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国土交通省で初めて、防災ヘリコプター「はるかぜ」
にヘリサットシステム導入
農上賢治

キーワード:ヘリサット、衛星回線、映像伝送

1.はじめに
九州地方整備局では、災害現場における情報収集の高度化を図ることを目的として、平成27年2月、整備局の保有する防災ヘリ「はるかぜ」にヘリサットシステム※(以下「ヘリSAT」という。)の機上局装置を導入しました。
機上局装置は、国土交通省内で最初の導入であり、迅速な防災対応が期待されています。
今回、旧設備との比較及び主な機能について紹介します。
図-1に示すように、従来のヘリテレは、ヘリコプターと中継局の間の無線通信により、映像・音声の伝送を行っていました。
この方式では、受信エリアを広域にするほど多くの中継局が必要になり、システム全体の整備、保守のコストがかかります。
また、地上の中継局に送信するため、中継局との間に山等の電波遮へいが存在すると映像等の伝送が出来ませんでした。
一方、ヘリSAT は衛星回線を活用することによりどの被災地からでも空撮映像をリアルタイムに伝送できます。
通信はIP化し、基地局で受信したものは、九州地方整備局に専用通信網で伝送され、映像とヘリ位置情報の同時表示や地図上への重畳、蓄積や検索等の機能があります。
また、音声による撮影指示・連絡のために、機上局と九州地方整備局間で双方向の連絡音声通話が可能です。
更に、Ku-SAT と送受信の方式を共通化することにより基地局の共通化を図っています。

2.ヘリSAT(機上局)仕様
機上局の主な仕様は以下のとおりです。

①アンテナ装置
 アンテナ形式  :パラボラ形式
 有効開口径   :0.4mφ相当
 送信周波数範囲:14.00GHz ~ 14.40GHz
 受信周波数範囲:12.25GHz ~ 12.75GHz
 偏 波       :送受直交直線偏波

②変復調装置
 伝送速度   送信:192kbps/768kbps/
              1.5Mbps/3Mbps/6Mbps
          受信:16kbps

③アンテナ制御装置
 駆動範囲:AZ 方向:360°連続、 EL 方向:5°~ 80°
 駆動速度:AZ 方向:30°/sec 以上、 EL 方向:30°/sec 以上

④映像符号化装置
 映像入力:HDTV デジタルシリアル信号
       (SMPTE292M)及びSDTV デジタルシリアル信号(SMPTE259M-C)
 映像符号方式:MPEG-4 AVC/H.264、High422P@L4.1(8bit)
 符号化伝送速度(6Mbps)
 伝送レート:最大20Mbps

3.代表的な機能
3-1映像伝送
①機上局から通信衛星方向への送信が、機体自体により遮蔽となる場合のブロッキング(送信停止)の自動制御を行う機能を有します(図-2)。注)実際の通信衛星は南東方向

また、運航地域及び飛行姿勢で変化するブレード遮断時間に対応した間欠送信による伝送情報量(符号化レート)の増減制御を行い映像の信頼性を確保しています(図-3)。

②電波の遮蔽期間の映像情報を蓄積し、遮蔽の無い期間のフライト時に、映像をコマ送りで自動送信します。これにより、電波の遮蔽による映像欠落を防止し、情報収集性能が大幅に向上します(図-4)。

3-2複数映像同時受信
本省・近畿基地局で映像情報、ヘリ情報(ヘリ位置情報、カメラ角度情報、ヘリ姿勢情報)を同時受信(最大8機)可能な機能を有します。

3-3映像蓄積及び静止画像処理
本省基地局にて、各地整全ての機上局からのリアルタイム映像、ヘリ情報を蓄積(360時間以上)し、ライブ映像の配信はもとより、一時停止、頭出し、再生(追っかけ再生)が可能です。
蓄積後には、ヘリ情報と同期(標準毎秒1枚)して、その時の映像から静止画像を取り出し、計算により撮影位置を地図上で特定し、静止画像を変形して地図上に重ねて表示が可能です。
また、上記の撮影位置特定結果から、重なり合う複数枚の静止画を選び、その重なり部分を目立たないように混合させ、一枚の静止画像を作成する静止画の連結が出来ます(図-5)。

4.まとめ
今回、ヘリSAT を導入し、従来映像伝送が出来なかった山地、渓谷、接近した箇所及び離島の被災状況などサービスエリアが拡大し、迅速な情報収集及び災害対応が期待されます。
以下に、実際映像伝送されたものを示します。

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