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西鉄大牟田線福岡駅再開発計画
(複合交通施設の整備)

西日本鉄道㈱福岡駅開発本部
鉄道建設部土木課長
河 野 直 己

1 はじめに
西鉄大牟田線は,九州の政治・経済・文化の中心である福岡市天神を起点に,二日市,久留米,柳川などの諸都市を経由し大牟田に至る,延長75kmの路線である。支線として,延長18kmの甘木線と延長2.4kmの太宰府線を擁している。
その沿線は,太宰府天満宮,久留米絣,水郷柳川等で知られるところである。
大牟田線の1日の輸送人員は35万人,年間では1億3千万人が利用している。特に福岡駅では,1日17万5千人が乗降し,福岡県の西部を南北に結ぶ動脈として大きな役割を果たしている。

2 福岡駅の改造経緯(図ー2参照)
福岡駅は昭和36年に戦災復興事業の一環として高架駅となり,5線5ホーム,4連ホームで運営を開始した。その後,利用客の増加に対応して,小規模な改造(ホームの長連化)を重ねながら,5線5ホーム,1部7連ホームでの運営を行ってきたところであるが,更なる延伸の必要が生じた昭和58年に3線3ホームに改造し,8連ホームへ延伸できるスペースを確保した(8連ホーム化は平成3年度)。
しかし,近い将来に予想される10連ホームヘの対応が物理的に不可能であった。また狭隘なコンコースの拡幅や,線路のカーブ半径の改良等を抜本的に解決することとも合わせて,整備計画を策定した次第である。

3 バスセンターの現状
バスセンターは,昭和36年に福岡駅と同時に設置されたものであり,大牟田線,市内電車,そして市内バスとの重要な交通結節点として計画されたものである。
出発機能だけではあるが,6バースで同時に客扱いができるスペースを持ち,当時としては全国ではじめての長距離バス対応のターミナルとして発足したものである。
現在では,高速道路の充実に伴い路線が拡張されて,東京,金沢,名古屋等の長距離路線から,鹿児島,宮崎,熊本等の九州各地へと1日に800本のバスが運行されている。
福岡駅の改造に合わせて,バスセンターを3階に移設し施設を拡充することで,周辺交通の混雑緩和等にも寄与することを企図するものである。

4 複合交通施設の整備計画
西鉄では,市内バス,地下鉄との重要な結節機能を担う福岡駅とバスターミナルの総合的な整備を目指して,昭和62年に再開発計画に着手した。平成2年には,交通施設に関する都市計画決定の手続きを完了し,公共施設として公に認めるところとなった。
整備計画は,次の基本方針の下に策定した。
① ターミナル機能の向上
② 回遊性の向上
③ 文化空間の配置による活性化

(1)開発ビルのゾーニング(図ー3参照)
開発ビルをその機能により2つのゾーン(交通施設ゾーンと商業情報文化ゾーン)に分割した。
交通施設ゾーンでは,交通施設の立体的配置(1階:歩行者空間,2階:鉄道,3階:バスターミナル,4階~屋上:駐車場)を行い,複合交通施設としての機能が十分発揮できる計画とした。
交通施設ゾーン以外を商業情報文化ゾーンとして位置づけた。

(2)福岡駅の整備計画(図ー2参照)
1日に17万5千人が利用する福岡駅を,将来の輸送需要に向けて,次の4項目で整備する。
① 改札口内外のコンコースを約3倍に拡充し,ゆとりと快適さをあわせ持つ空間とする。
② ホームを3線3ホームから,乗降分離のできる3線4ホームにする。また,10両車両が止まれるホームの長さを確保し,輸送力の増強に対応する。
③ 安全性向上のために,ホームに沿う線路のカーブ半径を大きくし,ほぼ直線化する。
④ 改札口を2箇所増設して4箇所にし,周辺からのアクセスを便利にする。また,エスカレーター,エレベーター等の機械動線を設置し,スムーズな移動を確保する。
(3)バスターミナルの整備計画(図ー4参照)
現在のバスターミナルは,C地区1階に位置し,バスが出入りしている渡辺通りは12時間交通量で4万台を超える道路で,天神地区の最混雑区間と称されている区間である。この現状を踏まえ,次の4項目で整備する。
① バスと歩行者との交錯,バスと一般車との交錯を解消し,安全性の向上と交通混雑の緩和を図るため,バスターミナルを3階に移設する。
② バスターミナルヘの出入口を最混雑区間外に外すとともに,バスターミナル内に約20台の駐車スペースを確保することで,現在止むを得ず行っている空車での回送をほぼ無くし,交通混雑の緩和に寄与する。
③ 待合スペースの拡充,冷暖房化やシャワー室の設置等サービス施設を充実させ,利用客の利便性,快適性の向上を図る。
④ 乗車用の6バースに加え,降車用に3バースを設け,乗降機能のあるターミナルとすることで,利便性およびサービスの向上を図る。

