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吉野ヶ里歴史公園2つのバーチャルツアーを公開
~新しい歴史体験を提案~

国土交通省 九州地方整備局
国営海の中道海浜公園事務所
歴史公園課長
案 浦  久

キーワード:バーチャルツアー、施設点検、ドローン撮影、360 度カメラ、点群データ

写真 吉野ヶ里歴史公園を上空から撮影

1.はじめに
年間77.4万人(平成30年度・新型コロナの影響前)の来園者を迎える吉野ヶ里歴史公園は、平成4年10月27日の閣議決定『我が国固有の優れた文化的資産である吉野ヶ里遺跡の保存及び活用を図るため、佐賀県神埼郡神埼町大字志波屋及び大字鶴、三田川町大字田手並びに東脊振村大字大曲の一部にわたる区域に面積約54 ヘクタールの国営吉野ヶ里歴史公園を設置する。』に基づき、国と佐賀県が整備・管理を行っており、令和3年度で開園20周年となりました。
国営公園内の復元建物は98棟あり、多くの来園者に弥生時代のクニの風景を楽しんで頂いています。
しかし、自然素材で構成された復元建物の経年劣化の状態を的確に把握するためには、多大な労力を要し、維持管理の合理化が求められています。このため、デジタル技術を活用した施設点検の効率化に向けて、九州地方整備局DX 推進室と連携し、ドローン等を用いた施設点検の検討を行うとともに、その検討過程で収集したデータを、公園の広報、歴史学習素材としてバーチャルツアーへ活用する取組を行いましたので紹介します。

2.施設点検へのデジタル技術の活用検討
自然素材で構成された復元建物のうち、特に維持管理が必要な部分が、木材・竹・ヨシ材で作られた草葺き屋根です。
これらの材料が腐朽等により屋根から落下すると危険なため、通常管理として公園スタッフによる毎日の開園前点検と台風後などの緊急点検、国事務所と公園スタッフ管理部門による年2 回の合同点検、屋根補修工事のヨシ葺き職人による年1回の点検を実施しています。
特に材料の脱落等により発生する屋根形状の変形は双眼鏡等による点検では把握しづらく、状況を正確に把握するためには近づいて点検する必要がありますが、建物によっては点検箇所が地上15 m近くにもなるため、高所作業車による作業が必要になります。しかし、建物周辺の状況によっては近づけない場所もあり、正確な確認を行いにくいことが課題でした。
このため、復元建物整備から20年を超え、草葺き屋根の老朽化も進行する中で、新たな点検方法を検討することとしました。

(1)DX推進室との連携
デジタル技術を活用した公園管理の効率化について具体的な検討を進めるため、2021年5月にインフラDX 推進室と協議を開始し、連携した取組を推進することとなりました。
具体的には、他の施設や国営公園等における事例なども参考に、ドローンによる高解像度映像等での屋根の変形や劣化状況の把握、地上レーザー測量による点群データでの建物形状の定量的な把握をテーマとして検討を進めることにしました。
このうちドローンによる高解像度撮影等については、TEC-FORCE のUAV 航空隊 BlueHAWKSにより実施して頂きました。

写真 BlueHAWKSによるドローン高解像度撮影

■撮影機材
◎ドローン(整備局機材) DJIMAVIC2ZOOM
◎ 360 度カメラ RICHOTHETA
◎地上レーザースキャナ LEICABLK360
◎その他
デジタルカメラ・GPS・一脚・三脚
文化財保護対応品など

(2)ドローンによる空撮での施設点検
地上からでは、主祭殿などの高い建物の屋根の劣化状況の詳細を把握することが困難でしたが、ドローンで撮影することで、地上からでは確認しづらい屋根部材等の近接での目視点検が可能となることが確認できました。

写真  物見櫓から操縦したドローンによる目視点検の様子

(3)地上レーザー測量での施設点検
地上レーザー測量により、公園の主要な施設である北内郭全体を点群データとして記録しました。
今後も3 ~ 4年に1 回測量を行い、各時点での点群データを比較することで、草葺き屋根の老朽化による変形を1㎝単位で定量的に把握し、今後の更新計画に反映させる予定です。

