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九州技報 第26号 巻頭言

福岡北九州高速道路公社
 理事長
井 上 靖 武

公共土木施設をはじめとする社会資本の整備・保全は,世界史的にみても人類の社会文化活動として営々と続けられてきた。その努力の継続が政治姿勢や財政等の事情により怠られた時から国や地方の衰退が始まる。灌漑,治山治水,道路,港湾,都市施設等の社会資本は,国民生活や経済活動の基盤を成しており,その達成水準が国力,民力の現況を支え,かつ改善速度が経済成長率を決定することになるからである。
このような夢と希望に満ちた国民多数の認識のもとに,たとえ特別のプロジェクトや公共事業の実施方法について,一部の人々から批判の声があるにしても,今後とも莫大な資源が社会資本の整備・保全の為に投資され続けることは間違いない。
とすれば建設活動により産み出される成果は,自然や生活環境との調和,安全と安心の確保,機能,耐久性,コスト等の諸点において従来をはるかに超える水準を有する産物として提供されるはずだという期待が,建設技術者に託されていると受け止めなければならない。
このような期待に応えるためには,技術革新を通じた新材料・新工法の採用が目覚しく進展する必要がある。ところで社会資本の整備・保全は公共事業として行われるため,構想,計画,設計,施工,保全,運用という一連のプロセスを担当する行政セクターが,その現実ばかりでなく将来を含めたハード・ソフトの課題をほぼ独占的に保有する状況にならざるを得ない。
ちろん大学の研究者や民間の技術者も,各自がタッチしたプロセスや社会的に表面化した問題の把提を通じて課題を認識されておられよう。それでも全体から見れば一部の分野にとどまり,果たして自分が全力を傾注すべきテーマであるかの確信が湧いてくるかという点では心配である。
課題の社会的重要度,緊急度,量的側面を入れた商品価値など多角的な情報が求められているのではないか。行政側からの課題の積極的な公表に呼応して,独創的な着想に基づく社会問題解決への方法論が続々と提案されることになれば,その動機が学究的関心であるかビジネス上の競争であるかを問わず,結果としてスピードのある社会貢献の増進が期待できよう。
『新道路技術五ケ年計画』や『第五次土木研究五ケ年計画』等はこれまでに述べた趣旨の具体化を意図したものであろう。21世紀を見通した土木および関連分野が担うべき研究関発課題の山並みが漸くその姿を見せてきた。

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