(4)公共空地,公共道路の新設(図ー5参照)
バスターミナルを3階に移設することで,開発区域の1階には1,600m2の公共空地を設置でき,垂直に配置された駅前広場としての整備が可能となった。さらに,東西通路を5本,南北通路を1本設け,開発地区を中心とする天神の回遊性の向上を図る。なお,これらの空間と隣接するソラリアプラザビル1階の空間を合計すると,面積は約6,000m2に達している。

(5)駐車場,駐輪場の新設
C地区の4階から屋上にかけて,460台収容の駐車場を設けるとともに,自動二輪車の駐車スペースも確保する。さらに,4階にはタクシーベイを設け,駐車場の都市計画決定とともにその公共性を高めている。また,C地区の地下3階には,480台収容の駐輪場を設け,近隣からのアクセスを容易にしている。

5 関連工事
福岡駅再開発工事と密接に関連している工事が大牟田線(福岡~平尾間)連続立体交差事業である。この事業は,9箇所の踏切道を除去し,新設道路と既設道路を含めて14箇所の交差道路を持つ連続立体交差を完成させるものである。
工事延長:1,620m,高架橋延長:1,526m(その内直上高架橋延長:870m),盛土部取付延長:94mで,昭和58年に都市計画決定,昭和59年に事業認可を受け,福岡市が事業主体となって昭和60年から工事に着手している。
平成7年3月の高架切替に向け,構造物工事を終え,現在は鉄道工事を施工中である。

福岡駅再開発工事とは一般国道202号北端を境とし,接点を持ちながらの施工を続けている。また構造的関連では,合築構造である。バスターミナルと駐車場の出入口を最混雑区間外に外したことで,これら施設への誘導車路を設ける必要が生じ,諸条件から連立事業で計画済みであった構造型式(RCラーメン高架橋)を,鉄道高架の上部に車路を重ねる合築構造に構造変更したものである(図ー6参照)。
なお,平成7年3月に予定している高架切替では,この連立工事と福岡駅再開発工事の同時施工で切替が完了することになる。その後も,連立工事に合わせて福岡駅再開発工事を施工する部分が多く,工程等の調整を行いながら実施していく計画である。

6 鉄道線形の切替
施工は,大量輸送機関である鉄道とバスを施工区域内で営業しながら行うため,切替工事や近接工事等での安全確保が最重点事項となる。
特に,鉄道の切替では,軌道のみならずホームの切替も行うため,利用客の安全と列車の安全運行に注意を払い施工を行っている。
施工スペースを確保するために,鉄道線形とバスターミナルの位置を切替えながらエ事を進めているが,横幅が40m弱と狭い場所を半分に区分して施工することが,工事の難度を極めて高いものにしている。
図ー7に示す手順で施工中であるが,現在はステップ2からステップ3へ切替えるための軌道工事を行っている段階である。

(1)鉄道線形の切替(図ー7参照)
ステップ1では,鉄道線形は動かさず,工事区域に位置するバスターミナルを既存の高架下(西側)に移転して,また,東側の既設高架橋を一部解体することで工事スペースを確保し,C地区東側の建設を行った。
ステップ2では,鉄道とバスターミナルを,ステップ1で完成したC地区東側の新設構造物部分に切替え,C地区西側の建設工事を行った。
鉄道(2階)とバスターミナル(3階)を早期に完成させるために,逆打ち工法を採用し,工期の短縮を図っている。
具体的には,ステップ1とステップ2では1階から3階までの建造を先行し,東ブロックと西ブロックの1階から3階までの床が連結された後,地下と4階以上の建造を実施するものである。
ステップ3では,ステップ1とステップ2で建造した鉄道床に軌道を移し,C地区北部の工事を行う。合わせてABビルの工事にも着手する。
ステップ4では,Cビルの鉄道階が完成し,3線4ホームの最終線形にて運行開始となる。
なお,ABビルは,Cビル完成後2年程で完成となる予定である。
(2)ホームの切替(図ー8参照)
軌道の切替に伴い,ホームの切替を実施してきた。
図ー8に示す現況ホームは,鉄筋コンクリートのラーメン構造である。図ー7に示すように,ステップ1からステップ2に線形が変化すると,現況のコンクリート構造のホームをステップ2の線形に合わせてカットすることが必要となる。カットした部分は,切替日までは仮設ホームとして機能させる。
切替時には,この仮設ホームを撤去し,事前に敷設した軌道を整備して列車運行に備える。また,在来の軌道部分は,仮設木造で蓋架けをし,ホームとして使用する。
現況ホームには,コンクリート構造型式のほかに鉄骨構造型式が存在するが,この型式についても同様の仮設ホームを設置して対処した。

7 おわりに
平成4年7月に着工し,平成9年の完成(ABビルは平成11年の完成予定)を目指して鋭意施工中である。
バスセンター,福岡駅をご利用のお客様,ならびに市民の皆様に対して,工事に対するご理解とご協力をお願い申し上げるとともに,本計画に対しご指導いただいた皆様に,紙上をお借りして感謝しお礼申し上げます。

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