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九州地方整備局におけるCALS/ECの取組について

国土交通省 九州地方整備局
 企画部 技術管理課
 課長補佐
川 野  晃

1 はじめに
国土交通省では,情報通信技術(IT)を活用し,公共事業分野の各業務プロセスにおいて,情報の共有・有効活用を図ることにより,公共事業の生産性向上やコスト縮減を実現するためにCALS/ECの取組を進めている。平成8年以降,建設,港湾,空港施設の各分野でCALS整備基本構想等に基づき取組まれて来たが,平成13年5月にこれらを統合した「国土交通省CALS/EC推進本部」を設置し,「国土交通省CALS/ECアクションプログラム(図ー1)」を決定しました。
九州地方整備局においても,アクションプログラムに基づき,平成15年度からはインターネットを通じて入札手続きを行う「電子入札」を全ての工事,業務において実施するとともに,平成16年度からは調査・設計・施工など,各業務プロセスにおける最終成果品を電子データで納品する「電子納品」を全ての工事,業務を対象とする等,様々な取組を展開している。
また,平成13年10月には,九州各県・政令市,各団体と,九州におけるCALS/EC実現のため「九州地方CALS/EC推進協議会」を発足させ,情報及び意見の交換を行っており,九州地方整備局におけるCALS/ECの取組を紹介する。

2 電子入札の取組状況について
電子入札は,従来は紙を用い,応札者が発注者側に出向いて行っていた入札手続きを,両者の間に「電子入札施設管理センター(e-BISCセンター)」を介在させ,インターネットを利用して電子的に一連の入札手続きが行えるようにしたもので,①入札に係る費用の縮減,②事務の効率化,③入札手続きの透明性・競争性の一層の向上等を目的として導入されたものである。
国土交通省では,平成13年度から一部の工事で試行を実施し,平成15年4月21日からは全ての建設工事と建設コンサルタント業務において全面実施して来たところである。九州地方整備局における平成15年度の実施状況は,運用当初は電子入札による応札数も若干低かったが,7月以降は電子入札による応札数も増え,着実に普及しつつある。(平成15年度の応札参加の企業数に対する電子入札率を図ー2に示す)

3 電子納品について
(1)電子納品の概要
電子納品は,CALS/ECの主な目的である各業務プロセスにおいで清報の共有・有効活用を図るための重要なツールである。
具体的には,調査・設計・施工における最終成果品を電子データで納品し,その納品データを後工程において共有・利活用することで,①業務の効率化,②省資源・省スペース化を図ることが可能となる。
国土交通省では,測量・地質・設計の業務において平成13年度全面実施,工事においては平成13年度に3億円以上の工事から試行を開始して以来,順次対象工事を拡大して来たが,平成16年度からは全ての工事が電子納品の対象となった。(図ー3)

(2)電子納品の要領・基準等
電子納品を円滑にし,そのデータを共有·再利用するには,一定のルールのもとで電子データを作成し,電子媒体に格納することが重要となる。これらのルールを定めたのが電子納品の要領・基準類であり,更に要領・基準類を支援するガイドライン(案)や手引き(案)等がある。現在までに図ー4に示す基準類の整備が進められ電子納品を実施する環境が整ったところである。

平成16年3月に改定された「電子納品運用ガイドライン(案)」では,工事や業務において電子納品に係わる要領・基準類の相互関係,電子納品の対象とする資料の範囲やデータ格納場所(フォルダ),特記仕様書への記載例,CAD図面データを引き渡す際の必要な作業,受発注者間の協議事項,電子データを用いた書類検査の実施方法等の留意事項について示されている。
また,図ー4以外に機械設備工事編の要領・基準も整備され平成16年7月から適用予定である。なお,これらの要領・基準・ガイドライン等は国土交通省国土技術政策総合研究所のホームページ(http://www.nilim-ed.jp/)から情報の取得が可能である。現在も,更に使い易いものへと改定等が進められている。

(3)電子納品の保管管理
九州地方整備局では,電子納品最終成果品を後工程で共有・利活用するため,平成13年度から各発注事務所で集めた電子成果品を九州技術事務所へ送付し,保管管理システムヘ登録している。(保管管理システム利用イメージを図ー5に示す)
登録にあたっては,単に保管を行うだけでなく共有・利活用のためのデータベースであることから,電子納品要領に沿った形で納品されているか登録前にチェックする必要があり,「電子納品チェックシステム」により電子成果品をチェックしている。
電子成果品チェックは,工事(業務)の受注者,発注事務所,技術事務所の各段階で行うルールとなっている。これまでの事例では,技術事務所の登録段階において登録できないケース(エラー発生)も若干見られ,発注事務所へ返送し修正作業(発注事務所→受注者へ)を依頼することとなるので,納品時及び受領時の受注者・発注事務所で確実なチェック実施が望まれる。
なお,平成16年度から全ての工事,業務で電子納品の全面実施が行われることから,今まで以上に保管管理するデータも多くなるが,国土交通省の発注工事(業務)内容は多岐にわたっていることから,技術事務所の保管管理システムヘ登録すべきもの,発注事務所のみで保管すべきもの等について情報共有・利活用の観点からの整理が必要と考えている。

4 施工中の情報共有について
施工現場においては,打合せ協議や段階確認時等に受発注者間で多くの書類が交わされる。これらを電子化し受発注者間で共有し利活用を図ることを「情報共有」と呼んでいる。
具体的には,従来,施工計画書や打合せ協議等の書類を紙ベースによるやり取りで行っていたものを,インターネット等を利用し情報を共有・蓄積するもので,①文書管理の効率化,②移動時間の短縮等を図ることができる。更に,電子納品のルールに沿った形でデータを蓄積すれば電子成果物作成の効率化にも繋がるものである。
現在,「情報共有システム」や「電子メール」を利用する方法があるが,九州地方整備局管内でも一部の工事において,これらの方式による実証実験を行って来たところである。今後は本格導入に向けて情報共有方式の統一化や機器整備を行い,普及を図りたいと考えている。(情報共有システムの活用イメージを図ー6に示す)

5 九州地方CALS/EC推進協議会について
国土交通省が平成13年5月に発表した「CALS/EC地方展開アクションプログラム(全国版)」を受けて,平成13年10月に「九州地方CALS/EC推進協議会」を発足させた。
協議会は,九州地方整備局,九州各県,政令指定都市,公団,公共事業関係業界団体,公益法人等の構成メンバーにより,CALS/EC整備のための情報や意見交換を通じて,九州地方の公共発注機関,受発注者等のCALS/ECの普及・推進に関する活動を行っており,平成14年6月に策定した「地方展開アクションプログラム(九州版),図ー7参照」に基づき,各機関への円滑な導入等を目指している。

6 おわりに
冒頭紹介したように,平成16年度は「国土交通省CALS/ECアクションプログラム」フェーズ3の最終年度にあたり,「電子納品」は全ての工事・業務において全面導入を図ったところである。
今後は,CALS/ECの目的である公共事業における「生産性の向上」や「コスト縮減」を実現させるため,これまでの実証実験の成果や課題等を踏まえて,CALS/EC普及・推進に向けた更なる環境作りや体制整備が必要と考えている。
九州地方整備局としても,先導的な役割が果たせるよう取組を強化するとともに,各受発注者に対して講習会や出前講座等の場も活用しながら普及に努めて参りたい。
受発注者の皆様には,これまでも多大な労力とご苦労をお掛けしたと思いますが,CALS/ECの推進のため今後とも協力をお願いする次第である。

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