佐々佐世保道路 弓張トンネルにて
アスファルトの全断面一括舗装を実施
アスファルトの全断面一括舗装を実施
九州地方整備局 山下正昭
1 .はじめに
一般国道497号 西九州自動車道は、高規格幹線道路網の一環として計画された道路であり、福岡県福岡市から佐賀県唐津市、伊万里市、長崎県松浦市、佐世保市を経由し佐賀県武雄市から長崎自動車道へ接続する一般国道の自動車専用道路である。
その一部区間となる佐々佐世保道路は(図-1)、長崎県北松浦郡佐々町を起点とし、長崎県佐世保市に至る全長L=9.0Kmであり、うち相浦中里IC~佐世保中央IC のL=5.0kmについては平成21年度末供用を目指して鋭意施工中である。その佐世保側に位置する弓張トンネル(全長L=2.6km)が今回の施工箇所となる。
2.トンネル内の舗装構成
弓張トンネルの舗装は、コンポジット舗装を採用している。コンポジット舗装は、下層部に剛性の高いコンクリート舗装版、上層部にアスファルト舗装を行い、耐久性の向上、走行性・快適性の確保と維持修繕が容易に行えるという特徴をもっている。
下層部のコンクリート舗装には、目地の無い連続鉄筋コンクリート舗装版、上層部のアスファルト舗装においては、基層部に防水層として砕石マスチック舗装、表層部に排水性舗装を行う。
舗装幅員全幅 W=8.24m
上層路盤:セメント安定処理路盤 t=20cm
連続鉄筋コンクリート舗装版 t=21cm
砕石マスチック舗装 t=4cm
排水性舗装 t=4cm
3.アスファルト全断面一括舗装の採用
1)トンネル断面の制約
アスファルトフィニシャーへの合材供給時には、ダンプトラックで搬入し、荷台を上昇させる必要があるが、図-3の様に道路センター附近でコンクリート舗装版から、トンネル天井壁まで約H=6.4mであり、2分割施工を行った場合、トンネル端部(片側車線)でのトンネル天井壁まで約H=5.0mしかないため、ダンプトラックの荷台を、半分くらいしか上昇させられないため、材料がおろせないという状況が発生する。
全断面一括施工により車道中央部での荷下ろしが可能となり、施工性および安全性が確保される。
2)施工ジョイントを少なくし防水機能向上
表層部に、排水性舗装を行うため極力目地を無くし、コンクリート舗装版への水の侵入を防ぐことが品質向上の鍵となる。しかし、2分割施工を行うと横断方向の日々の施工目地が発生し、将来の亀裂発生が懸念され遮水性が低下する可能性がある。
全断面一括施工(図-4)であれば縦目地を削減し、防水機能を高めることが可能となる。
3)設備関係業者施工場所の確保
H21年度末供用を控え、同時に施工を行っているトンネル設備等工事を含めた全体工程の調整を行う必要があるが、2分割施工で行った場合、常に材料搬入車両の通路を確保しなければならず、設備等の工事では片車線幅員しか施工ヤードがないため、移動式クレーンのアウトリガー張出し、駐車スペース等の確保が出来なくなる。
コンクリート舗装を実施した際は、養生期間以外は全面通行止めを行ったため設備等工事にとっては大きな制約となった。
全断面一括施工を行えば、終点側から起点側へ向けて舗装を行っていくため、舗装完了後の翌日には終点側坑口から車両を進入させ全幅員での施工スペースが確保出来きる(写真-1)。
以上のことにより、今回、コンクリート舗装版直上の砕石マスチック舗装において、全断面一括舗装により施工を行った。
4.全断面舗装施工時の注意点
1)連絡車両の通り抜けに制約
全断面施工のため(写真-2)、大型アスファルトフィニッシャー6m級に、左右各1mのアタッチメントを取り付けている。施工前から機械の組立を行い、調整・試験走行等で準備中から機械が車道上に止まることから連絡車でも施工箇所の通り抜けは出来ない。
日々の作業終了後は、路肩側へ機械を寄せ、全舗装幅員から機械の最小幅員の約6.5mを引いた残り約2mが通り抜けるスペースとなる。作業終了後であれば、小型車程度は問題ないが、大型車は通り抜けが困難である。
今回は、舗装施工時期に設備等工事の終点側坑口からの出入りが可能で有った為、支障はなかったが、通り抜けが必要な場合は事前に機械・材料搬入等の打合わせが必要となる。
2)ダンプトラック後退によるリスク
全幅員で施工することから合材運搬車両は通り抜けが出来ないため、後退して施工場所迄移動する必要がある。
運搬車両は約650~750mおきにある非常駐車帯にて転回し、施工場所まで後退することとなる。転回場所より施工場所までは、誘導員による合図にて後退する。
ダンプトラックと作業員の接触事故を防ぐため、今回、作業員の通行は監査路上の通行を義務づけ、車道上の作業員・歩行者を排除し、歩車分離をはかり事故防止に努めた。
5.全断面一括舗装の効果
平坦性試験の結果(σ)平均値0.9mm の値が出ており、基層部の出来形としては十分な結果が出せた。
工程については、2分割施工よりも6日の短縮となり、同時進行しているトンネル設備等の施工を止めることなく効率的な実施ができた。
6.おわりに
今回、遮水層となる砕石マスチック舗装施工に全断面一括舗装を採用し、舗設時の縦目地を無くすことでの品質向上、トンネル設備等工事と輻輳する中での工程短縮を実現できた。
今回施工は新設トンネルという条件のもとでの施工であり一定の成果を収めることが出来たが、全断面一括舗装の施工中は、全面通行止めとなるため維持修繕等、一般道路では採用不可能である。
新設道路においても、工事用道路として片側車線の通行を確保する必要がある場合、合材運搬車両の転回場所の確保等が出来ない場所では施工が困難となる。
社会的に路上工事の縮減が求められる昨今、工事の短期化と品質向上に向け、更なる工法の開発により新設舗装だけでなく維持修繕へも全断面一括舗装が活用されることを期待する。