにはオートキャンプが可能な広場を他事業で整備し、併せて休憩できるゾーンとする。また、綱ノ瀬川ではヤマメ等の渓流釣りや綱ノ瀬川周辺に生息するキセキレイ等の野鳥が生息するため、自然に親しむと共に動植物を観察体験することができるゾーンとして、低水護岸や根固工等を整備する。

  

3.3 砂防体験ゾーン
1)整備方針(コンセプト)
人々が清流のせせらぎや深い緑、爽やかな風を感じて散策眺望ができると共に、砂防事業の知識を深めることをテーマとするゾーン。
2)整備内容
上流部に位置するこのゾーンは、砂防えん堤の右岸に展望広場を設けて、管理用通路を整備し、砂防えん堤右岸の展望広場へ取り付く階段工を計画する。また、この展望広場には砂防事業啓発のための説明板の他に東屋、ベンチ等を設けて休憩、眺望できるゾーンとして整備する。

4.おわりに
今回の綱ノ瀬川ふるさと砂防計画を策定するにあたり、検討委員会の委員や地元の役員の皆様方には、遠いところから現地や役場に来て、活発な議論していただき、誠に感謝申し上げます。
今回策定したふるさと砂防事業と日之影町の他事業を密接に連携させながら、一昔前まで子ども達が遊んでいた綱ノ瀬川の清流を少しでも元に戻せるよう整備し、地域のにぎわいを取り戻す地域振興の一助になればと切に願っております。

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