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「九州防災・火山技術センター」を新設
坂井佑介

キーワード:大規模災害、火山防災、災害対応

1.はじめに

九州地方は、地理的・地形的な要因から、全国的にも台風や集中豪雨による水害、火山災害、土砂災害など自然災害が多い地域で、これまでも九州各地で大規模な災害が多発している。近年では、平成22 年奄美地方における大雨、平成23 年霧島山(新燃岳)の火山活動、平成24 年九州北部豪雨などが挙げられる。このことから、九州地方整備局では大規模災害時における対応の一層の高度化・効率化を図るため、平成24 年4 月に「九州防災センター」を九州技術事務所(福岡県久留米市)内に設置し、風水害・土砂災害への対応を行ってきた。
今般、「九州防災センター」の機能強化と併せ、火山噴火に伴う降灰後の土石流等の火山災害にも対応できるよう火山防災技術についての機能を拡充することから、新たに「九州防災・火山技術センター」を平成25 年7 月に設置したので、当センターの取り組みについて紹介する(図ー1、図ー2)。

2.「九州防災センター」のこれまでの活動

平成24 年7 月に発生した九州北部豪雨では、九州地方で死者31 名、行方不明者3 名、被害総額約1,925 億円の甚大な被害がもたらされた。国土交通省では災害発生直後から、被災地への支援のために緊急災害対策派遣隊(TEC . FORCE)として職員71 名、災害対策機械45 台を全国から九州に集結させ、熊本県阿蘇市をはじめとする大きな被害を受けた市町村において被災状況調査や排水作業などを実施した。このとき「九州防災センター」はTEC. FORCE 隊員と災害対策機械の派遣拠点となり、被災状況調査箇所や調査内容の調整、活動状況のとりまとめ等の派遣業務を一元的に実施することにより、被災地への効率的かつ迅速な支援に貢献した(図ー3、図ー4、写真ー1)。

平常時には、風水害、地震・津波災害対応の訓練や研修を企画運営しTEC . FORCE 隊員の災害対応能力の向上を図るとともに、防災関係資機材の機能維持・向上・配備計画の策定を行うことで、九州地方整備局の防災力強化に努めてきた。また、県及び政令市が主催する地域防災訓練に参加し、九州地方整備局が所有する災害対策機械等の能力・機能を自治体及び一般参加者の方に紹介するとともに、九州地方整備局災害対策室と現地を結ぶTV 会議システム等を活用した遠隔防災会議訓練、災害対策用ヘリコプターから関係機関への映像配信訓練を通じて、自治体との連携・支援体
制の強化を図ってきた(写真ー2)。

3.「九州防災・火山技術センター」における機能強化・拡充内容
3.1 防災センターの機能強化

平成24 年九州北部豪雨対応等での経験を踏まえ、防災センターとしての機能強化を図る。
具体的な取り組み内容としては、関係機関との支援体制を充実させるため、光ファイバー回線とインターネット回線を利用し、自治体・大学等の関係機関とリアルタイムでの情報共有化を図る。これにより、当センターが大規模災害対応の派遣拠点となる際に、これまで以上に状況変化への迅速な対応、被災地への効率的な支援が可能となる(図ー5)。また、仮に災害対策本部となる九州地方整備局災害対策室が被災を受け機能しなくなった場合でも、当センターの災害対策室を代替の指揮所とすることができるため、不足の事態に備えたバックアップ体制が構築される。
この他に、災害発生時において復旧活動に必要となる資機材を迅速に被災地へ搬出するため、土嚢や袋詰根固めネット等を予め当センター内に備蓄する。

3.2 火山防災技術の拡充

九州地方は、全国で110 ある活火山うち、17の活火山を有している(図ー6)。また、気象庁が発表している噴火警戒レベルが2 以上の活火山を複数有しているのは九州地方のみであり、火山活動が活発な地域であることがわかる(表ー1)。
これまで九州地方整備局では、活発な活動を続けている桜島、平成2 年に噴火した雲仙普賢岳噴火、平成23 年に噴火した霧島山(新燃岳)において、降灰に伴う土石流等の火山災害に対する防災対応に取り組んできた。
一方、内閣府の有識者検討会においては、東日本大震災後に国内の火山活動が一時的に活発になったことなどから、火山の大規模噴火に備えるため、道府県を越えた広域避難計画をつくる必要があるとの提言がまとめられている。

このように今後の火山活動の活発化が懸念される中で、これまでの火山災害対応で九州地方整備局に蓄積されたノウハウを活かし、火山防災対応のより一層の高度化・効率化を図るため、当センター内に火山防災技術部門を拡充することとした。
具体的な取り組み内容として、平常時は、火山防災に必要な観測機器の配備や適切な運用のための環境整備、火山噴火時における調査・応急対策技術の改良・開発を行うことで、火山防災技術の向上を図る。また、火山噴火時に土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(以下、「土砂災害防止法」という。)に基づいて国土交通省が直轄で実施する緊急調査のスキルアップなど、火山災害に係る各種研修・訓練を行い、九州地方整備局の火山に係る防災力強化を図る(写真ー3)。

火山が噴火した緊急時には、土砂災害防止法に基づく緊急調査として実施する降灰状況調査や簡易浸透能測定等、応急対策として実施する砂防堰堤の除石等に関して、技術的に支援・協力することとしている。本年6 月には、薩摩硫黄島(鹿児島県三島村)で降灰を伴う噴火が発生しことを受け、緊急調査の必要性の確認及び緊急調査の実施に備えた現地状況の把握を行った。当調査では、災害対策用ヘリコプターによる上空からの降灰状況調査や現地での降灰状況調査、砂防施設の現況調査等を実施し、これらの調査結果を三島村長に報告している(写真ー4、写真ー5)。

4.おわりに

本年もこれまでに、島根県・山口県を中心とした7 月17 日からの大雨、近畿地方を中心とした台風18 号及び前線による大雨、伊豆大島で甚大な土砂災害が発生した台風26 号による大雨等により、各地で人的被害を伴う大規模な災害が発生している。九州地方整備局では、これらの災害に対してTEC . FORCE や災害対策機械を派遣し被災地への支援を行っている。
火山についても、本年8 月に桜島昭和火口で観測開始以来最高の噴煙高度(5,000m)の爆発的噴火が発生したことは記憶に新しい。また、先述した薩摩硫黄島や阿蘇山において一時的ではあるが、噴火警戒レベルが1 から2 に引き上げられている。
このように、風水害・土砂災害が多発し、火山災害への懸念が高まる中で、大規模災害対応のより一層の高度化・効率化が急務となっている。九州防災・火山技術センターでは、本稿で紹介した様々な取り組みを通じて、九州地方整備局の防災力強化、災害時における効率的かつ迅速な支援に努めていく。

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