道路情報システムと光ファイバーネットワーク計画の現状
建設省 九州地方建設局
道路部 道路管理課長
道路部 道路管理課長
山 田 茂 利
建設省 九州地方建設局
道路部 道路管理課長補佐
道路部 道路管理課長補佐
日 吉 信 介
建設省 九州地方建設局
道路部 道路管理係長
道路部 道路管理係長
森 山 博 文
1 はじめに
近年の全国的な情報通信インフラの整備による情報化社会の進展に伴い,ITS(高度道路交通システム)の推進による道路交通問題の解決,移動の利便性の向上に向けた研究開発が進められる中で,特に道路管理者には道路防災管理の高度化による安全の確保やサービスの高度化,管理の効率化等が要請されている。
また,民間事業者や役場・学校・病院・文化施設などの公共施設では光ファイバーネットワークと情報機器の整備による高度情報化社会の形成に向けた検討が進められている。
本報告は建設省における道路情報システムの概要と情報通信システム高度化のためのインフラ整備となる光ケーブル網の計画について紹介したものである。
2 道路情報システムとは
九州地方建設局では昭和60年前後において道路情報システムの整備が開始された。この時期の主要な整備は,道路情報板を中心に,災害,規制,工事情報等を道路利用者に提供することを目的に進められたものであり,基本的には数字データの収集と文字による情報の提供が主であった。
しかしながら,その後の情報化の進展に伴い,道路利用者からは迅速でわかりやすい情報提供が求められ,情報収集・提供のシステム化とビジュアル化が一層進められることとなった。
本検討における道路情報システムは,光ケーブルによる情報通信の大容最化を背景として,システムによる災害の検知とカメラによる確認,迅速かつビジュアルな情報の提供等を検討したものである。道路情報システムの体系を下図に示す。
3 道路情報システムの計画
九州地建では,現在平成14年を目標とした光ケーブル網の整備に合わせた道路情報システムの整備についての検討を進めているところである。
3.1 道路情報システムの整備方針
道路管理の現状と課題について分析し,道路情報システムの整備方針を次のとおり設定した。
●情報収集・提供機器の整備
・画像系機器の導入…CCTVカメラ,情報コンセント
・気象情報の充実……雨量計,積雪計,凍結検知器,霧監視,風速,越波等
検知器の充実,地震計
・災害検知機器の整備……落石,土石流,地すべり検知器,橋梁変位計
・交通監視機器の整備……交通量感知器,事故多発区間のCCTVカメラ設置
・情報提供機器の整備……道路情報板,雨量情報板,「道の駅」情報システム
●伝送路の整備
・光ケーブルの敷設
・通信技術の高度化
●処理機能の高度化
・処理装置の高度化……新しい処理装置の導入
自動処理機能,記録機能
●表示機能の高度化
・マルチビジョンの導入……表示の大型化,多様化(分割表示)
・CCTVモニター画面……大量情報の効率的表示
・表示方法の高度化……ソフトの開発
3.2 将来の情報収集・提供機器の計画
道路情報システム整備の基本方針に甚づき,将来の機器計画を策定した。将来の計画機器数は九州地建管内で約2300基となる。なお,当面は平成14年度までに約1600基(事業費230億円)を整備する予定である。
3.3 システムの事例紹介
(1)情報収集系システム機器について
情報収集の対象は,積雪,凍結,霧などの気象監視機器類,台風,豪雨,地震災害発生等の災害の検知器類,交通量観測などの交通監視機器類等があり,これらの収集系機器の補完的役割を担うものとしてCCTVカメラがある。これらの機器類を活用することにより,リアルタイムの道路状況を把握することができる。
収集系システムの例としては,土石流,落石等の災害検知システムの例を紹介する。
■道路気象テレメータ
道路気象テレメータは雨量計,気温計等各種の気象センサーの計測データを観測装置で収集し,蓄積するもので,蓄積されたデータは必要に応じて監視局に設置された監視装置から信号を送ることにより,各種気象データが配信される。また,気象の状態変化毎に,監視装置ヘデータを自動転送し,道路状況を的確かつ迅速に把握することが可能となる。
■土石流,落石等の災害検知システム
災害等危険斜面にセンサーを配置し,災害発生の警報を受けるとCCTVカメラを操作することにより災害の発生状況を事務所内で確認する。この情報はリアルタイムで道路情報板に提供し,必要であれば交通規制を実施する。建設省管内の各事前通行規制区間には,こうした災害検知システムを配置することにより,迅速な災害の把握とその対応についての検討が進められている。