写真  地上レーザー測量での施設点検

3.バーチャルツアーの作成経緯
施設点検のために撮影したドローン映像は、公園全体を俯瞰的に把握する資料としても優れ、地上で施設管理のために撮影した360 度カメラの映像は、通常来園者が見ることができない場所からの映像として、広報素材や学習素材としてのポテンシャルも高いと考えました。
そのため、新型コロナウイルス感染拡大の影響で遠方から本公園へ来園できない方にも楽しんで頂けるよう、また、感染状況が落ち着いた後は公園へ訪れたいと思って頂けるよう、これらの映像を活用したバーチャルツアーを作成することとしました。
バーチャルツアーは、公園全体を巡ることができる通常のツアーと、吉野ヶ里遺跡から出土した遺物の写真や解説を加えて、学習効果とゲーム性を高めたツアーの2 つを、令和4年2月2日から公開しました。

4.バーチャルツアーの紹介
(1)吉野ヶ里歴史公園 DXバーチャルツアー「鳥の目 人の目 王の目」
吉野ヶ里歴史公園を、上空から、地上から自由に巡り、解説付きで学ぶことができるバーチャルツアーです。
広大な吉野ヶ里歴史公園を「鳥目線」で撮影したドローン映像と、地上の風景・復元建物内を「人目線」で撮影した360 度カメラ映像を組み合わせることで、上空から地上や建物内を自由に行き来することができる、バーチャルツアーならではの新しい公園の楽しみ方が実現しました。
特に、通常立ち入りできない北内郭主祭殿2階の玉座からの「王目線」の映像は必見で、弥生時代の王になった気分を味わえます。

写真 バーチャルツアートップ画面(公園上空)

写真 バーチャルツアー北内郭主祭殿2階

(2)吉野ヶ里遺跡バーチャル発掘ツアー「邪馬台国の秘宝を求めて」
吉野ヶ里遺跡から実際に発掘された出土品を、実際に出土した場所で発掘する体験が楽しめ、出土品を集めていくことで、あの「邪馬台国にまつわる秘宝」も手に入れることができるゲーム感覚を取り入れたバーチャルツアーです。
かつて吉野ヶ里に栄えた弥生時代のクニの生活、文化を探る旅を楽しめる、学習効果も期待できるコンテンツであることから、学校など教育機関での活用も期待しています。

写真 バーチャルツアー発掘ツアー画面

写真 バーチャルツアー出土品発掘画面

写真 現実空間にスコップ位置を表示し、バーチャルツアーへ誘導

5.まとめ
バーチャルツアーのPR は、関連動画の公開を段階的に実施、佐賀県および福岡県の多くの小学校に配布している広報誌「ひみか通信」への掲載で学校関係者への直接PR、旅行会社への商談を行うときには、旅行誘致ツールとして、また学校向けに学習旅行等での事前学習ツールとして紹介するなどを行い、公開以降、多くの方にバーチャルツアーを楽しんで頂いています。
現在、国営公園内において10年ぶりとなる日吉神社跡地の再発掘調査が行われており、より多くの方の目に留まる様にPR に務めていきます。
また、施設点検へのデジタル技術の活用についても、引き続き検討していきますので、多くの方の知恵をお借りしたいと考えています。
最後になりますが、DX 推進室、UAV 航空隊 BlueHAWKS、佐賀県文化課文化財保護室、吉野ヶ里歴史公園マネジメント共同企業体、(株)中野建設、日本工営(株)のご協力によりバーチャルツアーが完成したことに、紙面をお借りしてお礼を申し上げます。

◎公園バーチャルツアーHP
https://www.yoshinogari.jp/introduction/virtualtour/
〇吉野ヶ里歴史公園HP から入れます。

◎九州地方整備局DX 推進室HP
http://www.qsr.mlit.go.jp/infradx/index.html

写真 主祭殿の3Dプリンター用のデータを配布中

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