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地方自治体等への災害対応支援の取り組み

建設省 九州地方建設局
 企画部 防災対策官
髙 口 友 久

1 はじめに
九州地方は,その位置,地形,地質,気象などの自然条件から,災害の発生しやすい条件下にあります。
このため,建設省九州地方建設局(九州地建)においては従来から地震や風水害,土砂災害といった災害による被害を軽減するため,河川改修,ダム建設,砂防,耐震構造物築造など計画的な国土保全施設の整備を行うとともに,施設能力を超えるような大規模な災害に対しては被害を最小限にくい止めるためのハード・ソフト両面での危機管理体制を確立する取り組みを行っています。
また,地方自治体等の所管施設において大規模な災害が発生した場合,地方自治体等と連携を図りつつ,技術協力や災害情報の収集,応急対策など広域的な災害対応支援を積極的に進めています。

2 災害対応支援の事例
九州地建においては,平成9年7月に発生した鹿児島県出水市針原川の土石流災害や熊本県八代郡坂本村の土砂崩落災害における災害対応支援を契機として,平成10年3月に九州各県の土木部との間で「大規模な災害時の応援に関する申し合わせ」を行い,災害対応の連携強化を図っています。

①支援事例1:平成11年7月福岡県那珂川町土砂流出災害
那珂川町上梶原地区に連続して設けられている3ケ所の農業用ため池のうち最上流部にあるため池(上ノ池)が,梅雨前線の活発な活動による豪雨により崩壊し,下流にあるため池(中ノ池)に土砂流として流れ込み,「中ノ池」の水が堰堤を越流,堰堤下流部が崩壊する被害が発生しました。更にその後の降雨により「中ノ池」および最下流にあるため池(新池)の崩壊による二次災害が発生する恐れがあることから那珂川町は「新池」の下流住民に対して避難勧告を行いました。
このような状況のもと,那珂川町から福岡県を通じて災害対応支援の要請があり,九州地建においては,情報収集および技術指導のための職員を派遣するとともに,夜間の監視のための照明車,最下流にある「新池」の水位を下げ安全確保を図るための排水ポンプ車の出動を行い,二次災害防止支援活動を行いました。

②支援事例2:平成11年9月熊本県玉東町落橋災害
菊池川水系木葉川に架かる久保田橋(玉東町道下町~小清水線)は9月中旬の集中豪雨および台風18号による降雨の影響により落橋しました。
この路線は近隣の1市3町の清掃センターや玉東町立福祉施設等へのアクセス道路および路線バスの運行路,通学路として地域住民の重要な生活道路であり,玉東町より緊急に路線の通行を確保するための応援の要請がありました。
この要請を受け,九州地建においては地域の生活道路の確保のため,「応急組立橋」を貸与することとしました。
「応急組立橋」は,久保田橋が復旧するまでの約9カ月間,地域住民の生活道路を確保する役目を果たしました。

③支援事例3:平成12年5月大分県別府市朝見川斜面崩落災害
別府市を貫流する朝見川においては,右岸斜面が崩落し,河道を約25m埋塞しました。河道埋塞地点左岸には温泉街,下流には別府市街地があり,梅雨期も間近く埋塞土砂を放置すれば出水時に堰上げが生じ,土石流の二次災害が発生する危険性が高いことから早急に流路を確保する必要がありました。
このような状況の基,大分県においては,流路を確保する工事の実施にあたっては,崩壊面が直立でクラックがあり,崩壊土砂を撤去することで二次災害の発生も想定されることから有人作業ではなく無人機械による作業が最良であると判断がなされ,九州地建が保有する「簡易遠隔操縦装置(ロボQ)」の貸与の要請がなされました。
本格的な梅雨シーズンを前に約2週間の作業で流路の確保を行なうことができました。

3 地方自治体等の支援要請のための手続き等
地方自治体等の所管施設に大規模な災害が発生または発生する恐れがあり,九州地建の保有する災害対策用機械・情報通信機器等による災害対応支援を要請する手続きとして,九州7県の土木部と九州地建との間で取り交わされた「大規模な災害時の応援に関する申し合わせ」に基づいて各県土木部を通じて九州地建に支援要請を行なうこととなりますが,緊急を要する場合には地方自治体等が直接,近隣の九州地建の出先機関あるいは九州地建へ直接要請することも可能です。

4 支援実施上の留意事項
地方自治体等の所管施設に大規模な災害が発生または発生する恐れがある場合,九州地建としては地方自治体等の支援要請に応じて災害対応支援を行うこととなりますが,これまでの支援活動を踏まえての留意事項として次のことがあります。
(1)九州地建が保有している災害対策用機械・情報通信機器等は九州地建所管施設の災害対応を第一優先としているため,人命に係わる災害や地域の活動に影響が大きいなど,災害発生の緊急性,重要性および災害発生状況等の判断を踏まえた支援の可否の判断となります。
(2)災害応急措置等支援に必要な費用については,支援機械の損料は無料ですが,運搬・設置撤去・運転操作および管理等の経費は原則として支援を受けた側の負担となります。
なお,詳しくは次に問合せ下さい。
 九州地方建設局企画部企画課 TEL092-471-6331

5 あとがき
近年,時間雨量100㎜程度の豪雨が記録されるようになり,局所的な豪雨災害が多く発生している現状にあります。
今後とも九州地建としては,所管施設の災害対応だけでなく,地方自治体等との連携を図りつつ保有する災害対策用機械・情報通信機器等を積極的に活用する取り組みを行うこととしています。

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