(2)情報提供系機器について
情報提供については,従来,道路情報板による情報の提供が主であったが,道路情報の高度化とともに,事前通行規制区間の情報を提供する雨量情報板や拠点での情報を提供する路側通信,「道の駅」情報システムなど多彩な提供システムが検討されている。また,同時にVICSシステムの整備が進められており,道路利用者にとっては様々な提供手段による情報の収集が可能となる。以下に情報提供システムの例を紹介する。
■道路情報板の高度化
従来のA型,B型からHL型への更新を進めることにより,情報提供の自動化が進み,情報提供内容も豊富になり,また,交通管理者との連携も容易となる。
■雨量情報板による雨量情報の提供
事前通行規制区間周辺では,規制予測情報の提供に対する要望が強いが,「〇〇分後に通行規制になりそうだ」というような未確定の情報を提供することはできない。そこで,道路利用者の判断材料として,事前通行規制の判断基準となる雨量データを雨量情報板に提供する。道路利用者は現在雨量と規制雨最基準値を把握することにより,自分で「規制の可能性」を判断することができる。
■「道の駅」情報システム
「道の駅」は地域の情報発信拠点であるとともに,道路管理者にとっては道路情報の発信拠点として機能することができる。特に,事前通行規制区間等の前後では防災拠点としての機能も検討に値する。
3.4 情報管理室・災害対策室
現場の機器により収集した情報は,システムにより処理され,事務所,出張所および本局における情報管理室や災害対策室で表示される。災害対策室ではこれらの情報を分析検討することにより,体制の判断や情報の発信がなされる。
4 光ファイバーネットワーク計画
4.1 光ファイバーネットワークの必要性
従来,道路情報システムは伝送路としてマイクロ回線およびNTT回線を用いてきた。しかしながら,近年の情報機能の高度化,特に画像伝送需要の増大に対応するためには,もはや従来の伝送形態(NTT,マイクロ回線)では容量的に困難な状況となっており,光ファイバーによる大量の情報伝送路の整備が不可欠となってきた。
4.2 光ケーブルの敷設
光ケーブルの敷設は従来,共同溝,CAB,C.C.BOX等により進められてきたが,これらはいずれも参入事業者の負担区分の問題が大きく,事業化はなかなか進まなかったのが実情である。
そこで平成8年度に通信線(光ケーブル)専用の情報BOXが登場し,参入事業者も占有料としての扱いのみとすることにより,急速な整備が進められることとなった。
4.3 光ケーブルネットワークの整備計画
光ケーブルネットワークは九州管内の直轄国道全線敷設(ただしバイパスと現道が競合する場合はいずれか一方)を目標としている。整備の方法は前述したように,共同溝,CAB,C.C.BOX,情報BOX等があり,その地域の土地利用等によりいずれかの方法が適用されている。この内,情報BOXによる整備延長は1,770kmであり,全体(計画延長約1,900km)の93%にあたる。
この情報BOXは,平成14年度全線整備を目標として整備が進められており,平成10年度末の整備延長は1,121kmで全体の63%に達している。
5 道路情報システムの今後の課題
5.1 他機関との連携
道路情報システムは道路管理者が道路を管理する上で必要な種々の機器を設置することにより,道路の安全性と利便性を高めていくものであり,この点で現在の道路情報システムは順調な整備のレールに乗っていると考えることができる。
しかし一方,道路利用者からみると,道路は建設省,県,市町村,道路公団,公社等がそれぞれの道路の管理を分担しているものであり,また,同じ直轄国道でも道路管理者と交通管理者がそれぞれの管理分野を分担しているため,同一路線内で情報内容の異なった情報が提供されている場合もある。
今後は各道路管理者間および交通管理者が相互に連携をとり,道路情報システムそのものを連携することにより,道路利用者に対する一貫した質の高いサービスを提供することが望まれる。
5.2 道路情報システムの運用
道路情報システムのハード面についての整備を完了しても,道路管理は人が行うものであり,高度なシステムをどのように管理し活用していくかは今後の課題である。特に,新しいシステムの運用に関する問題点把握と改良,24時間運用に対する対応など,今後システムを活用していく上での課題について検討していく必要がある。