佐藤幸甫
私は長らく九州技報の編集委員を務めて参りましたが、この56 号を最後に編集委員を辞めさせて頂くことにしました。歴代の編集委員長や各編集委員の方々、並びに関係者の皆様には大変お世話になりました。紙面をお借りして厚く御礼申し上げます。思えば、九州技報には創刊号発行のときから関与して参りました。創刊当時は(社)建設工法研究所が本誌の編集・発行を担当しており、私はそこの理事長でしたので「発行人」でした。創刊は1987 年6 月でした。創刊の理念は創刊号に載っていますが、要約すると、「技術革新が急速に発展するこんにち、建設分野においても新材料や新工法の開発、環境問題への対応など多岐にわたる問題に直面している。特に九州においては急峻な地形、火山活動による特殊土壌の広範な分布、軟弱地盤などに関してかねてより様々な研究がなされてきたし、今後も続けられるであろう。これらの情報を集約して九州地方建設局(当時)のみならず、関係行政機関、業界、大学などに配布しよう」との趣旨でした。
はたせるかな、創刊号の内容は九大の山内教授のシラスの論文、軟弱地盤に関する現場報告、福岡都市高速道路公社の斜張橋荒戸大橋の設計の諸問題など九州ならではの話題が満載で、内容豊富な素晴らしい発足となりました。以来今号まで応募原稿が少なくて督促するという事態はまったく無くて、編集委員会では重複を避けたり、更なる調査検討のため次号に延ばすといった調整がかなりありました。まさに読者一同の旺盛な研究心の賜物です。前記建設工法研究所が事情により閉鎖するに際して、当誌の編集・発行は(社)九州地方計画協会に移りました。2003 年1 月発行の32 号のときからでした。編集委員長も樗木九大教授から大塚九大教授に代わり、編集委員も若干の変更がありました。私も発行人ではなく編集委員の一人としてお手伝いすることになりました。建設省を1983 年に退職して20 年もたつのでこの際編集委員も辞退したのですが、周囲の要請もあって今日まで続けて参りました。
年に2 回の編集会議ですが、俎上に乗ってくる研究レポートや工事報告は、情報が少なくなった私にとってとても有意義な会議でした。様々な困難を乗り越えての事業の進捗状況がよく分かるからです。編集会議ですから表題が内容を適切に表現しているかについて、しばしば問題になります。私も此のことには関心があって33 号の随筆で触れたことがあります。数頁にわたる論文や報告の内容を短い文言の表題として適切に表現することは、なかなかむつかしいことです。しかし私にも経験がありますが、本文を書き終えて表題を考えることは楽しいことでもあります。投稿する諸氏におかれては、目次を見た読者に「読んでみたい」と興味を惹く表題をあれこれ推敲してみて下さい。
さて、様々なインフラ整備や防災事業が行われているにも拘わらず、大規模で悲惨な自然災害が相次いでいます。また、既設のトンネルや橋梁の老朽化対策も喫緊の課題です。本誌で取り上げるテーマはますます幅を拡げることでしょう。本誌のますますの充実発展を祈念して退任の挨拶といたします。
※九州技報のバックナンバーは、(一社)九州地方計画協会のホームページにアップしています。
また、事務局では全号の冊子を保存しています。必要な方はご連絡下さい。
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