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嬉野温泉街における道路環境改善事業について
九州地方整備局 菅田良和
1.はじめに

佐賀県の西側に位置する嬉野市嬉野町は全国的に有名な嬉野温泉や嬉野茶を柱とした産業を中心に年間約152万人の観光客が訪れる西九州観光の拠点となっている。
一方、この町を東西に横断する一般国道34号は、佐賀県鳥栖市を起点とし佐賀市、長崎県大村市、諫早市を経由して長崎市に至る延長140㎞の北部九州の根幹をなす重要な主要幹線道路で、嬉野地区のメインストリートとなっている。

このため、沿道にはホテル・旅館・バスセンター・公共施設等が立地し、観光客を中心とした歩行者及び自転車の利用者数が多い地区である事から、電線類を地中化する事により、次に掲げる1)~3)の項目を図る事を目的として平成16年度より電線共同溝整備事業が事業着手された。
1) 安全で快適な歩行空間の確保。
2)ライフラインの強化・防災機能の強化。
3)都市景観の向上及びバリアフリー整備による温泉地としての地域活性化。
既に道路の拡幅事業(下り車線側の歩道設置)に併せて起点側(同町中心街入口部)で実施された第Ⅰ期整備区間(L=0.46㎞)の事業は、H18年度に整備が完了し、現在、同町中心部を縦断する道路延長L=1.6㎞の第Ⅱ期整備区間(L=3.2㎞)を平成18年度に事業着手し、平成22年度の完成を目指して現在整備を行っている所である。

2.現道上での円滑な電線地中化事の推進に向けての取り組み

商店や公共施設が連なる地区での上下線(2/2車線)での現道(歩車道)掘り返し工事の繰り返しを余儀なくされる電線地中化工事に有っては、路上工事縮減化対策と、沿線住民とのコミュニケーションを図りながら事業に対する理解を得て工事を進める事が、最重点課題となっている。
また、既存施設として情報BOXや上下水道施設が歩車道とも上下線に埋設されているところで、残された狭い地下空間への新たな電力管と通信管の設置を余儀なくされていることも工事を難しくしているところである。

◇路上工事縮減化対策

①時間毎・曜日毎の交通量の事前調査把握と、交差点間の信号現示時間や連動形態の把握検証結果に基づく適正な交通規制延長及び規制体系の確立を図っての工事施工区間の決定。

②日常の沿線沿いの商店や公共施設の利用形態等の事前調整結果に基づく施工順序や施工日等の決定を行う。

③新技術・新工法の活用による工期短縮。主に上記①②③の記述事項を踏まえて、なるべく苦情やトラブルの発生を少なくし円滑な工事進捗を図っている。


◇〈新技術・新工法の採用事例紹介〉
1)QRC工法採用による作業日数の縮減

・従来工法との工期の比較

※上記の比較表からも、今回の新工法採用により、1工区当たりの舗装復旧に係る工事工期を約1/3に縮減することが出来た。この他にも、プレキャストBoX据え付け用基礎コンクリート(現場打ちCo)に換えてPc版製品の使用や、BoX据え付け位置の地盤支持力計測に簡易支持力試験機を使用するなど、日当たりの規制時間の短縮や、実作業日数の縮減化に努めている。


◇地域住民へのアカンタビリティー向上
沿線住民への説明と理解を得ることが最重要課題となるため、工事説明会の開催や沿線住民個々との調整(定期的な進捗状況の公開→HPやチラシでの情報提供)を密に行い、円滑な工事の進捗を進めている。

〈地元説明会&沿線住民との調整〉

〈毎月の工事進捗状況をHPへの紹介及び、沿線住民へのチラシの配布〉

3.電線地中化事業に併せての景観整備のあり方

全国的にも温泉地として著名度の高い同地区の地域特性を考慮して、電線類地中化に伴い安全で快適な歩行空間の確保や、町並みの景観向上等の観点から、景観整備を実施することとなった。
整備に当たっては、歩道利用者や地域住民の意見を踏まえた良好な道路環境を創出することを目的に、平成17年度に嬉野町景観整備検討委員会(委員は、沿道住民・観光・商工会・まちづくりの代表・ハンディーキャップを持った沿線利用者・行政の計16名で構成)を形成し、特に歩道整備を中心とした町民へのアンケート調査結果等を参考としながら本委員会での検討を行い、行政と地元住民が一緒になって、「みんなでつくる道」を話し合いの中で設計計画が実施されたことは、今後のみちづくりの原点とも言える。

◇地域特性の把握
嬉野町は、
・「温泉郷であり『観光の町』
・「長崎街道」、「宿場町」といった『歴史的な町』
・「嬉野茶」、「肥前吉田焼」、「ふじ棚通り」等『伝統的』、『緑あふれる並木道』の魅力を持った町。

◇ アンケート調査からの期待

☆嬉野らしい観光の街にふさわしいイメージ

⇒「おもてなし」、「落ち着き」、「癒し」、「自然(季節感)」、「景観に溶け込んだ整備」

☆印象に残る、インパクトのある道路
☆高齢者、障害者、子供などすべての人に安全で優しい歩道空間


◇ 整備イメージのコンセプト

◇主な整備方針の決定
これらの結果等を踏まえて、以下の整備方針が決定され、現在、これに基づき整備を行っているところである。

◇第Ⅱ期整備区間の整備計画イメージ

4.おわりに

嬉野地区の景観整備に当たっては、設計段階から工事実施段階まで、地域住民との対話を通して「みんなでつくる道」を進めてきた。
今後は整備後の「みんなで守り・育てる道」の創出に向けて地域との調整等努めて行きたい。

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