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産業廃棄物処理状況の調査結果について

五団体九州支部公害対策部会
部会長 
 前田建設工業㈱九州支店長
馬 場 信 美

同委員 
㈱フジタ九州支店土木部技術課長
久 賀 冨美男

1 はじめに
最近,建設需要の増加に伴い,建設廃棄物の量も急速に増大し,これら廃棄物の不法投棄が社会問題として大きく取り上げられるようになった。
五団体合同安全公害対策九州支部公害対策部会としては,建設現場から排出されるこれら廃棄物の処理の実態および問題点を把握して,適正処理の推進に役立てるため,3年前から産業廃棄物について実態調査を実施している。
本報告は,平成2年度の調査結果をとりまとめたものであり,前2カ年の調査結果との比較をおこなった。

2 建設廃棄物処理ガイドラインについて
平成2年5月,厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室にて「建設廃棄物処理ガイドライン」が策定され,都道府県等に通知された。
当ガイドラインは,建設廃棄物について「廃棄物の処理および清掃に関する法律」(以後廃棄物処理法と呼ぶ)に沿って適正に処理するために必要な具体的な処理手順を定めることにより,生活環境の保全および公衆衛生の向上を図ることを目的としている。記載内容は,強制的に義務づけるものではないが,当ガイドラインに従わないために,廃棄物処理法に規定する義務・基準に違反をすれば,当然に行政処分や刑罰の対象となるものである。
当ガイドラインによれば,建設廃棄物の種類は図ー1のように各種の廃棄物が含まれるので,それぞれの廃棄物の種類に応じた処理基準に従って処理されなければならない。

3 マニュフェストシステムについて
平成2年4月1日より実施された「マニュフェストシステム」は,マニュフェスト(積荷目録)により産業廃棄物の処理を委託した排出事業者がその流れを自ら把握するため,および排出事業者が産業廃棄物の処理を他の者に委託する場合,産業廃棄物の性状等に関する情報を正確に伝達する事によって,不法投棄等の産業廃棄物の不適正処理の防止,産業廃棄物の処理過程における事故の防止等を図り,もって,生活環境の保全,公衆衛生の向上を確保することを目的とする。
マニュフェストシステムの信頼性の確保,および全国的に効率性のある展開を図るため,全国統一した運用をはかることとしているので,マニュフェスト用紙の入手については各都道府県の産業廃棄物協会を利用されたい。
以下にマニュフェストシステムの仕組みを説明する(図ー2)。

4 調査の目的
本調査は,建設工事現場より排出される産業廃棄物の処理の実態と問題点を把握して,産業廃棄物の適正処理推進に役立てるために行うものである。

5 調査対象現場の選定
調査対象工事現場は次の基準により選定した。
(1) 会員会社が現在施工中の現場である。
(2) 九州地区で,産業廃棄物の処理を行っている現場である。
(3) 土木工事にあっては,請負金1件5,000万円以上,建築工事にあっては,1件1億円以上で,平成2年8月現在の工事である。
調査期間は,平成2年9月27日より10月31日とし,有効回答土木工事77件,建築工事102件を得た。

6 調査結果
(1)調査対象現場
土木工事は官庁工事が全体の約80%を,建築工事では反対に,民間工事が約80%を占めている。地域的には,どちらも福岡県が半数以上を占めている。

(2)調査現場の排出量の合計
建設廃材と汚泥で土木工事では99.7%,建築では95%を占めている。

(3)調査現場の処理費用の合計


(4)処理費用単価(t当り)

〔汚 泥〕

〔建設廃材〕

その他(建築)

(5)請負金と処理費用の関係
〔請負金に対する処理費用の比率〕
0.5%以内が大半であるが,土木では2%を越える現場もかなり有る。

〔請負金別の処理費用比率〕
全体としては,小規模現場ほど処理費用の工事費に占める割合が大きくなっている。

(6)発注者からの具体的指示の有無

(7)廃棄物処理に対する取り組み状況

(8)廃棄物の処理方法
半数以上は,収集運搬から最終処分まで業者に委託している。

(9)処分先
〔自由処分と指定処分〕
自由処分と指定処分の比率は前回と逆転し,今回は自由処分の方が多くなっている。この傾向は官,民発注工事共大差ない。

〔公共処分地と民間処分地〕
公共処分地は全体の20%程度であり,ほとんどを民間処分地に頼っている。

(10)処分地までの運搬距離
処分地までの片道運搬距離は平均22kmである。20km以上が全体の半数近くを占めており,今回は30km以上の運搬距離の増加が目立っている。

(11)設計変更の有無
設計変更されるものはわずかで,されない,協議中が殆んどとなっている。

(12)現場で困っている問題点
現場で困っている問題点は,処分場が少なく遠い,処理費用が設計費用に比べて高い等がほとんどを占めている。
この他,建築では分別処理の問題が多くなっている。

(13)現場からの要望事項
現場からの具体的要望事項を分類すると,下表のようになり,設計処理費用に関するもの,処分場に関するものが多い事がわかる。
要望事項とその件数の割合も,前2年の調査結果と殆ど変わりなく,これらの問題に対する対応の在り方が今後の課題であると思われる。

7 おわりに
今回の調査は,一昨年に引続き会員会社に調査を依頼し,土木工事77件,建築工事102件について調査表の提出を受け,これを集計しとりまとめたものである。
産業廃棄物の適正処理については,施工業者として努力の跡がうかがえるが,処理費用の問題は更に顕著になり,併せて処理場不足の現状等,施工業者のみでは解決出来ない多くの問題が,昨年に引き続き提起されている。
過去2年間及び今回の調査でも同様であるが,特に民間の発注者については,施工業者依存の傾向が見受けられた。厚生省指導によるマニュフェストシステムの採用,建設省よりの「建設廃棄物対策に関する当面の推進方針」の策定等,積極的に産業廃棄物対策に乗り出しており,今後の対応が期待されるところである。
また,土砂(残土)と汚泥の取扱についても,厚生省より各都道府県を通じて,指導の通達がなされている。
我々元請け会社としても特に建築工事について,処理業者にまかせっぱなしの現場が相変わらず見受けられたのは残念であった。
今後,調査結果にあらわれた問題点・要望事項等をふまえ,現場に対する教育広報活動をさらに積極的に実施するとともに,関係発注機関等に対しても,理解と協力を求めていく考えである。
最後に,今回の調査に対し,多忙な中にもかかわらず快く協力して頂いた,多くの工事関係の方々に深く感謝する次第である。

参考文献
1 厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室監修:建設廃棄物処理ガイドライン
2 総合土木研究所:基礎工1991,Vol.19,No.4
3 五団体合同安全公害対策九州支部公害対策部会:産業廃棄物の処理に関する現場調査結果のまとめ(昭和63年度)
4 五団体合同安全公害対策九州支部公害対策部会:産業廃棄物の処理に関する現場調査結果のまとめ(平成元年度)
5 五団体合同安全公害対策九州支部公害対策部会:産業廃棄物の処理に関する現場調査結果のまとめ(平成2年度)

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