九州技報 第29号 巻頭言
国土交通省 九州地方整備局
副局長 渡 邊 茂 樹
国土の総合的かつ体系的な利用,開発及び保全,そのための社会資本の総合的な整備などを任務とする国土交通省がスタートして半年が経った。九州地方建設局と第四港湾建設局が統合され,九州地方整備局として九州の地域づくりを広範に支援することとなった。従来の河川,道路,公園,港湾,空港,営繕の直轄事業に加えて,都市・住宅行政,建設業行政,補助金等の事務などが本省から委譲されて,線から面の行政となり九州の総合行政に責任を負うところとなった。
九州地域は,脆弱な国土特性による度重なる災害の発生,北部九州の頻発する渇水など安全で安心して暮らせる基盤整備が求められている。一方,アジアに開けた交流の拠点としての大きなポテンシャルを持った地域でもある。九州の社会資本整備は,未だ国内外に比して低く,災害への備え,交通ネットワークから居住環境に至る基盤施設の整備拡充が求められており,整備局への期待を重く受け止めているところである。
平成13年度予算においては,日本新生プランと九州の地域特性を踏まえ,さらには融合・連携施策の推進など統合のメリットを活かした分野への重点化を図っている。キーワードは,安全,IT,都市基盤整備,環境,少子・高齢化,生活基盤の充実である。また,公共事業費等予算の一括配分制度が導入され,これまで以上に地域ニーズをより的確に反映した地域密着型の住宅社会資本整備が可能となった。安全で安心して暮らせる基盤整備としての公共事業は,現下の経済情勢に鑑みて中長期的な安定成長を担保するうえでもその役割は大きい。その進め方においては,アカウンタビリティーの発揮,地域とのコミュニケーションと住民参加のもと,公共事業の効率的・効果的執行と透明性の確保が不可欠である。
公共事業を取り巻く最近の情勢として,入札契約の適正化の促進,現場における適正な施工体制の確保,技術開発と活用の促進,CALS/EC,建設コストの縮減等の施策の展開とともに,「グリーン購入法」や「建設リサイクル法」の施行にみられるように,建設現場での環境配慮が一段と重要になってきている。我々土木技術者に求められているのは,良いものを早く,安く,安全に,そして環境にやさしく造る技術である。土木生産システムの変革の時代であり,迅速にして柔軟な対応が必要である。
土木技術は言うまでもなく国づくり・地域づくりのための工学であるが,産官学の技術と地域の歴史風土と声を総合して,行って良かった,住んで良かった,生まれて良かった,そんな地域づくりを支える社会工学である。足腰が弱ると行動が鈍るように,社会資本という足腰が弱ると経済や文化という上半身も萎えてくる。土木技術者の使命は大きい。